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数学教育に関する個人的意見

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私自身の数学教育への個人的な意見や考え方をまとめています。
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「40-16÷4÷2」ができない大学生を笑うな、という話

「40-16÷4÷2」ができない大学生を笑うな、という話


「40-16÷4÷2」ができない大学生SNSなどで一時期話題になったのが「40-16÷4÷2」ができない大学生についてです。

大学生の10人に1人が間違ったという話もあるようです。

このことに関しては多い言説がゆとり教育の弊害だ、というものです。

リンク先でもそこを切り口として論じているようです。

この続きには教科書の記述に不十分があるなど細かい説明を加えていますが、主張としては「ゆとり

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「日常生活絡めた指導」乏しい傾向を現場の責任にする文科省の無責任さ

「日常生活絡めた指導」乏しい傾向を現場の責任にする文科省の無責任さ


「日常生活絡めた指導」乏しい傾向OECDが実施している学習実態調査、「PISA(ピザ)」の結果が5日に公表され、日本では、数学の授業で日常生活を絡めた指導を受ける頻度が他国に比べて少ないことが分かったことがニュースになっていました。

これに対し文科省の担当者は以下のようにコメントしています。

日常生活の数学活用は少ないまず事実として、日本の高校教育において数学を日常活用するような活動を行うか

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「講義しない授業」は受験対策にどこまで実装可能か?【2023下半期】

「講義しない授業」は受験対策にどこまで実装可能か?【2023下半期】


「講義しない授業」の隆盛新指導要領が高校でも施行されて1年以上経ち、主体的対話的深い学び、という表現を体現する授業を模索している教員は少なくないでしょう。

私自身、ここ数年にわたって自身の担当クラスの中でさまざまな取り組みを導入して、試し、そして断念してきました。

これはある程度進学に力を入れている地方の学校、進研模試の上位が県内トップクラス、校内平均は全国平均とそこまで変わらない、国立大学

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「4cm÷5mm=8」問題に関わる雑感

「4cm÷5mm=8」問題に関わる雑感


「4cm÷5mm=8」問題とは最近、SNS上で教員、塾講師界隈で話題になっているのが「4cm÷5mm=8」問題です。

このツイートが話題になり、ニュースサイトでも取り扱われています。

正解か、不正解かまずはこの問題そのものに対する私自身のスタンスを書いていこうと思います。

結論から言えば、この式と解答に関して言えば「正解」とすべきではないかと考えています。

もちろん単位を式の中に入れるか

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数学Bの「統計的な推測」が難しすぎる問題

数学Bの「統計的な推測」が難しすぎる問題

学習指導要領の改訂が高校では昨年度から始まり、現高校2年生はその初年度学年になります。

数学という教科の中でもいくつか変化があり、今回の改定からは数学Cが新たに復活し、理系生徒が学習するのはⅠⅡⅢABCの6冊となります。

この中でも大きな改訂の一つが数学Bの統計分野、「統計的な推測」が必履修範囲となったことです。

この変更自体は時代の流れ、あるいは社会の要請でありICTを扱う人材の基礎教養と

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研修を通じて感じる「教科の壁」と横断的思考の必要性

研修を通じて感じる「教科の壁」と横断的思考の必要性

先日、数学教員の研修に参加しました。

暗記用アプリ「モノグサ」を提供するモノグサ株式会社主催、啓林館のFOCUS GOLDで代表執筆者を務める竹内英人名城大学教授を代表登壇者に招いて、AIと数学教育に関する研究会でした。

内容自体はためになるものであった研修会の内容は非常にためになるものでした。

具体的にはChatGPTなどのAIに対して数学指導者がどうあるべきか、いかに対応すべきかをテーマ

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「文章題の解き方の定石」は文章題の苦手を助長させる

「文章題の解き方の定石」は文章題の苦手を助長させる

指導要領の改訂、共通テストの方針、探究学習の充実など、近年は生徒に考えさせる教育が重視されています。

こうした方針自体は決して間違いないものだと思いますが、一方で大学入試(特に一般入試)の現状との乖離が問題となりつつあります。

いくら思考力を重視した入試を記述試験で出題している、といっても大半の大学は定石網羅とパターン暗記で合格ラインまでは到達できるからです。
(そしてそのノウハウは常に更新さ

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数学科教員の「統計を教えられない」問題

数学科教員の「統計を教えられない」問題

現高校2年生が履修しているのは新学習指導要領に基づく新課程の内容になっています。

これに伴い、多くの教科では既存の内容と置き換わった分野などが発生し、これまでとは異なる教科指導が必要となった場面も増えているようです。

高校数学の新課程での「統計」私の担当する数学科においても、今回のカリキュラムの偏向はこれまでにない規模のものになっています。

中でも最も大きい変化は「統計」分野の充実です。

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必要・十分条件問題に関する考察

必要・十分条件問題に関する考察

先日Twitterで必要・十分条件に関する問題の考え方について書きました。

連ツイで書いたこと、字数制限のために言葉不足もあったと感じたため、この内容をnoteにもまとめておきたいと思います。

必要・十分条件問題とは必要・十分条件問題とは以下のようなものです。

これは最も簡単な内容の一つですが、この問題を苦手とする生徒は非常に多い印象があります。

その理由は、この問題は2か所の問題の本筋と

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「かけ算順番」はどうしてこうも教員を熱狂させるのか

「かけ算順番」はどうしてこうも教員を熱狂させるのか

かけ算の順番に関しては以前、私も記事にしました。

Twitter教員界隈では繰り返し話題にされ、そして侃々諤々のやり取りがなされ、結局物別れに終わるという歴史を繰り返しています。

今回もまた、プチ炎上が発生しているようです。

さて、ではどうして彼らは物別れに終わってしまうのでしょうか。

私自身は数学教育的見地で考える者ですが、今回はあえてフラットに考えて分析をしてみたいと思います。

算数

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「大学数学」の適性と「大学受験数学」の得点力から考える「数学科」の入試とマッチング

「大学数学」の適性と「大学受験数学」の得点力から考える「数学科」の入試とマッチング

大学受験において、最も時間をかけて学習する必要のある教科は「数学」です。

これは私が数学科の教員だからというポジショントークではなく、実際の受験生の統計的な結果から得られた知見です。

一般に難関大学受験者の受験勉強時間は4000~5000時間と言われています。

特に理系の数学Ⅲまで利用する入試形式においては1500時間程度を数学に費やすケースが多いようです。

したがって、多くの大学の合格者

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「共通テスト試作問題」公開

「共通テスト試作問題」公開

昨日、11月9日に共通テストの試作問題が公開されました。

私の担当する数学やそれ以外にも大きな変更点があり、かなり話題になっています。

数学Ⅰ・A数学Ⅰ・Aに関しては大きな変更点はなさそうです。

というのも、共通テストに名前が変わった2020年から時間が70分に延長、文章読解型の応用問題形式に変更しているため、今回の変更はそれほど無いように感じます。

ただ、整数が範囲から外れたことで選択問

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「リフレクション」の効果に関する考察

「リフレクション」の効果に関する考察

ここ数年、授業の後に「リフレクション」(=振り返り)を生徒に書いてもらっている。

授業のプリントに本時の到達目標などを設定し、それに対して言語化する作業をGoogle formで入力する形式をとっていました。

それに関してのこの2年で得た知見をまとめたいと思います。

授業の流れと書かせるタイミング私の授業では、原則として15~20分程度の範囲学習解説をはじめに行います。

基本的な内容や教科

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なぜ彼らは「暗記数学」を嫌悪するのか

なぜ彼らは「暗記数学」を嫌悪するのか

ネット上の数学教育界隈では、総じて暗記数学に否定的な人が多いようです。

実社会で考えても、数学教育に一家言ある人ほど「暗記数学」を毛嫌いする傾向にあります。

この理由について考察していきます。

今回の内容はあくまでも大学受験数学に関してのものであり、小学校の算数などの「はじき」や「ドラえもんの鈴」については別問題としています。

教えることを放棄して「暗記」を強制する教員が存在した最も大きな

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