詩 雨

しう、と読みます。 どうしようもない世の中だけど、言葉で生きていきたいです。

詩 雨

しう、と読みます。 どうしようもない世の中だけど、言葉で生きていきたいです。

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音楽と生きていく

 盆地の夏は暑い。設定温度28度じゃ賄えない。コンビニから自転車を走らせ、セミの声から逃げるように坂を下っていく。  アブラゼミか、ミンミンゼミか、ヒグラシか。短…

詩 雨
2か月前
30

風が吹く街、東京

3月初め。 わたしは東京のど真ん中に立っていた。 わたしにとって、初めてのひとり旅。 不安とわくわくが詰まったスーツケースをひきながら、人混みを縫うように歩く。 …

詩 雨
4日前
17

心地良い言葉の波に揺られて

前回の記事で、人生で初めて自分の文章がこれだけたくさんの人に読まれて、 スキやフォローの通知が来るたびに心がきゅっと飛び跳ねています。嬉しい。 やさしいコメント…

詩 雨
11日前
23

芸人になりたかった。

芸人になりたかった。 勇気を出して見に行ったお笑いライブ、泣きながら見た単独の配信、 寝られない夜に聴いたラジオ、長文で返してくれたDM どれだけ救われたか。どれ…

詩 雨
1か月前
122

4月も終わる 毛布をしまう

 大好きな春があっという間に散ってしまって、よく行くカフェにはもうかき氷の看板が出ていた。そろそろ毛布をしまわなきゃ。  新学期が始まる日、どうしても不安で夜中…

詩 雨
1か月前
15

好きなものだけ抱きしめて

 中高校生の頃、学校を休みがちで家でテレビや携帯ばかり見ていたわたしは、いろんなものに助けを求めた。毎日毎日生きる意味を探して、わくわくどきどきする何かを求めて…

詩 雨
1か月前
58

泣いても笑っても今日から新学期

もう深夜の2時をまわってしまった。 日が昇れば、春学期が始まる。 再履修でいっぱいの時間割を見ながら、深呼吸をする。 空気を吸っているはずが、肺に溜まっていくの…

詩 雨
1か月前
7

三月場所は勝負の場所

相撲が好きだ。 と言うと、返ってくる言葉はたいてい決まっている。  「えー、若いのに珍しいね」  珍しい。十両から結びの一番まで、14時半から18時までの約3時間半、…

詩 雨
1か月前
8

とけたアイスは心の中に

 ずっと読みたかったエッセイ本を通販で買った。注文ボタンをクリックした次の日には手に取れるのだから便利な世の中だ。  私はエッセイがものすごく好きだ。長い文章を…

詩 雨
2か月前
5

本の海に揺蕩う

 図書館でアルバイトを初めて一年になる。  規模の小さな図書館だけれど、一生かかっても読み切れない量の本がお行儀よく棚に並んでいて、未だに出勤するたびわくわくす…

詩 雨
2か月前
4

わたしのゆめ

 はたちももうすぐ終わる。二〇二四年の春が、もうそこまでやってきている。  最近、ふと考えるのだ。何のために生きているんだろう。今までの人生で、何十回、何百回、…

詩 雨
2か月前
10

クリームコロッケと深夜高速

通院の帰り道、必ず駅前のスーパーに寄る。 そこにはクリームコロッケがある。 なんの変哲もないよくあるクリームコロッケなのだけれど、わたしはいつも2つ入りのそれを…

詩 雨
2か月前
6

note初投稿。真っ暗な部屋で自己満足で書いていた文をどきどきしながら投稿して、誰かに読まれるのかな〜誰も読まないよな〜なんてしばらくほっておいたらメールが来て、「作品が読者に届いています!」の言葉でちょっと泣いちゃった
スキを押してくれた方が今日ちょっといいことありますように

詩 雨
2か月前
15

眠くないわたしへ

 目を瞑って三十を数える。  覚えたての数字を自慢げに読み上げ、三十とともにお風呂から飛び出す幼児を思い浮かべる。わたしにも確かにあったその光景に思いを馳せなが…

詩 雨
3か月前
9
音楽と生きていく

音楽と生きていく

 盆地の夏は暑い。設定温度28度じゃ賄えない。コンビニから自転車を走らせ、セミの声から逃げるように坂を下っていく。

 アブラゼミか、ミンミンゼミか、ヒグラシか。短い寿命に抗うように、体いっぱい音を鳴らしている。わたしも背中にギターの存在を感じながら、セミの羽みたいだな、なんて思う。さっきまで爆音でかき鳴らしていたギターも、シールドを抜けばおとなしくなる。羽をうまく折りたたんで静かに収まった、重い

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風が吹く街、東京

風が吹く街、東京

3月初め。

わたしは東京のど真ん中に立っていた。

わたしにとって、初めてのひとり旅。

不安とわくわくが詰まったスーツケースをひきながら、人混みを縫うように歩く。

わたしのことを何一つ知らない街。

田舎者丸出しなことはわかっていても、目に焼き付けたくてあちこちを見回す。

東京に来たのにはいくつか理由がある。

その一つが、東京に住む親友に会うためだ。

気付けばもう8年の付き合いになる。

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心地良い言葉の波に揺られて

心地良い言葉の波に揺られて

前回の記事で、人生で初めて自分の文章がこれだけたくさんの人に読まれて、
スキやフォローの通知が来るたびに心がきゅっと飛び跳ねています。嬉しい。

やさしいコメントもありがとうございます。嬉しくて嬉しくて、何度も眺めてしまいます。

やっぱり文章を書いて生きていたいと思っちゃうなぁ。

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昨日、親友に「自分の本を出したい」と打ち明けた。誰かにこんな大きな夢を話したのは初めて。

絶対に馬鹿

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芸人になりたかった。

芸人になりたかった。

芸人になりたかった。

勇気を出して見に行ったお笑いライブ、泣きながら見た単独の配信、
寝られない夜に聴いたラジオ、長文で返してくれたDM

どれだけ救われたか。どれだけ笑わせてもらったか。

SNSで4月からNSCに入ったという投稿を見るたび、泣きそうになる。
芸人を目指していると堂々と言える人が、羨ましくて仕方なくなる。
クラスの端っこにいるわたしには、何も面白いことは言えないし、
声も小さく

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4月も終わる 毛布をしまう

4月も終わる 毛布をしまう

 大好きな春があっという間に散ってしまって、よく行くカフェにはもうかき氷の看板が出ていた。そろそろ毛布をしまわなきゃ。

 新学期が始まる日、どうしても不安で夜中まで眠れずnoteを書いた。(『泣いても笑っても今日から新学期』)
 その続きを少しだけ書いてみる。

 朝、目覚ましより早く起きた。遅刻する夢を見たのだ。最悪の目覚め。

 家を出る1時間半前には起きていたのに、なぜか出発はギリギリ。ご

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好きなものだけ抱きしめて

好きなものだけ抱きしめて

 中高校生の頃、学校を休みがちで家でテレビや携帯ばかり見ていたわたしは、いろんなものに助けを求めた。毎日毎日生きる意味を探して、わくわくどきどきする何かを求めていた。

 そんな時に出会ったものが、ギターで、バンドで、野球で、お笑いで、ダンスで、ラジオで、、、わたしの生活を彩る数えられないくらいのきらきらするものなのだ。

 そんな大好きなものを自己紹介代わりに書いてみる。

 音楽との最初の出会

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泣いても笑っても今日から新学期

泣いても笑っても今日から新学期

もう深夜の2時をまわってしまった。

日が昇れば、春学期が始まる。

再履修でいっぱいの時間割を見ながら、深呼吸をする。

空気を吸っているはずが、肺に溜まっていくのは重い重い何か。
夕食後に飲んだ薬もまだ効いてこない。

わたしはこの半年間、大学に行けなかった。

一日中ベッドの上で、窓の外を季節が流れていくのを見ていた。
自分がわからなくなったし、何がこうさせているのかもわからなかった。
寝て

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三月場所は勝負の場所

三月場所は勝負の場所

相撲が好きだ。

と言うと、返ってくる言葉はたいてい決まっている。
 「えー、若いのに珍しいね」

 珍しい。十両から結びの一番まで、14時半から18時までの約3時間半、特に幕内の2時間は絶対に見逃せない。若い人たちにとっては、部活に勉強にバイト、なんでもフィーバータイム。まわしを着けた力士が取っ組み合って、それをただただ眺めているなんて、確かに珍しい大学生だと思う。

 相撲を好きになったのは大

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とけたアイスは心の中に

とけたアイスは心の中に

 ずっと読みたかったエッセイ本を通販で買った。注文ボタンをクリックした次の日には手に取れるのだから便利な世の中だ。

 私はエッセイがものすごく好きだ。長い文章を読むのがしんどいときも、エッセイならするっと読める。人が感じた日常の些細な瞬間のきらめきが、エッセイの中では生き生きとしたまま閉じ込めてある。読んでいる私も、その場に一緒にいられる。巧みな表現に痺れて、うおー、私もこんな文章を書きたい!と

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本の海に揺蕩う

本の海に揺蕩う

 図書館でアルバイトを初めて一年になる。

 規模の小さな図書館だけれど、一生かかっても読み切れない量の本がお行儀よく棚に並んでいて、未だに出勤するたびわくわくする。そんな棚の前を、今日もハンディモップを持って行ったり来たりしながら、背表紙から本の内容を想像する。わたしは想像の中で世界中を飛び回り、タイムマシンに乗り、自分でない自分になる。

 静かな図書館にはわたしを邪魔するものは何もない。心ゆ

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わたしのゆめ

わたしのゆめ

 はたちももうすぐ終わる。二〇二四年の春が、もうそこまでやってきている。

 最近、ふと考えるのだ。何のために生きているんだろう。今までの人生で、何十回、何百回、何千回と自分自身に問うてきた問い。だけど、その答えを出すタイムリミットは、刻々と近づいているのだ。就活が。 

 何がやりたいんだろう。何ならできるんだろう。

 昔はアイドルになりたかった。根拠もなく、なれると信じていた。きらきらした世

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クリームコロッケと深夜高速

クリームコロッケと深夜高速

通院の帰り道、必ず駅前のスーパーに寄る。

そこにはクリームコロッケがある。

なんの変哲もないよくあるクリームコロッケなのだけれど、わたしはいつも2つ入りのそれを買って、ひとつを駅のベンチで食べる。
もうひとつは、明日の朝の楽しみに。

気分が良ければノンアルコールのレモンサワーも一緒に飲む。少し前までは毎日のようにお酒を飲んでいたのに、薬を始めてから飲めなくなった。ノンアルは飲めば飲むほど身体

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note初投稿。真っ暗な部屋で自己満足で書いていた文をどきどきしながら投稿して、誰かに読まれるのかな〜誰も読まないよな〜なんてしばらくほっておいたらメールが来て、「作品が読者に届いています!」の言葉でちょっと泣いちゃった
スキを押してくれた方が今日ちょっといいことありますように

眠くないわたしへ

眠くないわたしへ

 目を瞑って三十を数える。

 覚えたての数字を自慢げに読み上げ、三十とともにお風呂から飛び出す幼児を思い浮かべる。わたしにも確かにあったその光景に思いを馳せながら、幼いわたしと一緒に数えてみる。

 十まで数えた頃だろうか。あたたかな布団に潜るわたしの上に、重い何かが乗っていることに気付く。その正体は、わたしのため息。あれやらなきゃいけないんだった、これもやらなきゃいけないな、あぁ今日も一日無駄

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