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そのサッカーを疑え!

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#ロシアW杯

鹿島対グアダラハラを見て想う。中盤天国の終焉とドリブル天国への期待

鹿島対グアダラハラを見て想う。中盤天国の終焉とドリブル天国への期待

 今年、2018年はどんな1年だったのか。ロシアW杯から半年が経過したいま、クラブW杯初戦の鹿島アントラーズの戦いを見ると、方向性を見つけ出せずにいた暗いトンネルから脱出できたような明るい気分になる。

 鹿島がクラブW杯初戦で逆転勝ちしたグアダラハラは、メンバー全員がメキシコ人選手で固められていた。大きな選手の少ない、日本人が親近感を抱きたくなるチームだった。

 日本とメキシコ。それぞれの代表

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日本に欠如する俯瞰する文化と森保ジャパン誕生の因果関係

日本に欠如する俯瞰する文化と森保ジャパン誕生の因果関係

 ロシアW杯。広大な国土面積を誇るロシアを1ヶ月強、右往左往したその観戦旅行で、疲労困憊、ヘロヘロに陥りながらも、スタジアムを目指す足が軽かったのは、その観戦環境が秀逸だったからに他ならない。

 全12会場中、僕は実際10のスタジアムで観戦したが、視角はすべてパーフェクト。ゲーム性を存分に堪能できる環境を整えていた。

 ピッチを眺める視角は、スタンドの傾斜角に比例する。よいスタジアムの定義には

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サイドバックがいない(森保)サッカーを、日本に適したスタイルだと思わない理由

サイドバックがいない(森保)サッカーを、日本に適したスタイルだと思わない理由

 サイドバックをいかに有効に使うか。近代サッカーでは、サイドバックが活躍した方が勝つ、と言われる。しかし、森保監督が採用する3-4-2-1には、その肝心のサイドバックがいない。サイドバックとは4バックの両サイドを指すので、3バック、5バックには最初から存在しないわけだが、森保式の3バックを見ていると、サイドバックが存在するサッカーを切望したくなる。やはり、サイドバックがいた方がサッカーは面白い。サ

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岐路に立たされているという自覚がない日本サッカーを心配する

岐路に立たされているという自覚がない日本サッカーを心配する

 東京五輪を目指すU−21監督兼日本代表監督。兼任監督はフィリップ・トルシエ以来となるが、2002年日韓共催W杯を目指した当時の代表チームは、開催国特権で予選が免除されていた。過去にない大きな責務を背負ってしまった監督。森保氏に対して多くの人が抱く不安だが、その就任に際して、それ以上に問題視すべきは、激変しそうなサッカーのスタイルだ。彼が従来通りのサッカーをするならば、日本代表のサッカーは守備的サ

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「守備的サッカー」に安易に手を染めるなと言いたくなる最大の理由

「守備的サッカー」に安易に手を染めるなと言いたくなる最大の理由

 ハリルホジッチ解任を受け、急遽、日本代表監督の座に就いた西野朗監督が、最初に臨んだ試合は壮行試合を兼ねたガーナ戦だった。

「W杯本大会で相手に押し込まれる場面を想定して」、「いろいろな局面に対応するために」、「しばらくやったことがなかったから」等々の理由を挙げ、西野監督はこの試合に3バックの布陣で臨んだ。

 日本では、3バックと言えば8割方守備的だ。かつて、オシムが3バックで攻撃的なサッカー

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ロシアW杯回想。ベルギー戦のスタメンを見てがっかりした理由

ロシアW杯回想。ベルギー戦のスタメンを見てがっかりした理由

 ロシアW杯が閉幕して2週間が経過した。日本では代表の新監督に森保一氏が就任。さっさと次に向かおうとしているが、個人的にはその流れに乗る気がしない。レビューし尽くしてからにしたい。というわけで、いま一度、しぶとくロシアW杯を振り返って見たい。

 今回は日本代表編。タラレバ話になるが、今大会はチャンスだった。グループリーグでドイツが消え、決勝トーナメント1回戦でスペインが消え、そして準々決勝でブラ

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W杯準決勝対イングランド戦。クロアチアの右SBブルサリコは出場できるのか

W杯準決勝対イングランド戦。クロアチアの右SBブルサリコは出場できるのか

 準々決勝対ブラジル戦。ベルギーのロベルト・マルティネス監督は、それまでとは異なる布陣で臨んだ。右にルカク、左にアザール、そして、デブライネをその真ん中に0トップ気味に置く4-3-3だ。

 ルカクを右の高い位置に据えれば、対峙するマルセロの攻め上がりは抑止できる。それでもマルセロが上がれば、その背後は狙い目になる。ベルギーの勝利は、重心が低めだった3-4-3を、高い位置から圧力を掛ける布陣に変更

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できるだけ多くの選手を使い、そして勝つ。西野監督に求められる余裕とは

できるだけ多くの選手を使い、そして勝つ。西野監督に求められる余裕とは

 2-2で引き分けたセネガル戦。戦前、劣勢が予想された試合を引き分けたのだから、よくやったと言うべきだろう。しかし、同点に追いついた78分以降、日本はなおも流れを掴んでいた。観戦しながら正直、もどかしい気持ちにさせられた。日本は最後の押しに欠けていた。

 87分、乾貴士に代え宇佐美貴史を投入した西野監督は、最後までアグレッシブな姿勢を示したと試合後の会見で胸を張ったが、ピッチ上の選手たちに西野監

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サッカーに適したロシアの快適な気候が、弱者を有利に導く可能性

サッカーに適したロシアの快適な気候が、弱者を有利に導く可能性

 ワールドカップの現地観戦取材はこれが10回目。偉そうで恐縮ですが、過去の大会と比較できる立場なので言わせてもらえば、今大会は面白い。いつものワールドカップに比べて格段に。そんな気がする。

 わかりやすい原因は気候だ。ロシアの6月は暑からず寒からず、ちょうどいい。避暑地のごとく快適なのである。モスクワで言えば、朝は15度ぐらいで少しひんやりしているが、日中は25度ぐらいまで上昇。そこそこ暑い。日

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弱体化が予想されるロシアW杯後の日本サッカーに、つける薬はズバリ「哲学」だ

弱体化が予想されるロシアW杯後の日本サッカーに、つける薬はズバリ「哲学」だ

「3バックか、4バックか。どちらなのかわかりませんけれど、監督の求めるものを、ピッチの上で表現できれば……」と語ったのは、スイス戦後の槙野智章だ。3バックとは3-4-2-1。4バックとはおそらく4-2-3-1。前者は守備的サッカーに、後者は攻撃的サッカーに属する布陣だ。

 守備的か、攻撃的か。いまだ、どちらを採用するのか、選手はわからないそうだ。西野ジャパンの弱さを集約しているポイントだ。西野さ

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西野ジャパンにつける薬。2016年クラブW杯決勝で、鹿島はなぜ、R・マドリーに大善戦できたのか

 W杯に期待するものは、日本代表の好成績だけなのか。日本代表に期待するものは成績だけなのか。

 西野監督がいかに名将であったとしても、日本がグループHでコロンビア、ポーランド、セネガルを抑えて2位以内に入るのは至難の業。ベスト16進出の可能性は、せいぜい10〜15%程度だろう。大手ブックメーカーのひとつであるウィリアムヒル社の予想によれば、H組の順列は以下の通り。

 コロンビア2.10倍、ポー

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コロンビアに大敗した従来の日本式サッカーを、的確にアップデートする方法

コロンビアに大敗した従来の日本式サッカーを、的確にアップデートする方法

 ハリルホジッチを解任した田嶋幸三会長は、その会見の席上で、「日本らしいサッカーを」と述べた。西野新監督も就任会見で「日本化したフットボール」と言い、日本サッカー界がこれまで積み上げてきたものに活路を求めようとする姿勢を示した。

「技術力を最大限生かし、組織的に結束して戦う強さ、化学反応を起こした上で戦う強さをベースにして……」と。

 しかし、この歯切れの悪い言葉を聞いてもわかるとおり、説明に

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