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絵から導かれたもの

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心ひかれる絵を見て、思い出したことや思いついたことを綴ったもの
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おやつの記憶

おやつの記憶

子どもの頃、祖母や母がおやつを作ってくれた。

まだホットケーキミックスも今ほど普及していない頃。
レンジはもちろん、オーブンもない。
主婦向けのお菓子の本には、オーブンは天火と書かれていた。

そんな頃作ってくれていたのは、小麦粉と砂糖と卵と牛乳(もしくは水)を混ぜて、フライパンで焼いたもの。
ふくらし粉はないので、入れない。

ぺっちゃんこだけど、砂糖の甘みと卵の味でおいしかったことを覚えてい

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抜け殻

抜け殻

なんとなくここ数週間、抜け殻感がすごい。

やる気も魂も、どこかに抜け出している。

ただ身体があるのだけれど、とても重たく引きずるように動かしている。

そんなこともあるだろうと、分かっているけれどしんどいなぁ。

以前と違って、無理はしないように気をつけている。

ぼんやりとした頭と、重たい体で、できることをするだけだ。

今日も、特に何もめぼしい事はせずに過ごした。

昼寝を何度かして、体を

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器

冷蔵庫の野菜室が寂しくなってきた。
買ってきた野菜を食べたということなので、清々しくもある。
時々、いろいろ買ったものの料理をする気にならなくて野菜が減らないこともある。
そんな時は本当に自分にがっかりする。

どうしても何をするのも面倒で、適当な食事で終わらせてしまうこともある。
それが続くと、やっぱり自分にがっかりする。

この罪悪感はなんだろう、と思う。

元々食いしん坊で、料理の本を見るの

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蠍の火

蠍の火

私は牛乳が好きだ。

近頃は牛乳もとても高くなっている。
買いに行くたび、びっくりする。

私が幼い頃、近所に牛を飼っている家があった。
朝、母が牛乳を分けてもらいに行っていた。
牛乳というより、本当に牛のお乳という感じで、しぼりたての温かいものをいただいていたような気がする。

母は母乳があまり出なかったようで「あんたは牛に育てられたようなものだ」とよく言っていた。
私もそう思う。
牛さんのおか

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友の母

友の母

学生時代、ゴールデンウィークに下宿先から実家に帰る前に、大学の友だちの自宅に寄ったことがあった。

そこには友だちとそのお母さんがいた。

友だちのお母さんは、私にメロンを出してくれた。

一人暮らしで果物といえば、バナナかリンゴを食べていた私は「おいしい、おいしい」と、とても喜んで食べた。

その様子を見て、不憫に思ったのだろう。

「一人暮らしは大変なのよ。〇〇はその大変さを知らないから」と、

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悪くない

悪くない

私は頑ななところがある。

いい感じに言うと、ゆずれないところがある、ということかもしれない。

実際は、わがままなだけかもしれない。

こだわり、というと、また少し違う気もする。

どうでもいいことは、本当にどうでもいいのだけれど、『そこだけは!!』ということに関しては、本当にゆずれなかった。

けれど、少し、変わってきたように感じている。

それは、ゆずれるようになったのか、それとも『そこだけ

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くうねるよむ

くうねるよむ

今日は、休日だった。
いつもより、朝、ゆっくり起きた。

のんびり朝ごはんを食べて、洗濯をして、明日には返却しないといけない図書館の本を読んだ。

思考とか認識についての本で、面白かった。

そうこうしているうちに、お昼が来て、昼ごはんを食べた。
図書館に行こうとしていたら、ものすごい眠気に襲われた。
昼寝をすると、あっという間に一時間経った。

昼寝の後、図書館に行った。
一時間半くらいしかいら

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ゆがみ

ゆがみ

私は目が悪い。
以前はコンタクトレンズを使っていたけれど、現在はメガネをかけている。

通勤の際、なんとなくメガネを外して歩くことも多い。
必要最低限は見えるので、ぼんやりした世界を歩いている。

先日、そんな状態で歩いていたら、横断歩道で赤信号だったので止まった。
「あ、信号が変わった」と思って歩行者用の信号機を見たら、緑色の歩く人が3人いて、輪になっていた(ように見えた)。

近視+乱視だから

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エネルギー

エネルギー

年に数回行く病院がある。

とても古い病院で、全てが古い。

エレベーターも階段も建物自体も古い。

けれど、古さが面白くて楽しい。

新しい物もワクワクしていいけれど、古い物は古い物で愛おしい。

ものは、エネルギーが循環していると生きていられる。
循環が途絶えると、そこで終わってしまう。

人がいなくなった家が、途端に朽ちていくように。

その病院は、働いている人がとてもキビキビ動いている。

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くすぐったい記憶

くすぐったい記憶

高校の修学旅行で、2泊目の旅館がこの絵のようなところだった。

当時、私は髪が長かった。
夜、消灯前にトイレから出るのに戸を開けると、廊下にいたクラスメイトの男子に本気で怖がられた。
おばけに見えたのだろう。

男子も女子も、みんなどこかそわそわした空気で、楽しそうだった。
私は特に気になる人もおらず、ぼーっとしていた。

携帯電話などがない時代で、トランシーバーのようなものを持ってきていた男子が

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おやすみなさい

おやすみなさい

この絵のとおり、今日もモーレツにねむい。

一週間、お疲れさまでした。
なんだかとても疲れたけれど、なんとなく心は軽い気もする。

先日、実家の母と電話で話していたら向こうのテレビの音が聞こえた。
「何の音楽?」と聞くと「牧神の午後への前奏曲 ドビュッシー」と言われた。

気になって、今聴いている。

あまりフルートが前面に出ている曲を聴き慣れていないので、新鮮だ。

昔、吹奏楽部に所属していた。

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おさまり

おさまり

かばんの中を整理するのが好きだ。

ふだん、まめに整理整頓するわけではないが、出かけた先で、かばんの中がぐちゃぐちゃになっているとイライラすることがある。

どこか落ち着ける場所があれば、一旦中身を出して、それぞれを配置よく入れるとすっきりする。

旅先だったら、宿泊する部屋に着いたら、かばんの中から必要なものは取り出して、部屋の中に配置する。

そして出発する時はまた、かばんの中に、いい配置で片

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社員食堂

社員食堂

学生時代、大阪の百貨店の地下でアルバイトをしていたことがある。
今でいうデパ地下だ。

食料品売り場だったので、エプロンと三角巾をつけていたような気もする。
時給が良かったので数ヶ月続けたけれど、お客さん相手も大変だったし、売り場のおばちゃんとの関係もなかなか強烈で、辞めてしまった。

思い出すのは、休憩のときのこと。

従業員が利用する喫茶店というか、食堂があって、通路を抜けて階段を上がったり、

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音の波

音の波

最近、チベットのシンギングボウルの音を聴くのが好きだ。

といっても、録音されたものを聴いているだけだ。

仏壇にある鐘の音と似ているけれど、違う。
仏壇の鐘は「りん」「おりん」というそうだ。
それも知らなかった。

「りん」の音は、実際に聴くことがあるが、あの次第に消えていく音をずうっと聴いていると心が落ち着く。

お寺に行った時に、鐘をつく人がいたらそれもずっと聴いている。
鐘の音が波になって

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