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オックスフォードから教育・社会を考える

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記事一覧

大学教員@香港のつぶやき:オックスフォード時代を振り返る(Viva編)

大学教員@香港のつぶやき:オックスフォード時代を振り返る(Viva編)

こんにちは、代表の荒木です。7月から香港の大学も夏休み期間に入ったため、先日、久しぶりに英国オックスフォードへ行ってきました。全体的にあまり変わっていない印象でしたが、「あ、あの店がなくなってる!」「こんな所にこんな建物ができてる!」など、新たな発見もありました。香港を拠点にしている身として、一番新鮮だったのは「マスクをしている人がほとんどいない」ということ。是非はさておき、withコロナを地で行

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大学教員@香港のつぶやき:オックスフォード時代を振り返る(CoS編)

大学教員@香港のつぶやき:オックスフォード時代を振り返る(CoS編)

香港からこんにちは、代表の荒木です。こちらは最近、気温も湿度も高い日が続き、こまめに手入れをしないとカビが増殖する季節になってきました。にもかかわらず、つい先日、我が家のエアコンが全て同時に動かなくなり、且つ修理をしてくれるエンジニアも一週間はスケジュールがいっぱいで来られない、という辛い状況に。。。個人的には、もともとエアコンはあまり好きではないのですが、さすがにこの気温・湿度の下ではエアコンが

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大学教員@香港のつぶやき:オックスフォード時代を振り返る

大学教員@香港のつぶやき:オックスフォード時代を振り返る

香港からこんにちは、代表の荒木です。一昨日、サルタック理事の畠山が博士課程最後の試験(口頭試問)を見事パスし、Dr. Hatakeyamaになりました!コロナ等の影響で、当初の計画を大幅に変更しなければならなかったにもかかわらず、きっちりと博士論文を書き上げて修了するとは、さすがサルタックが誇るガチムチ筋トレ隊長だなぁ、と感心しているところです。

そんな朗報を目にしながら、ふと自分が書かなければ

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オックスフォード留学を振り返る~博士号取得までの道のり(制度編)+新型コロナウイルス

荒木啓史

先々週、オックスフォード大学から一通のメールが届きました。その内容は、5月2日及び5月9日に予定していた卒業式(学位授与式)を取りやめる、とのこと。理由は、新型コロナウイルス(COVID-19)です。COVID-19が中国や日本、韓国で騒がれ始めた当初、イギリスの政府や大学等は明らかに「対岸の火事」と捉えているふしがあり、ボリス・ジョンソン首相も「自分は怖がらずに握手する」といった発言

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オックスフォード留学を振り返る~カレッジ編~

荒木啓史

前回の記事では、オックスフォード留学に関するファンディングについて書きましたが、そこでご紹介した奨学金の一つが「埼玉発世界行き」です。これは、埼玉に縁のある人が海外留学等をする際に金銭的なサポートをしてくれるだけでなく、留学後も就職支援等をしてくれるありがたい制度ですが、同奨学金を受給するためには一つの条件がありました。それは、留学期間中「埼玉親善大使(Saitama Goodwill

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オックスフォード留学を振り返る~ファンディング編~

荒木 啓史

今日は大晦日、2019年も残すところあと1日となりました。思い返せば、3年前の2016年12月31日、私はイギリスから日本へ向かう飛行機に乗っていました。オックスフォード大学で初めてのMichaelmas Term(10~12月の1学期)を終え、Hilary Term(1~3月の2学期)が始まる前の一時帰国です(ちなみに4~6月の3学期はTrinity Termと呼ばれます)。オック

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オックスフォード留学を振り返る~出願編~

荒木 啓史

初めてオックスフォードを訪れたのは、今からちょうど5年前の2014年11月末。当時勤めていた三菱総合研究所(MRI)のプロジェクトの一環でしたが、イギリスらしい曇天と寒気、典型的なフィッシュ・アンド・チップスに加えて、強い印象に残ったのがオックスフォードの街が醸し出すアカデミックな空気でした。よく「オックスフォード大学はロンドンにあるんだよね?」と聞かれることがありますが、オックスフ

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1分でわかる「教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)」と日本

突然ですが、先日の畠山のブログを覚えていますでしょうか?「私立教育は是か非か?」というタイトルでしたが、記事の中で何度か「Global Partnership for Education(GPE:教育のためのグローバル・パートナーシップ)」という組織名が登場しました。記事の雰囲気から、何となくGPEが国際教育開発の世界で重要な役割を担っていることは伝わってくるかと思いますが、「そもそもGPEって何

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教育を通じた「格差・貧困の固定的再生産」は実際にどの程度起こっているのか:RetrospectiveからProspectiveなアプローチへ

子供の成績・学歴やその後の職業・収入は、家庭の社会経済的背景(Socio-economic Status:SES)によって強く規定されている。このような見方は、昨今、多くの人に共有されているのではないかと思います。実際、文科省が実施している全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)や、OECDが実施している生徒の学習到達度調査(PISA)でも、SESと子供の成績・学習意欲等の間に強い相関があるとの分

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なぜ「人的資本論かシグナリング理論か」論争は不毛なのか?教育の経済的リターンを社会学的に考える

オックスフォードからこんにちは!先週、理事の畠山が「学校なんか行っても意味がない!」という記事で、人的資本論とシグナリング理論(特に後者)について解説しましたが、今回はこれらの経済学理論が現実社会を捉える上でなぜ不十分なのか、という点を社会学分野の研究を参照しながら考えていきたいと思います。具体的な視点は多岐に渡りますが、ここでは特に①能力と学歴の不一致性と社会的閉鎖、②社会全体における教育拡大に

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オックスフォード大学入学者データとOECDデータに見る「教育と公正・格差」

オックスフォード大学が社会の格差を生み出している!半年ほど前、こんなニュースがイギリスを騒がせました。オックスフォード大学が、これまで謎に包まれていた入学者(学部生)の属性(家庭環境やエスニシティ)に関する年次統計レポートを初めて公表したところ、大方の予想通り(!?)非常に大きな偏りがあったのです。
入学者のうち圧倒的な割合を占めているのは白人のイギリス人で、ロンドンを中心とした「都会」出身者が多

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OECD教育データが物語る「日本型教育」の特徴

今、「日本型教育の海外展開・輸出」という言葉をよく耳にするようになってきました。これは、文部科学省が旗振り役となって主導している取組で、その名のとおり優れた日本の教育を一つの産業として海外へ展開し、各地の教育改善に貢献しつつ日本の経済発展にもつなげていこうとするものです。その対象範囲は非常に広く、学校教育だけでなく高等教育や産業人材育成、民間教育サービス(塾や学習アプリなど)なども含まれ、「輸出先

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遺伝か環境か?ゲノム科学と社会科学の融合(Sociogenomics)が教育界にもたらすイノベーション

人の能力を決めるのは、遺伝か環境か。より正確には、人の能力はどの程度が遺伝によって、どの程度が環境によって説明可能なのか。これは、古くから議論されてきたテーマですが、昨今の遺伝学、ゲノム科学の進展により、新たな知見が続々と明らかにされてきています。私が専攻する社会学分野でも、従来のように社会調査を通じて得られるデータに加えて、遺伝子に関するデータを使い、遺伝や環境が人々の特性・行動に与える影響を複

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The Secret to High Academic Performance in Science: Evidence from the National Assessment of Academic Ability in Japan – (3) Qualitative Analysis

不利な環境でも子供の学力を高める秘策:全国学力・学習状況調査の分析結果から(3)

On 2 July, I couldn’t believe what I was watching when Belgium scored a goal in injury time, leading to Japan’s heartbreaking loss in the 2018 FIFA World Cup

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