炭(すみ)

炭(すみ)

最近の記事

世界樹リプレイ日記Ⅱ(最初の試練)

(↓前回の話) 拝啓、お父さんお母さん。 お元気ですか。 私は今、一度も入ったことのない森の奥にいきなり連れて来られて置き去りにされています。 どうやってここまで来たのか覚えていません。 ちょっとだけ迷宮の中を見てみようと思っていたら、入口にいた兵士さんに引っ張られるようにしてあっという間に奥の方まで連れて来られてしまいました。 その兵士さんももういません。 ひとりぼっちです。 ピンチです。 「どうしよう…」 どうもこうもない。 先ほどの衛士から言われたよう

    • 世界樹リプレイ日記Ⅱ(ギルド設立)

      (↓前回の話) 旅立ち 1年と数ヶ月ぶりに故郷に戻ったミントは、家へ帰ると両親からこっぴどく叱られた。 かねてより冒険者に憧れていたミントだったが、冒険者になることに反対していた両親を最後まで説得できないまま故郷を飛び出していたからだ。 きっかけは、村には滅多に訪れることのない旅人が何気なく口にしたエトリアの迷宮の話と、その最深部に挑み続けるとあるギルドの噂。 めくるめく冒険譚と、それを紡ぐ自分と同い年ぐらいの年若き冒険者たちの話を聞いたミントは、とうとういてもたって

      • 世界樹リプレイ日記Ⅱ(プロローグ)

        (↓前回の話) 真冬の凍えるような日だった。 戌神ノ月二十七日。 鈍色の甲冑を身に纏う一人の兵士が山奥へ向かう街道を急ぎ馬を奔らせていた。 見上げれば、分厚い雲が空を覆い、辺りは薄暗くなり始めている。 これはじき吹雪くと兵士が覚悟したと同時に、鼻先に羽根のような白く冷たい雪が触れ、次第にちらちらと降り始めた。 山に近付くにつれ視界は白くなっていく。 昨夜も深々と降り積もったのだろうか、山々の木々は雪に覆われ枝葉は煉瓦のような白い塊を重たそうに支えている。 このような僻地にお

        • 世界樹リプレイ日記(閑話・世界樹リプレイ日記Ⅱ(前日譚))

          (↓前回の話) 「お願いします!私をあなた方のギルドにいれてくださいっ!」 穏やかな日の昼下がり。 冒険者達が集い賑わう『金鹿の酒場』にて、少女の高らかな声が鳴り響いた。 喧騒の只中にあって、その声は真剣味を帯びて際立ち、雑談に花を咲かせていた周りの客たちは何事かと視線を動かした。 冒険者に年齢による制限はなく、年若く未だ成人を迎えていない者も少なからずいるとはいえ、多くの層を占めるのはやはり腕っぷしに自信のあるむくつけき男ども、幼い子供などは滅多におらず、とりわけ

        世界樹リプレイ日記Ⅱ(最初の試練)

          世界樹リプレイ日記(第五階層)

          ※本記事には「世界樹の迷宮」の重大なネタバレを含みます (↓前回の話) B21F~B24F 第五階層。枯レ森から下へと下った君たちの前に広がったのは、見たこともない建造物が立ち並ぶ光景だった。 遺跡…そう、遺跡と言っていいだろう。 自然に出来たものとは思えない、乱立する人工物。 石畳の壁や床には蔓や蔦が巻き付き苔や葉が至る所に広がっており、ときおり巨大な幹が床を突き抜け天井にまで至っている。 どれだけの時が経てばこのような景色が作り出されるのか。 十年や百年と言った程度

          世界樹リプレイ日記(第五階層)

          世界樹リプレイ日記(目次)

          15年の時を経て再誕した世界樹の迷宮HDリマスターのプレイ記録を、 せっかくなので日記として残したいと思って始めたものです。 文字をクリックすると各話にリンクします。 性質上ネタバレを含みますのでご注意ください。 ※第五階層よりも第六階層の方が先に来てますが読み順的にはそれで合ってます 世界樹リプレイ日記 第一階層   ↓ 第二階層   ↓ 閑話・樹海の戦士Ⅰ   ↓ 第三階層   ↓ 閑話・クイーンアント再戦   ↓ 閑話・樹海の戦士Ⅱ・Ⅲ   ↓ 第四階層   ↓

          世界樹リプレイ日記(目次)

          世界樹リプレイ日記(第六階層③)

          ※本記事には世界樹の迷宮クリア後の要素を含みます。 (↓前回の話) B30F(火竜・雷竜戦) 氷嵐の支配者を下した君たちは破竹の勢いで残りの2体の竜を撃退していった。…と、一言で纏められれば聞こえは良かったのだが、そう簡単にはいかなかった。特に、火竜。相性が悪かったのか、君たちの戦術が拙かったのか。いずれにせよあの偉大なる赤竜に、君たちは多大なる苦戦を強いられた。 戦闘方針は氷竜戦と基本的には変わらない。ブレス攻撃はルゥの歌で防ぎ、敵の部位を封じ、戦力を削いでいく。だ

          世界樹リプレイ日記(第六階層③)

          世界樹リプレイ日記(第六階層②)

          ※本記事には世界樹の迷宮クリア後の要素を含みます。 (↓前回の話) B29F(即死はいいぞ編) B27FとB28Fを往復していた頃、アサギも「引退」をしていた。パーティ全体の戦力低下が危ぶまれたが、レンリの弓に以前のような冴えが徐々に戻りつつあったことから、決行に至った。アサギは、忘れる事には自信があると胸を張っていた。アサギは何もない所でよく転び記憶を失う悪癖があった。 アサギを選んだのは本人の謎の自信とは関係なく、他に理由があった。ルゥには仲間の経験を上乗せする『

          世界樹リプレイ日記(第六階層②)

          世界樹リプレイ日記(第六階層①)

          ※本記事には世界樹の迷宮クリア後の要素を含みます。 (↓前回の話) B26F(はじめての引退)  君たちは悩んでいた。第五階層を踏破し、更なる深淵への扉を開いた君たちだったが、自らの成長に限界を感じていた。以前のように身体能力が向上することも、新たな技を編み出すことも無くなった。にも関わらず第六階層の魔物は強大で、先を進むのであれば戦力の増強が望ましいところだった。  「引退」という制度がある。冒険者が冒険から足を洗い、後継者に引き継ぐ制度の事だ。引退する事情は様々だ

          世界樹リプレイ日記(第六階層①)

          世界樹リプレイ日記(第四階層)

          ※本記事には「世界樹の迷宮Ⅰ」の重大なネタバレを含みます。 (↓前回の話) B16F  君たちがクイーンアントと再戦した時やシトラが水辺の処刑者に挑んでいた時から、時間はやや前後する。第三階層を踏破し、B16Fの探索を進めていた君たちだったが、それより下に進む道を見つけられずにいた。森の奥に進み、隠し通路か何かが無いか探っていると、君たちの行く手を塞ぐような木々の壁、その木の一つに明らかに人工的なくぼみがあることを見つけた。何かがはまりそうなくぼみだった。  君たちは

          世界樹リプレイ日記(第四階層)

          世界樹リプレイ日記(閑話・樹海の戦士Ⅱ・Ⅲ)

          (↓前回の話) 酒場で新しいクエストが掲示された。 曰く、第三階層に棲まう水辺の処刑者を単独で討伐せよ。 はっきり言って正気の沙汰ではない。 水辺の処刑者は只でさえ強力な上、頑強な熟練冒険者すら即死させる爪を持っている。 これでは力試しではなく運試しだ。 殆ど自殺行為と言っても過言では無かった。 このようなクエストが、普段パーティは5人で組むのを勧めるだのバランスは大事にしろだのとのたまっているギルド長からの挑戦だと言うのだから恐れ入る。 大方、質(たち)の悪い酒精(アル

          世界樹リプレイ日記(閑話・樹海の戦士Ⅱ・Ⅲ)

          世界樹リプレイ日記(閑話・クイーンアント再戦)

          (↓前回の話) 一狩り、行こうぜ! 君たちが宿でのんびり朝食を摂っていると、ルゥが高らかに声を上げて現れた。何の話か尋ねると、ルゥは得意げに語り出した。曰く、迷宮に棲まう魔物は一定期間経つと復活する、それはF.O.E.や各階層のボスも同様であり、狙えば多くの経験や貴重な素材が手に入る、と。 君たちはそんなこと言われずとも知っていた。以前にもスノードリフトが復活しているのに気付き倒したこともあったのだが、どうやら華麗に忘れているらしい。そのあたりは優しくスルーしてトルテが

          世界樹リプレイ日記(閑話・クイーンアント再戦)

          世界樹リプレイ日記(第三階層)

          (↓前回の話) B11F(ブシドー加入編) 君たちが第三階層への入口を開放したことで、執政院は調査に乗り出した。しかし、既に数名の兵士を送り込んでいても彼らだけでは心もとないらしい。君たちが駆け出しの頃B1Fで警備を続けていた兵士は頼もしく見えたものだが。地図の作成なら望むところ。君たちは依頼を受けることにした。 酒場でジュースを飲みながら今後の探索について話していると、君たちの元へ訪ねる者があった。 最近第二階層を踏破したギルドとは貴公達のことだろうか。 またか、

          世界樹リプレイ日記(第三階層)

          世界樹リプレイ日記(閑話・樹海の戦士Ⅰ)

          (↓前回の話) 酒場で新しいクエストが張り出された。 『B6FのF.O.E.に単身で挑み勝利せよ』。 討伐対象は何度も戦ったこともある森の破壊者。 普段であれば苦戦することもない。 単身であったとしても、与えたダメージで傷を癒す剣技を修めたトルテであれば苦もなくこなすことは想像に難くなかった。 しかし。 わたし、やりたい。 アルケミストのシトラが手を挙げた。 君たちはシトラを見つめた。 意外だった。 シトラは自己主張の強い人物ではない。 常に眠たげで、君たちの時折取るお

          世界樹リプレイ日記(閑話・樹海の戦士Ⅰ)

          世界樹リプレイ日記(第二階層)

          (↓前回の話) B6F(前編) B6Fに降りた君たちはモンスターの強さに面食らった。 B5Fでは既に鼻歌を歌いながら散歩出来るほどの余裕があったが、ここでは慎重に進まなければ全滅しかけないほど敵の攻撃は痛かった。 その多くが毒性を持つ生物で、また、毒そのものも強力だった。 君たちは迷宮に入りたての頃を思い出した。 あの時は1日に数回の戦闘が限界だった。何日もかけ少しずつ先に進んだ。そうして第一階層を踏破した。 生きて帰ることが何よりも大事だと君たちは経験で学んでいた。

          世界樹リプレイ日記(第二階層)

          世界樹リプレイ日記(第一階層)

          前文 『大陸の辺境に位置するエトリアという名の小さな街で大地の下に広がる樹海が見つかった。  エトリアの統治機関執政院は大陸中に樹海探索の触れを出し数多くの冒険者を集めることにした。  しかし幾人の冒険者が集まろうと樹海の奥深くに潜り、富と名誉を手にする者は現れずにいた…。  …誰にも踏破されない樹海はいつしか世界樹の迷宮と呼ばれ畏敬の対象と化していった。  ………君もまたその布令に応じエトリアに向かう若き冒険者である。  その目的は一つ、樹海を探索し、"心躍る冒険"に身を

          世界樹リプレイ日記(第一階層)