短編小説『年寄りが消える村』
年寄りが消えるこれは、私が小さい頃にお祖父さんから聞いた話です。お祖父さんがまだ所帯を持つ前の若い頃、九州の田舎を一人で旅していた時に出会った村の話です。
その村は山奥にある三十軒ほどの集落でした。他所者(よそもの)のお祖父さんにも、お茶を出してくれたり、とても親切にしてくれました。お祖父さんは、気さくで明るい村の人たちや、美味しい水や空気だけでなく、時間がゆったり流れる村の雰囲気が気に入りました。お祖父さんはその村の農家の納屋の二階を借りて、しばらく滞在することにしました