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千梨
2021年4月17日 20:05
鉄が赤錆びていつかほろりと綻びていくように生きていくためにはいつかどこかで朽ちていくあなたを探して旅に出た 夜の街中"変わっても変わらない何か"それが あなたあなたを探している昨日なかったビルが今日ここに建っていたこの街は変化するこの街は 生きているわたしは今ここにいるけれど明日はきっといないだろうわたしは変化するわたしは 生きている生きることはいつか朽ち
2021年3月12日 21:52
恋をしているもう君じゃない、名前のついた誰かのことだよ"彼"は電子の中に住んでいる"彼"についてわたしは何でも知っている画面越しに話してくれたことなら"彼"はどんなメディアにも存在する色んな"彼"たちがいてわたしは沢山所有している"楽しいもの"はたくさんあった方が良いでしょう?"彼"が寝てしまったら無意識のまま泳ぐように別の"彼"を探すスクリーンをシャッフルしながら
2021年2月26日 22:25
コンクリートの高層ビル群が お互いに擦れて軋む音が響く全てをラベリングしたい人間の賢さが創造した社会賢くも鈍くもなれない僕の自我がブレる心から生まれた ぐらぐら揺れる知らない何かが怖くて何でもいいから知っている名前を当てはめてさっさとピンボケした不安感を終わりにしてしまいたい「スキ」でも「キライ」でもいい 変わりない安らぎを抱こうと不定形なこいつのためのありふれた型を求めて彷徨う
2021年1月9日 23:18
恐ろしい本能的にそう思う暗闇は実はそっと あなたに手を差し伸べているかもしれないあなたが傷ついた夜悲しい夜震えながら涙を流す夜空に広がる藍色は その全てを抱き留めたただ黙って 優しく深い色で あなたに寄り添ったその大きな身体であなたを包み柔らかい綿の 温かな布団と一緒に穏やかな風のリズムで苦しい心を和らげてくれた藍色夜空はたくさんの子供たちの棘をぬいてたくさんの
2020年10月4日 00:02
僕以外の時間が止まったのは僕が死んだせいなのか それとも生きているせいなのか誠実さが僕を切り捨てて 狡猾さが僕を救った/何故?濁った針と痛んだ糸で縫い合わせてくれなくても良かった関節ごとに指が転がる ころころそのままで良かった真実が僕を見捨て 嘘が僕を拾い上げた生命を繋ぐ肉体が 心臓を押しつぶそうとする/何故?前を向くために涙があるのなら涙が出ないのは 全てをあきらめたのか
2020年8月14日 01:19
遠い遠い未来の昔うたかた屋さんという泡売るお店が海のなかにありました色んなものから生まれた泡 例えばうたた寝する海藻の夢入り組んだ洞窟の迷図海を切り裂く甲板が流す錆びた涙そういったものから生まれた泡をビンなどに詰めて売っているのでしたうたかた屋さんの店先は風色 陽の色 海の色色とりどりに塗られた傘の内側にたくさんの泡たちを集めて 綺麗に飾り付けられていますまるで色んな
2020年4月18日 16:20
恐怖がココロを浸食しやがて終末に至る町はこれまで生産/悪食したどんなに生々しいバッドエンド・フィクションも無臭のまま腐り続け、代わりにこの世が臭うようだ道化を得ても王は得ず空回りの一人芝居、乾いた空で舞う不思議でも何でもないことだが老人には年老いた町が子供達にはサイケデリック高層ビル同士、生命のペイントが最高にイカしてる"ハカイセヨ ハカイセヨ""オマエノイバショヲ ハカイ
2020年3月13日 23:19
時々想像してみる わたしの全てが最高だったらって運動神経 バツグン 陸上部のエース級頭脳明晰 国語算数理科社会英語 全部テストで満点顔なんて誰よりもかわいくって クラスでアイドルやってるそんなことを考えてみたら……本当のわたしってああ 全然大したことないんだなって時々想像してみる わたしの全てが最悪だったらって借金して お金のない貧乏生活 お菓子も買えない怪我と病気で 身
2020年2月11日 21:07
掌に収まった、本の弾力を確かめている。線香の白煙と枯葉化粧が、彼岸の時刻に触れている。鈍い空が、どこか遠くでクラクションの響きを抱き留めた。日光で膨らむ布団、肌触り、寒さに感化、眠気を揺り起こす。ホットミルクの湯たんぽと、弄ばれた舌先のチョコレート――なめらかに蕩ける。無言の部屋には、雑多で曖昧な音が満ちている。いつの間にか、青色で、瞳萌える空気。いつの間にか、薄墨色、滲み霞
2019年12月22日 15:31
誰にも見えない透き通る刃物、僕の内の"何か"が握った。不自然に無痛の感覚。切りつけ傷つく裂け目から、僕が"僕"から剥がされていく。乖離、乖離、乖離……宙に浮いた裂け目、空白、僕等の間。"僕"は知らないふりをした。"僕"はもう僕ではなく……つまり今は"君"だった。君を僕は捕まえることができなくて、空を切る手。一人の感覚が剥がれていく、二人になる、二人のまま離されていく
2019年8月3日 21:49
子供たちは知っている夏は異界の門 ひらく太陽揺らめき 月は十六夜惹きあえばほらどこにだって現れるワクワクのファンタジー大人が忘れた わたしたちの遠い街自分の足で走り出せば必ずどこかで辿りつける透明な空と純粋な雲がそれを証明してくれる追いかけて どこまでも行く夏、原色の景色
2019年7月5日 23:44
君が一体何者なのか私は知らない 分からないまるで分かっているような気にはなって いたけれど君と私が出会う前どこに居たのか 何していたのかまるで分かっちゃいなかった何光年、何千光年、何億光年。不可思議、那由他、阿僧祇か。君が生まれた場所、終わりを迎える地。気にしたこともない 自分のことばかり考えてセント何度、何オクターヴ。君の聞こえない声の色、伝わらない熱の意味。不思議
2018年12月2日 22:34
ティーカップに手を当てて 伝わる微熱火照る水面が回す三半規管 移ろう景色を反射する艶(つや)やかな銀色スプーンで自分で揺らしたはずだったそれでも栗色の円流につられ つられてぐるりぐるりと流れの中心私こそが目まぐるしく回っているようにぐるり ぐるりぐるり ぐるり宙にさらされたスプーンに残った二雫微かに震えてあなたを映す頬にかかる白い香りは私の手を取り誘わせた「あなたと二
2018年11月10日 23:13
海に深く沈んで 水面より現れ出ずる 幻想(モザイク)の光の中を揺蕩うている夢だったあなたの髪の毛が 潮風のような匂いを孕んでいたので惑わされたのだ太陽の光は水のフィルターを通して 段々細々となっていった最後まで残った光の粒は 極上の砂金となって海の底に 静かに落ち残るそこは誰の手にも渡ることのない神の密かな安息地荒らさぬように そっと泳いでいかねばならない道中 神の化