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#96 2023年12月に読んだ本【読書日記】

こんにちは☺️

当記事は、僕が12月に読んだ本の中から10冊をまとめたものです。
それぞれの本で、読んだきっかけ、このような方にオススメ、感想、印象的なフレーズを書きました。読む本を迷っている方にとって、参考になっていただけたら幸いです。


1.『光待つ場所へ』(著:辻村深月)

📖読んだきっかけ
今年の目標の1つである「辻村ワールドすごろくの作品を全部読む」……。11月が終わり、まだ2作品(+1)が残っている……。
……手に取っていました。

📖このような方にオススメの本です
・『スロウハイツの神様』『凍りのくじら』 『ぼくのメジャースプーン』『名前探しの放課後』『冷たい校舎の時は止まる』を読んだことがある

📖感想
辻村ワールドすごろくの作品による5編のスピンオフ短編集。
ふとした時に孤独を感じる瞬間がある。でもそんな自分が特別のように感じたり、心の奥底では寄り添って欲しいとの思いがあったり。その揺れ動く心情が、じわじわと心の中に入り込んでいくような感じがしました。
彼らが内面に向き合うのを通じて、自らの内面と向き合わざるを得なくなる。しかし、彼らの繋がりを通じて、世界の繋がりが素敵に感じる。何よりも辻村ワールドすごろくで登場していた彼らがより愛おしくなります。
そして、どの話も暖かな光に包まれたような読了感でした。特に印象的だった話は「チハラトーコの物語」「樹氷の街」です。
ただスピンオフ作品であるため、辻村ワールドすごろくの作品を読了したうえで本作を読むことをおすすめします。

📖印象的なフレーズ

「私、好きよ。作家になりたいとか、有名になりたいとかいう欲求以前にある『書いてみたい』って気持ち。あなたは偽悪的だから否定したがるかもしれないけど、そういう人の書くもの、読んでみたい」

『光待つ場所へ』

「じゃあ、いいことでも嫌なことでも、どっちでも、よく覚えておくといいよ」

「それがどんなことでも、いつか、思い出せる日が絶対来るから」

「たとえそれが、どんなことでも。――こんなふうに思い出せると思わなかったって自分でも驚くような形で、そのことを振り返る日が必ず来るよ」

『光待つ場所へ』


2.『死神の精度』(著:伊坂幸太郎)

📖読んだきっかけ
新潟市にある私設図書館「みんなの小さな図書館 ひとハコBase」に行った時にお借りした作品です。ちょうど伊坂さんの作品が読みたいと思っていた中で、未読の作品が置いてありそれが本作でした。

📖このような方にオススメの本です
・ユーモアを感じさせる会話のやり取りがある小説が読みたい
・普段の生活の中で、余計な雑念にとらわれがちだ

📖感想
死神の視点から見た人間たちが新鮮に見えました。微妙にズレているやり取りはユーモアさがあり、普段は曖昧な表現を用いて会話をしていることが多く、当たり前のような物事が実は当たり前ではないことに気付かされます。
生きていると何が起こるかは分からない。それを強く感じさせる第六話に、雑念が振り払われたような清々しさがありました。伊坂さんの作品は、生きることについて考えさせられながら、読了後は心がクリアになる印象がありますが、本作もまさにそのような感じでした。
六編による短編集。その中では、「旅路を死神」「死神対老女」が特に印象的です。

📖印象的なフレーズ

「俺はよく思うんだけれど、動物とは異なる、人間独自のつらいことの一つに、幻滅、があるじゃないか」
「幻滅?」
「頼りにしていた人間が、実は臆病者だったとか、信じていた英雄が、実は、馴れ合いを得意とする狡い男だったとかさ。味方が敵だったとか。そういうことに、人間は幻滅する。そして、苦痛に感じる。動物なら、たぶん違うんだろうけど」

『死神の精度』

「荻原はどう考えてるんだ?恋愛とは何だ」
「それが分かれば世話ないですよ。でも、たとえば、自分と相手が同じことを考えたり、同じことを口走ったりするのって、幸せじゃないですか」

『死神の精度』


3.『なんかいやな感じ』(著:武田砂鉄)

📖読んだきっかけ
本作は、新潟市の北書店で開催された武田砂鉄さんのトークイベントで購入しました。武田さんのお話を聴いたことで、すぐに読みたい気持ちがわきました。
(サインありがとうございました!)

📖このような方にオススメの本です
・平成の30年間を、歴史書とは違った側面から振り返りたい
・言葉の大切さについて考える時がある
・武田砂鉄さんと年代が近い(40代前後)

📖感想
平成の30年間、武田さんが当時過ごしていた日々の中で、社会に対してどう「感じていたか」について掘り下げている1冊。
「感じ」と言う漠然としたものだけど、当時の匂い、色合いが蘇ってくるようで、その時の自分は何を感じていたかを問いかけていました。『発掘!あるある大事典』の打ち切り騒動のように、メディア、特にテレビから受けていた影響は大きかったなと思います。それにしても、政治家の配慮のない発言はいつの時代も繰り返されているなと。
便利にはなったけど、今の社会はどこか窮屈に感じて、平成後期よりもさらに増幅している印象があります。武田さんの他の著書を読んでも感じることですが、様々な出来事に対して常に問いかけ、考える姿勢を持ち続けたいです。何でもかんでも前向きに処理するのではなく、いやな感じ、モヤモヤとした感じも大切にしたいと思いました。
内容に加えて、装丁や文章のみが淡々と書かれている点も印象的です。

📖印象的なフレーズ

目よりも耳の記憶が厚いのは、そういう家に育ったからなのだろうか。記憶が数珠つなぎのように思い出される。流れてくる音と自分の距離をその都度計測し、必要か不必要かを取捨選択する癖がついていたからなのか。だから、残されている音が強いつながりを持っているのか。耳は、情報を自分で手繰り寄せる。目は、情報を一方的に浴びる。この差ってけっこう大きい。

『なんかいやな感じ』

一人の人間が実際に体験できることは限られている。だからこそ私たちは、本を読んだり映画を見たりしながら、他人の経験を知る。あるいは架空の物語に身を委ねる。情報量が一気に膨れ上がり、取捨選択しながら生き続けるしかない私たちは、極めて意識的でない限り、「世代が入れ替われば姿勢が変わる」という企みに屈してしまう。

『なんかいやな感じ』


4.『はじめての』(著:島本理生 辻村深月 宮部みゆき 森絵都)

📖読んだきっかけ
YOASOBIの曲をよく聴くようになり、その中で気になった作品です。

📖このような方にオススメの本です
・YOASOBIが好き
・小説と音楽がコラボした新感覚の読書体験がしたい
・切なさ、ほろ苦さ、優しさを感じられる小説が読みたい

📖感想
直木賞作家の4名とYOASOBIによるコラボレーション作品。
何をするにしても、はじめては怖いもの。でも、未知の世界に飛び込んだ体験は、何にも代えがたい特別なものとなる。それぞれのお話を通じて切なさやほろ苦さもありますが、そっと見守ってくれるような優しさを何よりも感じました。
4編の中では「ヒカリノタネ」が一番印象的で、一見ありきたりなタイムリープものと思いきや、ジーンときました。
さらに、本作を読んだ後に対応している曲を聴き、MVを観ると鳥肌が立ちます。文字と音楽で楽しめる新感覚の読書体験ができ、YOASOBIがさらに好きになりました。

📖印象的なフレーズ

「本来は知り得ない未来を知ったところで、決していい結果にはつながらない。これ、私の経験上のポリシーよ。先が見えないっていうのは人類共通の不安要素だけど、先が見えたら見えたで、人間、どうしてもダレるのよ。わかりきった未来に向かって生きてもおもしろくないでしょ」

『はじめての』
「ヒカリノタネ」


5.『カラフル』(著:森絵都)

📖読んだきっかけ
本作の前に読んだ『はじめての』にある森さんの「ヒカリノタネ」がすごく素敵なお話だったのがきっかけです。いつか読もうと思いながらも積読になっていた本作を手に取りました。

📖このような方にオススメの本です
・どこか生きづらさを感じている中高生の方
・心がふっと軽くなるような小説を探している
・ずっと大切にしたくなるような名作を探している

📖感想
世の中は様々な色に溢れているからこそ、悩んだり迷ったりします。自分の見方によって色合いは変わってくるし、人は白や黒といった一色で決め付けられるほど単純ではありません。そして、知らないところで誰かに支えられていると気付かされます。 振り返ると中高生の時の自分は、世の中の色を自分が見たいように見ていたし、自分の世界を作って周りに境界線を引いていました。それにより、生きづらさを抱えていたように思います。その時の自分に贈りたいと、読了後に真っ先に思いました。
何気ない日常が軽快なタッチで描かれていて、斬新さがあるわけではないけれど、とても心を揺さぶられました。真相を知った時は心がふっと軽くなったような気がします。
今の自分にもすごく響く、これからも大切にしたい物語です。

📖印象的なフレーズ

人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。
この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。

『カラフル』


6.『もものかんづめ』(著:さくらももこ)

📖読んだきっかけ
とにかく笑えるエッセイといえば、朝井リョウさんのエッセイ。その朝井さんが、エッセイの中で本作に影響を受けたと書いていたのを見たのがきっかけで手に取りました。

📖このような方にオススメの本です
・力を抜いて読めるエッセイが読みたい
・日々の喧騒を忘れさせてくれるような笑える本を探している
・多彩な文章表現に触れたい

📖感想
『ちびまる子ちゃん』の著者、さくらももこさんのエッセイ集。
くだらなさと愉快さが全開のエピソードに、それを際立たせる多彩な文章表現。どのエピソードも笑えて、力を抜いて読めます。最後は少し感動もありました。
また、さくらさんのブレない信念や考え方は響くものがありました。30年以上前に刊行されましたが、現代にも通ずるものがあると思います。
朝井リョウさんのエッセイにも似たような表現があった気がすると、本作を読みながら思っていました。それだけ、朝井さんが影響を受けていたことが窺い知れたような気がします。
印象的な話は「乙女のバカ心」「週刊誌のオナラ」「結婚することになった」ですね。

📖印象的なフレーズ

あやふやな根拠からムリヤリ創られる記事は、オナラに似ている。実体が無いのに臭いのだ。

『もものかんづめ』


7.『横道世之介』(著:吉田修一)

📖読んだきっかけ
先日参加した読書会の主催者の方が吉田修一さんが好きで、それがきっかけで吉田さんの作品を読んでみたいなと思っていました。その中で、特徴的な名前やあらすじが気になった本作を手に取りました。

📖このような方にオススメの本です
・人との出会いを大切にしたいと思っている
・地方から上京してきた方
・1980年代後半に大学生だった方

📖感想
おっちょこちょいな感じで、押しに弱く何かと出会いを引き寄せる。そんな、どこか隙がある世之介の愛されキャラに序盤から引き込まれました。
様々な人と出会う中で、以前出会った人との記憶は薄れていく。でも、実は自分の人生に少しばかりの影響を与えているかもしれない。そして、その人とは次にいつ出会えるかは分からない。本作を読みながら一期一会という四字熟語が思い浮かび、1つ1つの出会いを大切にしたいと改めて思わせてくれました。
また、時代は違うけど、僕もかつては進学で地方から上京した身です。世之介が都会の色に染まっていく描写に、当時の自分の感情を思い出させてくれた気がします。
爽やかさがありながら、中盤からは見え方が変わり読了後は寂しさが色濃く残りました。
世之介のその後の歩みが気になったのもあり、続編も読みたいですね。

📖印象的なフレーズ

世之介と出会った人生と出会わなかった人生で何かが変わるだろうかと、ふと思う。たぶん何も変わりはない。ただ青春時代に世之介と出会わなかった人がこの世の中には大勢いるのかと思うと、なぜか自分がとても得をしたような気持ちになってくる。

『横道世之介』

「……明日、東京に帰ろうかな」
気がつくと、世之介はそう呟いていた。そして東京に「行く」ではなく、初めて「帰ろう」と言ったことに自分で驚く。

『横道世之介』


8.『風に舞いあがるビニールシート』(著:森絵都)

📖読んだきっかけ
『カラフル』がとても面白く、他の作品も読みたいと思いながら書店で探していて、棚にあった本作のタイトルが目に留まり読みました。

📖このような方にオススメの本です
・自分にとって大切なもの、価値観がぼんやりしている
・進みたい道があるが、迷いがあり一歩を踏み切れないでいる

📖感想
今年読んだ短編小説の中で一番の作品かもしれません。
仕事、恋愛、家族、青春……。異なる世界観の6つのお話どれもが濃かったです。考えさせられるだけでなく、予想できないラストの展開やタイトルを初めとした作中の表現も強く印象に残りました。
「お金」をはじめとした現実的な問題、周囲の声。そういったのにブレやすい僕にとって、揺るぎない大切なものや価値観がある人は眩しく見えます。でも、奇麗事だけを見て心の葛藤という影の部分は見ていなかった気がしました。そして、大切なものを信じるあまりにそれが執着心に変わってしまう怖さも。そういった中で、不器用ながらも自らの生き方に向き合う主人公たちのしなやかさに心を揺さぶられました。
自らの生き方に迷いが生じた時に読み返したいですね。

📖印象的なフレーズ

「レストランでランチをするお金があったら、ビビの二日分の缶詰を買える。エステに払うお金をまわせば二十日分も買える。そんなふうに考えるようになったとたん、それまでぐらぐらしていた毎日が、なんだか急に、なんていうか、信頼に足るものに思えてきたんです。世界を……っていうか、自分を、少しだけ信じられるようになったっていうか」

『風に舞いあがるビニールシート』


9.『うるさいこの音の全部』(著:高瀬隼子)

📖読んだきっかけ
心の闇の部分を突いてくる心理描写が印象的な高瀬さんの作品。決して読了感が良いわけではありませんが、他の作品を読みたいと思わせてくれます。今回は主人公が小説家という、ありそうであまりない設定も気になりました。

📖このような方にオススメの本です
・兼業作家の日常が気になる
・モヤモヤを突いた心理描写に触れたい

📖感想
ゲームセンターで働く朝陽と小説家としての有日。小説家という色眼鏡で見るようになった人たち。うるさい音の中で次第に自分を見失ってしまう様子、そして2つの境界がせめぎあう構成に、どれが本当か嘘か分からず次第に怖くなりました。
また、小説家の内面を覗いているような感じがしました。つい自分の内面を客観視して見てしまう。周りで起きた出来事をネタにして考えてしまう。そして、作品が世に放たれるまでの苦悩も。1つ1つの作品を大切に読みたいと改めて思いました。
高瀬さんの作品を読んでいると感じるのが、モヤモヤを突いた心理描写。心の隅に刺さるような感覚で、とにかくゾクゾクさせられます。また、生活感が漂う1つ1つの表現も強く印象に残りました。

📖印象的なフレーズ

朝陽に興味を持つ人たちは、でも、こんなことには興味を示さない。それならば小説にだけ興味を持ってくれればいい、作品だけを読んでくれたらいいのに、作者のことも見せろ教えろという、くせに、朝陽が夜中に泣きながら自分の書いた小説を消しているなどということには興味を持たない。昼間どんな仕事をして、子ども時代はどんな性格で、学校ではどんな立ち位置にいた子で、小説以外の趣味はなにがあって、運動するのかしないのか、お酒は飲むか、煙草は吸うか、結婚はしているか、子どもはいるかといった、一層外側のことにばかり興味があるのだ。

『うるさいこの音の全部』


10.『満月珈琲店の星詠み』(著:望月麻衣)

📖読んだきっかけ
カフェ・喫茶店巡りが好きな僕。最近は知識を深めてより楽しみたいと思い、カフェ・喫茶店やコーヒーに関する本を読んでいます。その中でカフェ・喫茶店に関する小説を探していたところ本作が見つかり手に取りました。

📖このような方にオススメの本です
・カフェ・喫茶店巡りが好き、猫が好き
・占星術に興味がある

📖感想
冒頭のイラストにあるスイーツやドリンクは思わず見惚れてしまいます。本編での文章からも口いっぱいに美味しさが伝わってくるようでした。
心温まるお話の中で見入ったのが、マスターたちの星詠みです。自分を知ることは自分を大切にすることにつながる。上手くいかない時は、前に進むのではなく立ち止まり、今の位置を確認しようと思います。
占星術ってどこか胡散臭い印象がありましたが、とても奥が深そうで、僕も自分のネイタルチャートが知りたいと興味がわきました。
読了した日はちょうど満月の日。個性的な猫たちが夢に出てこないだろうかとワクワクしながら眠りにつきました。

📖印象的なフレーズ

「かき集めた勇気は、『拒絶』という強風を前にすると、簡単に吹き飛ばされてしまうものなのよ。食い下がれるというのは、自信がある人だけができることなのよね」

『満月珈琲店の星詠み』


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