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吉本興業の騒動から見えるもの(2) パワハラこそ彼らの文化?

▼前回は、いわゆる「闇営業」をこれほど激しく叩くのなら、芸人個人を叩く前に、まず「反社会的勢力」をイベントのスポンサーにしていた吉本興業という法人の責任を問うべきであり、「反社会的勢力」に大々的なパーティーをするための部屋を貸して儲けていた都内のホテルの責任を問うべきではないか、ということを書いた。

▼今回は、別の視点からメモしておく。

▼宮迫氏は、蛍原氏とのコンビ「雨上がり決死隊」の全盛期のコントがとても面白かったことに、以前、一言だけ触れたが、コントをしなくなってからの二人は、つまらなくなってしまった。

▼つまり、「芸」を忘れた芸人は面白くない、と筆者は感じる。

冠番組を持ち、いわゆるMCになってから、面白くなくなってしまった人は多い。もちろん例外もあるが。

ダウンタウンも、雨上がり決死隊も、吉本ではないが、とんねるずも、何の魅力も感じなくなった。

▼話は、それだけで終わらない。

彼らのバラエティ番組を、筆者はほとんど見なくなったが、それは、他人をバカにしたり、殴ったり、蹴ったり、ひどい目に遭(あ)わせて嗤(わら)ったりする内容が、多すぎるからだ。

それらは、今の言葉でいえば立派な「ハラスメント」であり、もしかしたら、学校の「いじめ」と呼ばれる集団犯罪に影響を与えたかもしれない。視聴者に「ああ、弱い奴のことは、ああやって『いじって』いいんだ」と思わせることによって。

以下に書くことには、もちろん例外もいる。たとえば博多華丸・大吉の両氏は、筆者にとっては例外だ。あの二人は、人を決して貶(おとし)めないし、バカにしない。吉本ではないが、ナイツやサンドイッチマンもそうだ。

▼さて、吉本興業の岡本昭彦社長は、謝罪会見で一躍有名になったが、もともとはダウンタウンのマネージャーをやっていて、パンツ一丁でダウンタウンらにいろいろと「いじられる」役割でテレビを賑わせていた。

おそらく、テレビで素っ裸にさせられたこともあったと思う。

筆者はああいう番組を目にしたおかげで、「バラエティ番組」と呼ばれるものにどんどん興醒(きょうざ)めしていったのだが、今から思えば、そこに1ミリの「芸」もなかったからだった。

▼今回、岡本社長が宮迫氏や亮氏に対しておこなった恫喝は、完全に「パワハラ」だが、それは、たとえばかつてダウンタウンの2人が岡本氏にテレビ番組でやっていたことと、「立場の強い者が弱い者を自分の思い通りにいたぶる」という点で、そっくりだ。

もともと「吉本」がそういう文化だから、ああいう番組をつくっていたのか、それともああいう番組をつくったから、社長がパワハラするようになったのか、因果関係はわからないが、相関関係があることは間違いない。

「パワハラ」が吉本興業の「主流」の文化なのかもしれない。

▼さらに、極楽とんぼの加藤浩次氏が。朝の情報番組を私物化して「吉本の会長と社長が辞任しなければ、自分が吉本を辞める」と発言したが、筆者は、まったく後輩芸人のことを考えていない、無責任な発言だと感じた。

あの身勝手な発言で、何人の後輩たちが、どれほど迷い、悩んでいることだろうか。この点は、「会長が辞めたら自分も辞める」と、同じくテレビで公言した松本氏も同じだ。

結局、松本氏の発言も加藤氏の発言も、一瞬目立って消える「泡(あぶく)」で終わり、構造的な解決とは何の関係もないことが、これからわかってくるだろう。

▼2018年、加藤浩次氏がネットテレビに出演し、酒を飲み続け、酔っぱらった状態で「顔を晒(さら)せ」「くそババア」「日本から去れ」などと女性差別の暴言を吐き続けた事件は比較的知られている。その番組にはカンニング竹山氏と岸博幸氏も共演していた。

▼なぜ加藤氏があの後も朝の情報番組に出演し続けているのか、理由はわからない。加藤氏は2013年にはテレビ番組でAKB48の渡辺麻友氏の顔面を蹴ったこともある。

おそらく、日本社会が女性を足蹴(あしげ)にしたり、酔っぱらって暴言を吐くことにとても寛容だから、加藤氏が今も朝の情報番組に出演し続けられるのだろう。

▼こうした、人を貶(おとし)めたり、罵倒したり、バカにしたりして「笑い」ならぬ「嗤(わら)い」をとる傾向は、宮迫氏にもあった。

▼整理すると、加藤浩次氏は、6年前に女性アイドルの顔面を蹴り倒したり、去年は酔っぱらって他の男性たちとともに女性をよってたかって罵倒し続ける映像を、公共の電波で垂れ流していた。

その加藤氏が、企業経営者(吉本興業)が雇っている人間(宮迫氏や亮氏たち)にパワハラをしたことを激しく非難したわけだ。

筆者には、悪い冗談としか思えない。

▼前回書いた「個人の責任が問われても、法人の責任が問われない」問題や、「公然と女性差別する人間を朝の情報番組のⅯCで起用し続ける」問題は、前回一言だけ触れた「クロスオーナーシップ」や、「市場原理」の問題とリンクしている。1900字を超えたので、今号はここまで。(つづく)

(2019年7月30日)

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