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詩 Poetry

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詩 鳥人組曲

詩 鳥人組曲

#Out of Nowhere

どこから来て
なにを吹いて
だれが生きて
どこへ消えた
…というのだ
#Ornithology

天使も
天狗も
羽根をもつ
空を飛ぶ
けれど鳥ではない
オザーク山から帰った
その男だけが
鳥となった
#Bird of Paradise

迦陵頻伽が鳴くのは聴いた
夢では迦陵頻伽を捕まえた
けれど
迦陵頻伽の棲処はしらない
#Now 's the Time

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山上幽吟

山上幽吟

軽い肺炎を起こして入院していました。一週間ほどと言われたのが三週間近く留め置かれて、本人は咳き込みもなくいたって元気、なんだかわけのわからない幽囚でした。Wi-Fiもなく、持て余した時間の折々に俳句を試みたのがこれらの作品です。

病院は山の上にあり、その向かいにあるのが蝸牛山(ヘッダー画像)。肺を病む前は鳥見のフィールドでもあり、散歩コースの一つでした。今は通院の度に写真を撮って慰め励まされてい

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月を詠む

月を詠む

初めての試みです。毎夜詠み続けられるか不安もあります。月の呼称にある程度縛られますし、どこまで月と歩めるか……

1
新 月 や 夜 の 底 な る み づ た ま り

2
仮 寝 の 夢 も は か な し 二 日 月

3
う ら め し や 三 日 月 沈 む 雲 の 海

4
あ か あ か と 焼 け て い づ こ に 四 日 月

5
箱 入 り の 娘 出 て こ ぬ 五 日 月

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梅雨の俳句

梅雨の俳句

ふっと思い立って、これまでに詠んだ梅雨の俳句を並べてみました。
案外いろんなところで詠んでいて、印象に残っている句が多いので、
一所一景として、梅雨の十景にまとめてみました。

      珠洲古窯跡
能登   穴 窯 や 梅 雨 中 世 の 男 ど も 

奈良   入 梅 や 雲 斑 鳩 を 手 放 さ ず

金沢   梅 雨 の 山 ジ ー プ 淋 しき 虫 の 如  

      手児

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詩 六月のバラード・2

詩 六月のバラード・2



この詩の「踊り場」は、ある古洋館の一階から二階へ向かう途中にあった。一日訪ねて遊んだのは昔々のこと。1980年代の初め頃だったと思う。
当時の館主は金沢舞踏館の山本萌氏。土方巽のアスベスト館から独立して、ここで旗揚げ公演を打った。金沢市の郊外、犀川上流の上辰巳村。国家安康と名を二分された家康は怒ったが、土方さんは「たつみ」の上に弟子に立たれても構わず、館開き公演『埃をあびた蛍のような男』を演出

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オリオン、二つの詩

オリオン、二つの詩


 オリオンの扉

大いなる扉がある。

寒空に佇み、凍った手足を舞踏させながら
私は夢む。

ゴッホは、八月の夕に西空へ歩をとった。
行く手に沈む、
北斗の古ぼけた車に向かって急いだはずである。
旅。
新しい経験。新しい知覚。

いつの日か、
この惑星を出て、
銀河系をやや外よりに歩をすすめ、
私は、オリオンの扉をそっと開くだろう。

              (1994.2)

 星の晩年

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世界詩歌記念日

世界詩歌記念日

3月21日。
世界詩歌記念日。
詩は個人に立つ。個から発し、個を護る。
詩は山川草木、鳥獣虫魚のことばを聞く。

詩の図書室

詩の図書室

青空文庫に収録されている詩集を一覧できるページを作りました。
青空文庫では一篇の詩、一篇のエッセイ、一冊の詩集・詩書などがリストに混在していて使いづらいところがあります。
そこで詩集を読むことだけに絞ったリストを作り、
 1 そこから青空文庫に飛ぶページと、
 2 epubファイルを下ろせるページを用意しました。

「www 図書室」

もともとはネット上の詩集または詩抄へのリンク集として、20年

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詩 緋連雀

詩 緋連雀

ひーひりりりと
天から零れる声で
緋色の
仮面
緋色の
食欲
美濃に現れたと聞いて
翌日にはもう播磨の空
木の実なら
黒でも
赤でも
真の実なら
どんな色でもいい
ひーひりひりと
天へせり上がる声で
鳴き
飢え
冬を
鳥の世を
渡っていくのだ

詩 イズイさん

詩 イズイさん

小さくて
細くて
愛らしい蛇だったわよ

かゆう堂の奥さんは言う

画材の配達に行くと
たいてい
庭の飛び石の上で
とぐろを巻いていたと

あら
イズイさん
こんなところで
何してらっしゃるの?
声をかけると
とぐろを解いて
するすると
みちを空けてくれたじゃないの

白っぽい
茶色の
やさしそうな蛇だったわね

   *

かゆう堂は金沢市寺町にある画材額縁の専門店でずいぶんお世話になった。ふ

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野葡萄

野葡萄

野葡萄は思う

あんなに星の色が
あか
あお
むらさき
みどり
とあるのは
虫がいるのだろうか
夜になると
星を見ると
なぜだか泣きたくなるよ

詩 どろん

詩 どろん

今年も頭にサザンカの花びらをのっけた羅漢に会った。

 どろん

蝋梅を見に
羅漢寺に行く
花はやや草臥れていたが
まだ蕾は残っていた
青軸の方はまだまだ固い

光に誘われたはずが
どんより曇って
羅漢たちももの静か
なかで一人
頭に山茶花の花びら載せて
どろん、のポーズ
羅漢は何に化けたいか

九年前(2013年)のどろんのポーズ。詩はその翌日書いたもの。
因みにこの人には詩集『春と石仏』の表紙

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詩 迷子のサンドラ

詩 迷子のサンドラ

迷子のサンドラ・ホジスンは
無事家に帰り着いたか、
会場の入口ゲートで母親に会えたか、
あれから三十年経っても
ちっちゃなドレッドの女の子が気にかかる。

広大なグラウンド、
熱気に溢れた会場、
ボブ・マーリーの亡くなった直後の
レゲエ・サンスプラッシュ・フェスティバル。
タムリンズが終わった頃だったか、
ブラック・ユフルーが登場する前だったか、
サンドラ・ホジスンは
場内放送で呼びかけられた。

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詩 ユタ  3 (春とピアノ)

詩 ユタ  3 (春とピアノ)

ユタが
ぷいとジャズに背を向けて
姿を消してしまったからと言って、
ぼくもこのまま
ユタの詩から
遠離ってしまうわけにはいかない。

播磨の盆地で
繊細な
三つか四つの魂を探っていたら、
日本海溝で地盤がずれ
地震と津波。
マグニチュード九・〇

三陸の町は
どこも波に呑み込まれ
舟が、
家が、
車が、
人が、
押し流された。

波は想像力の高さも越えて、
白紙も
詩心も
音符も言葉も水浸し、

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