短編小説 | 哲学薬剤師
(1)薬事法改正
薬事法が大幅に緩和された。
薬が多くなりすぎて、どんなに一生懸命に薬学を学んでも、知識が追いついていかない。だったらいっそのこと、自己責任ということにして、誰にでも薬を売ることができるようにしよう!ということになった。面倒くさい勉強は抜きにして、市場原理に任せよう。そうすれば、詐欺やインチキが多少跋扈することになるが、市場競争の中で、長期的には、悪徳な業者は自然に淘汰されて、善良な業者が残っていくことだろう。
(2)哲学薬剤師
今回の薬事法改正で緩和されたのは、単なる「モノ」としての薬にとどまらなかった。「カウンセリング」のような「コト」としての薬も規制緩和の対象になった。
そういう流れの中で「哲学薬剤師」なるものも登場してきた。その一端を覗いてみることにしよう。
(3)症例[1]👩文系数学苦手女子
👩わたし、数学がまったくできないのですが…
🧔哲学外来担当の冠念哲夫です。では、「デカルト💊」を処方しておきましょう。天井にハエが動くのを見ているだけで、座標軸が自然と見えるようになってきますよ。
(4)症例[2]👨議論苦手男子
👨私は人とクリエイティブな議論をすることが苦手でして…。人を説得する技術を身に付けたいのですが…。
🧔では、「新約聖書」をお読みになってみては?「あー言えば、こー言う」議論の宝庫ですよ😄。
👨え~と、キリスト教はちょっと…。
🧔まぁ、宗教的なお話としてではなく、「説得の教科書」として読めばいいのです。しかし、宗教的なアレルギーがあるのなら仕方ないですね。では、ソクラテス、プラトン、アリストテレスあたりの「ギリシア哲学💊」を処方しておきましょう。
(5)症例[3]🧏♂️神を信じない理系男子
🧏♂️僕はなんか神様って信頼できないんですよね。自然の法則の裏に、神がいるなんてウソくさくて。
🧔だったらスピノザを読みなさい。かのアインシュタインはこう言っています。「スピノザ的な神ならば信じる」と。宇宙全体が神だと思えてくるでしょう。理系の人の間では、「スピノザ💊」は人気のお薬になっていますよ。
(6)症例[4]ストーカー歴のある人々🧟♂️🧟♀️
🧟♂️&🧟♀️僕たちは、人を見るとつい追いかけたくなってしまうのですが…。
🧔だったら、ダンテの「神曲💊」をお読みなさい。幼いときに出会ったベアトリーチェという女の子を生涯追い続けたダンテのお話です。ただの片思いなのに、ヒロインに仕立ててしまうのですから。なかなかのストーカーぶりが発揮されています。中途半端はいけません。ずっーと妄想を続けて昇華するまで追いかけましょう。がんばってください😄。
(7)症例[5]哲学者🧔
🧔私は哲学者です。どんなに哲学を研究しても、心が平安になることがありません。どうすれば、いいでしょうか?
😈私は悪魔です。哲学なんかやめて、「よりよく生きよう!」なんて考えるのをやめたらどうですか?どうせ答えなんてありませんよ😄。地獄もなかなか楽しい💃ですよ。
👼私は天使です。自分がどう幸せになるかを考えるのではなく、自分のまわりにいる人の幸せだけを考えたらどうでしょう?
🧔まぁ、なんとも😳💦。では「悪魔😈💊」と「天使👼💊」を両方飲んでみます。
(8)後日譚
哲学者🧔は、かなり、「悪魔」と「天使」の薬の副作用に悩む日々がつづいた。そして、やっぱり哲学することになったと言われている。
おしまい
フィクションです。短編小説のため、続編はありません💗🧔💗。
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします