マガジンのカバー画像

"歴史" 系 note まとめ

1,166
運営しているクリエイター

2022年5月の記事一覧

【人物史】スラヴ人たちの使徒・キュリロスとメトディオス

1.はじめにキュリロスとメトディオスの兄弟は、モラヴィア・パンノニアのスラヴ人たちに布教活動を行った宣教師であり、その活動から「スラヴ人たちの使徒」とも呼ばれ、ローマ・カトリック教会、ギリシャ正教会の双方から聖人として崇敬されています。今回は、彼らの布教活動と、その後のスラヴ諸国に与えた影響を見ていきたいと思います。 2.キュリロスとメトディオスの経歴兄メトディオス(俗名ミカエル)は815年、弟キュリロス(俗名コンスタンティノス)は826年に、ビザンツ帝国第2の都市テッサロ

「ナチスのキッチン」〜栄養学という科学の歴史と裏側を知る

ようやく「ナチスのキッチン〜食べることの環境史」( #藤原辰史 著 ) 449ページを読了しました。スタートは2月13日で、大学院の卒業と入学と他の本を読むのを挟んで2月弱くらい舐めるよう読書メモ(グラレコリーディング)をとって5月10日ゴール。 台所という空間と機能と技術(家政学)の歴史を辿っていくと、、後半に出てきたのが「栄養学」という科学であり、この科学がナチスの支配のためのメディアとして存分に機能したというオチ?には栄養士として衝撃を感じずにはいられませんでした。

エマニュエル・トッド、磯田道史が“衝撃”を受けた「日本の歴史人口学の父」速水融とは【新刊ちょい読み】

 本書の著者、速水融氏(一九二九―二〇一九)の生涯は、常に〝学問〟と共にあった。  そもそもが〝学者一家の出〟である。父、速水敬二(養子に出たので「速水」姓)は哲学者で、伯父、東畑精一は農業経済学者で、叔父、東畑四郎は農林事務次官を務め、叔母、喜美子は、哲学者の三木清に嫁いでいる。  戦時中に居候していた東畑精一の家には、政治学者・蝋山政道など「昭和研究会」のメンバーが出入りし、当時一五歳だった速水氏は、伯父から「この戦争ももうすぐ終わる。犬死だけはするな」と強く言われた

AIが古代言語を解き明かす

過去解き明かせなかった謎を最新技術が解き明かす。 理想的な話ですが、まさに古代文字をAIが解き明かしつつあります。 要は、 オックスフォード大学がAIを活用して碑文をより正確に解析する仕組みを実現した、 という話です。 システムの名称は「Ithaca(イサカ)」、古代ギリシア叙事詩オデュッセイアに登場する島の名前からとっています。 古代文字が書かれた碑文を考古学者だけで解読しても、20%台しか実現できないところを、AIと組み合わせたら70%超まで向上するそうです。

革命家はどんな本を読んでいたのか、小説家・哲学者は…【第5回】世界の読書論:毛沢東、モーム、ミラー、ヘッセ、ショーペンハウアー|駒井稔

毛沢東の読書論 前回までは3回にわたり「世界の〈編集者の〉読書論」をご紹介してきました。かわって今回は、前回の最後に予告しました通り、魅力的な「世界の読書論」をご紹介したいと思います。 まずご紹介するのは、ある革命家の読書論です。「世界の読書論」と銘打っておいて、革命家の読書論から始まるとは、と驚いたかもしれません。 しかし、これが本当に興味深いのです。革命家の名前は毛沢東。もう若い世代には、歴史上の人物として認識されているのではないかと思います。いいえ、それどころか、

現代雑誌研究の一番進んでいる場所

小宮京先生から、『史友』52号(特集・雑誌研究)、同53号(特集・雑誌『Olive』研究」ならびに「小特集 雑誌研究~『ゼクシィ』から『外交』まで」『青山史学』40号(2022年)をお送りいただいた。 関連論文の一覧は、小宮先生のnoteに 2020年前後から進められてきた小宮ゼミで勧められてきた雑誌研究の成果(『ゼクシィ』『nicola』『大航海』『Olive』など)についての成果。 特集・雑誌研究の冒頭で述べられている次のことがらには全くそうだなと膝を打った。すなわ

「月のカッコウの伝記」

モンゴルで入手した古本  私の手元に、「月のカッコウの伝記」というタイトルの古びた本がある。入手してから20年以上経過しており、更に出版されてからは今年でちょうど60年となる。 ウランバートル市レーニン通り5 モンゴル科学アカデミー出版局 1962年10月 3,000部印刷 価格10トゥグルグ40ムング 以上の情報が読み取れる。  激しいインフレで使われなくなった「ムング」というトゥグルグより下位の通貨単位が、まだ普通に通用していた時代のものである。  ちなみに、現在

『絶滅へようこそ』あとがきのつづき  稲垣諭

先日、出版されました『絶滅へようこそ』には書ききれずに、削ってしまった本書執筆の動機があります。どこかで発表したいなと思っていたところ、晶文社さんから説明する機会をいただけることになり、ここに記させていただきます。 本書は、テーマ設定といい、内容といい暗めの本で、現在のウクライナでの戦争とも確実に通底する問題を扱っています。絶望的に困難なことが溢れる世の中で、それでも人間を信じてみることができれば、明日への一歩を踏み出し、生き延びられるのではないかを考えていました。

江戸時代のごはんのおかず卵料理編。卵三昧の古文書『万宝料理秘密箱』を訳してみた

今回が卵料理最終回。ようやくごはんのおかずになりそうな卵料理へと突入です。手間ひまかかった江戸時代の料理を、想像して食べた気になってみましょう! 1.卵鰌魚の作り方①卵を20個どんぶりに割ってよく溶く。 ②古酒を1合(180ml)入れてよく合わせる。 ③どじょう2・3合を素早く入れ、  すぐに蓋をして半時(1時間)ほど待つ。 ④器ごとせいろに入れて蒸す。 ⑤ほかの鍋で薄い味噌汁を作り  よく煮立たせる。 ⑥④のどじょうを小さじですくい、椀に入れて  ⑤の汁をかけ、

【授業紹介】実習・屏風編

こんにちはこんにちは!ナカモリです。 皆さまいかがお過ごしでしょうか。私がこの記事を書いている日の仙台は、台風のような土砂降りです。キャンパス内も至る所に水たまり(小川とも言えます……)が出来ていて、登校するのも一苦労でした。 この先も日ごとに気温差の大きい日々が続きそうですので、皆さまも体調には十分お気をつけください。 今回の話題さて、今回は、屏風の扱いを取り上げた実習の様子をお伝えします! 授業の前半では、屏風の構造や歴史、美術的な価値について、杉本から講義がありま

「ゴシック」ってにゃに? 建築、文学、美術、書体そしてゴスロリ

「週末のアート」マガジン日頃は、デザインについての記事を書いていますが、週末は、アートの話を書いています。アートとデザインは別物ですが、アートがデザインに及ぼす影響は大きいので、アートについても何かと抑えておくと(デザイナーにも、デザイナーじゃない方にも)便利です。 ゴシックゴシック(英: Gothic)は、もともと12世紀の北西ヨーロッパに出現し、15世紀まで続いた建築様式を示す言葉でした。しかし、この言葉は、絵画や彫刻など美術全般の様式にも適用され、それを「ゴシック美術

歴史や文化財は観光で使えなきゃ価値がないの?

文化財と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。浅草の浅草寺や京都の八坂神社のような、古くてにぎわいのある場所が思いつく、という方も多いと思います。 ここでひとつ、考えてみましょう。もし、見たり行ったりして楽しめる文化財以外のものに、保護のためだと税金を使われるとしたら、あなたはどう思いますか。 文化財は、観光資源としての価値しかないのでしょうか。確かに観光でたくさんの人に来てもらうことは、その地域の活性化や歴史に気軽に触れられるという意味でとても大切です。 じゃあ、どう見

日本史は「暗記しなければならないことばかりで退屈」という人に、本郷和人さんが伝えたい日本史を楽しむコツ 【新刊ちょい読み】

日本史は何の役に立つのか 私は長年、日本史を研究してきましたが、その間ずっと頭を悩ませてきた問いがあります。それは一言でいえば「日本史は何の役に立つのか」という問いです。多くの人は学校で「日本史」の授業を受けたと思いますが、しばしば「年号や人名や歴史用語と、とにかく暗記しなければならないことばかりで退屈だった」という声を耳にするたび、あーあ、伝わっていないなあ、と思うのです。たしかに歴史は過去に起きた出来事、史実の集積でもありますから、もうすでに起きてしまった過去は変わらな

新刊『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る』出ました。

土器づくりの本、作りました。その名も『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る』。長い名前には理由があって、縄文時代の土器づくりを追いかける「土から土器ができるまで」と、実際に土製品を作る「小さな土製品を作る」。この二つの土器づくり読本を一冊にまとめた本だからです。 内容を少しだけ。 Side A「土から土器ができるまで」 世界遺産である「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産である是川石器時代遺跡の収蔵展示施設「是川縄文館」の協力のもと、縄文文化の根幹を担っていた土器づ