橘ぱぷか

かくよむ感じる考える 📝 いつかのおたより/インタビュー「揺らめき」/月刊イヌ時代

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マガジン

  • 日記

    まいにちのなかで感じたこと思ったことの記録

  • 月刊イヌ時代🐶

    月刊イヌ時代夏の増刊号🍉執筆したコラム

  • 部屋と虫と私

    初めて暮らした部屋で出会った、忘れられない虫たちとの思い出

最近の記事

vol.1『mum.』小さな子どもから大人まで、みんなの心がふかふかと満たされるお菓子を届けたい【前編】

おとなになるってどんな感じ? おとなになるってこわいこと? おとなになるのはたのしいの? 大人になると、ぐんとひらける目の前の世界。 そんな毎日をゆたかに生きる、すてきな人々へのインタビュー。 ゆらゆら輝く瞳に潜む、たくさんの想いやストーリーをお届けします。 記念すべき第1回目は、主に岐阜県内で焼き菓子販売や間借りカフェを開いている、mum.のリエさんとエリさんです。 ふたりの出会いとはじまりーふたりの出会いを教えてください。 リエ:もともとは同じ美容院に通っているお

    • SUMMER!

      窓の外を見ている息子がふいに、かじ?と私に尋ねてくる。 発せられた言葉をすぐに変換できなくて、慌てて外の景色をさぐる。かじ?家事、火事?外に建ち並ぶ真っ赤なビル。 ⁡ あれはゆうがたのいろだよ。ビルにおひさまのいろがうつってるんだよ。きれいだね。 ⁡ 言葉にするとあっという間だけど、その小さな枠にはとてもおさまりきらないような、光っていて透明な赤だった。 ⁡ 音も熱もぜんぶが空に引き寄せられ、吸い込まれていく。そのぜんぶが鋭いカケラになり、ちくちくと降り注ぐ、夏。 ⁡ 毎日が

      • 短くても長くても役に立っても立たなくても

        やっぱり私には書くということが必要で、気がつくといろんなものが中にずんずん溜まっていってしまうからやはりちゃんと定期的に出口を設けようと思った。一度止まってしまうと表出するのが難しくなるし怖くなる。それからぐるぐると苦しい。 ⁡ 毎日はあっという間に過ぎていき、一方でじりりとなかなか進まない重たい時間もたくさんあって、不均一。なるべく濃い時間をたくさん過ごしたいなと思うけど、だらんと間延びした時間もそのままで味わえるようになりたい。役に立つとか立たないとか、そういうことを手放

        • たとえ背骨を失っても

          この人はいつ死んでしまうんだろう、とページをめくりながら何度も思った。 だってこれだけの感受性を抱えながら生きていくのは至難の技だ。彼女にとって息をするということは、針を飲むことと同義なのではないかと思うくらい、感情が苦しい。読んでいてその波に溺れてしまいそうになる。 でも主人公は死なない。たとえ背骨を失っても、強烈な脆さを抱えながらも。それが究極の救いで、光だと思った。

        vol.1『mum.』小さな子どもから大人まで、みんなの心がふかふかと満たされるお菓子を届けたい【前編】

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          7本
        • 月刊イヌ時代🐶
          1本
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          2本

        記事

          日々

          街のまんなかはがらんどうで、人も少なく活気がない。 久々に通りがかったお気に入りのお店はつぶれて閉店していた。見上げた空には雲がずっしりと並んでいる。心なしか吸い込む空気も少し薄くなったような、全体的に淡いような。 透明になってしまったお店の数々が歩くたびに目に入り、この現実を突きつけられる。私たちの毎日に少しずつ追加されていく、あたらしい日常。 「もうお客さんとはその話しかしていないですよ」 美容師さんがからからと言っていた。 「いつになったらおさまるんだろう」 「

          【本棚】宮地尚子『傷を愛せるか』

            私は傷を愛せるだろうか。  いつからか弱さをさらけ出すこと、柔和であることはとても無防備なことであって、弱さとは克服すべきものだと考えるようになっていた。 「あなたはやさしいから」 そう言われるのが心底嫌だった。やさしさとは、強さと対極にあるものだと思っていたから。  いつしか私も「鎧」を身につけるようになって、わざと強い言葉を選び、できるだけ荒くあろうとしていた。  それもまた生きる上で必要なことなのだろうけれど。   「ヴァルネラ

          【本棚】宮地尚子『傷を愛せるか』

          朔日

          あっという間に過ぎていく。信じられない速さで。  それなのに毎日はのんびりとふやけていて、1日の流れは遅く感じる。  日差しとともに張り付くセミたちの声は日々穏やかになり、吹く風の中にほんのりと秋の気配が感じられるようになった。  まだまだ暑いけれど、たしかにやって来る新しい季節の訪れ。 発散しきれなかったエネルギーを放出するかのように 空からはいきおいよく雨がほとばしり、 閃光が走って夜空を割いた。 それがすごくきれいだと思った。

          波をつかまえようとする白くて小さな手

          子どもが眠る時間になっていつも、ああもう今日のこの子に会えなくなる、と思って寂しくなる。 だっこしてよー! とえんえん泣いたとき、もっと早く手を止めたらよかった。洗濯物なんて後回しにすればよかった。もっとたくさん絵本を読んだらよかった。もっと抱っこしてあげたらよかった。 なーんていつも思うのだけれど、たぶんどんなにやっても足りない。 どれだけ一緒に遊んでも抱きしめても、この時間になるともっと遊んであげればよかった、もっとたくさん抱きしめればよかったって思う。 信じられない

          波をつかまえようとする白くて小さな手

          通過してしまう前にとどめておくための短い日記

          毎日生活してるって感じ。 うまく言えないけれど、夫もいて子どももいて三食みんなでお家でご飯食べて、寝て笑って毎日を生きている。 家にいても季節の変化は感じるし、最近は外の空気はあったかくて入ってくる風は涼しくて、そのバランスがとても気持ちいい。 近くで鳥の鳴く声が聞こえる。それから水が流れるような、さらさらと軽くて淡い音。 この近くには川もせせらぎもなにもないのになんだろう、どこかの家の水を撒く音? ホースか何かで? と不思議に思っていたけれど、よく耳を凝らすとそれは木

          通過してしまう前にとどめておくための短い日記

          ぐん、と手を伸ばして外側の世界に触れること

          買い物に出かけたら、隣の本屋さんが久しぶりに開いていた。 本屋さんに立ち寄るのもとてつもなく久しぶりだった。コロナ以前から本の購入はすっかりオンラインばかりになっていて、読みたい本は指先でスライドし、ピンポイントで指名買いすることがほとんどだった。 ぼんやりと棚を眺めていると、パチンパチンと心の中でなにかが弾けていくのがわかった。 自分の好きなものや興味のあるもの、ここ最近漠然と考えていたこと、あらゆる感情。その断片があちらこちらに散らばっていて、それが次々と呼び起こされ

          ぐん、と手を伸ばして外側の世界に触れること

          部屋とアシナガバチと私

          大学生のとき、大学近くのアパートでひとり暮らしをしていた。そこは古いからなのか自然豊かな環境のせいなのかとにかく虫がよく出るアパートで、そこに住む四年の間、忘れられない彼らとの数々の熱い闘いがあった。どの虫もなかなかに手強かった。 これからも永く記憶に留め、そして虫たちの健闘をたたえるために、そのエピソードの一部をここに記しておこうと思う。 その日はよく晴れた天気の良い日だった。 午後からアルバイトの予定があったため授業後すぐに帰宅し、洗濯物を取り込もうとベランダに出ていた

          部屋とアシナガバチと私

          部屋とアリと私

          大学生のとき、大学近くのアパートでひとり暮らしをしていた。そこは古いからなのか自然豊かな環境のせいなのかとにかく虫がよく出るアパートで、そこに住む四年の間、忘れられない彼らとの数々の熱い闘いがあった。どの虫もなかなかに手強かった。 これからも永く記憶に留め、そして虫たちの健闘をたたえるために、そのエピソードの一部をここに記しておこうと思う。 それは突然やってきた。 ある暑い夏の日、私はごろごろと布団に寝そべり、だらしなくテレビを見ていた。クーラーをつけ、アイスでも食べようか

          部屋とアリと私

          Hello,world!

          そこでは確かに人々が発信し合っているはずなのに目の前に広がる世界は真っ白で静かで、それが不思議だとあらためて思ったのは昨日のことでした。 文字を打ち始めると、まだまっさらな雪の上にそっと足あとをつけるような、そんな気持ちになりました。 誰もいないトンネルや洞窟の入り口から向こう側に向けて、おーい! と叫んだ時の感じにもよく似ていました。 誰もいなければ何を書いてもどこにも届かず、でも誰かに伝えたくて発信しているわけで、そこが日記と決定的に違うのであって けれどもその、ここ

          Hello,world!