西井貴恒@国試浪人生

『太宰治賞2023』に小説作品『魚の名前は0120』が掲載。来年こそ研修医の予定 ※記…

西井貴恒@国試浪人生

『太宰治賞2023』に小説作品『魚の名前は0120』が掲載。来年こそ研修医の予定 ※記事などのコンテンツは所属する組織と無関係です

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固定された記事

コーラを自作し、炭酸飲料の可能性を探る

はじめに  コーラが高い。  先日、俺は道を歩いていて思わず目を見開いた。自販機にあるコカコーラの500mlのボトルが一本でなんと180円もする。はっきり言って…

言葉とは、その原理からいって他者の存在を前提としているのだから、使用者に対して他者の存在を想定しようとさせるという倫理的原理があり、またその一方で、他者と関わらなくてはならない、他者に配慮しなくてはならないという強迫を与えるものでもある。

(承前)言葉を使う側が、言葉に使われてしまう。そして、世間で使われる頻度の高い言葉──多くの人の中で発生頻度が高い凡庸な情感へとあなたは回収され、世間へ服従することとなる。世間での使用頻度が高い言葉ほど使いやすい表現に落とし込まれるし、逆もまた然りであるという原理が働いている。

また、これ(承前)とも関連しているが、言葉というものはおおよそ、社会の枠組みのなかへ標準化させようとする圧力を使用者へ向けるものである。したがってその力に刃向かい負けないように立ち向かえなければ、あなたは言葉に扱われるがままになってしまう。言葉に負けてしまったあなたは無力である。

言葉は矛盾した仕組みである。自分の存在を確かめるために自分を表そうとした結果、社会の相対性の中に自分を放り込むこととなる。その結果、言葉によって表された自分の姿はあまりに不恰好で醜く、元あったはずの存在感、自分自身という固有性──というより透明な絶対性は跡形もなく失せている。

存在することの与件:哲学『不安の克服』その1

 言葉を手にしたとき、我々は存在することすら許されない。  これは矛盾、ジレンマの片面であり、そしてある種のダブル・バインドの片面である。言葉はこのように逆らい…

小説家になるために自分が目指していたことの振り返り;15歳から現在までのプレイバック

 甘えが生じていた。この十年あまりの自分についての話である。  その原因の一つとしては、頭の回転の速さを意識的に落としていたことが挙げられる。  なぜそんなことを…

『魚の名前は~』の振り返りなど 2023.12.18 【なぐり書きの日記】

『魚の名前は0120』が商業誌『太宰治賞2023』に掲載されてもう半年となる。この作品をしっかり振り返る時期がそろそろ来たような気もするが、医師国家試験も近いの…

【なぐり書きの日記】2023.09.19 Twitter 勉強法

 勉強の経過を記録していこうと思う。それもTwitter──”X”とはまだ呼びなれないし、聞きなれないので、しばらくはこう呼ぶ──にである。Twitter のスマホアプリには便…

【なぐり書きの日記】2023.09.16 フィクションの構想と身体化(無料部分で完結)

 身体化という概念がある。ややこしい、というより厄介な概念だ。この言葉はかなりあいまいに、直感に任せて使われる向きが強く、それゆえ論理の正当性を恣意的に作り出し…

【なぐり書きの日記】2023.08.16(水)本屋で200冊見てきました

 14日は一日中出かけていた。あまりにも最近うだつが上がらないので、ここは早起きして外に出てみようと考えたわけだ。台風もこれから立て続けに来るようだし、しばらく…

【生存戦略】有料連載はじめます

 自堕落である。野原しんのすけのよく言うセリフとして「ゴロゴロするのに忙しい」というものがある。母親の野原みさえにとってこれは言い訳でしかないが、俺はその気持ち…

【なぐり書きの日記】2023.08.11(金)

※この記事は連載ものです。本来なら有料で販売したいところですが、内容があまりに貧弱すぎて、有料で売りつけるのはどう考えても憚られるので、初回ということもあって無…

精神分析を知ってみる ① 男性の中に棲む「未完の女性」

※今回の話のテーマはあくまで医療に関することですが、精神分析というテーマを扱う以上、性的な事柄が非常に多く、人によっては大変不快を催すような記述があります! 少…

放りっぱなしになった数々の事柄について

 怒りに任せてこの文章を書いている。何に対しての怒りか。これまでやることなすこと全て、半端なまま途中で放り出して、それが堆積していることへの怒りである。堆積とい…

人ならざるモノの意志:『新世紀エヴァンゲリオン』について

 先日友人から聞いた話。日本人のキリスト教信仰にはある特徴が目立っているとのことで、いわゆるご利益を求めてしまうところが日本人の信仰の弱さだと彼は語っていた。彼…

コーラを自作し、炭酸飲料の可能性を探る

コーラを自作し、炭酸飲料の可能性を探る

はじめに

 コーラが高い。
 先日、俺は道を歩いていて思わず目を見開いた。自販機にあるコカコーラの500mlのボトルが一本でなんと180円もする。はっきり言って、驚きを禁じ得ない価格設定である。俺はとっさにあたりを見渡した。ここは富士山の頂か、もしくはディズニーランドのただ中か。そうでなければこんなにコーラの値段が吊り上がっているなんてにわかには信じかねる。しかしいくら目を凝らしても視界に入るの

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言葉とは、その原理からいって他者の存在を前提としているのだから、使用者に対して他者の存在を想定しようとさせるという倫理的原理があり、またその一方で、他者と関わらなくてはならない、他者に配慮しなくてはならないという強迫を与えるものでもある。

(承前)言葉を使う側が、言葉に使われてしまう。そして、世間で使われる頻度の高い言葉──多くの人の中で発生頻度が高い凡庸な情感へとあなたは回収され、世間へ服従することとなる。世間での使用頻度が高い言葉ほど使いやすい表現に落とし込まれるし、逆もまた然りであるという原理が働いている。

また、これ(承前)とも関連しているが、言葉というものはおおよそ、社会の枠組みのなかへ標準化させようとする圧力を使用者へ向けるものである。したがってその力に刃向かい負けないように立ち向かえなければ、あなたは言葉に扱われるがままになってしまう。言葉に負けてしまったあなたは無力である。

言葉は矛盾した仕組みである。自分の存在を確かめるために自分を表そうとした結果、社会の相対性の中に自分を放り込むこととなる。その結果、言葉によって表された自分の姿はあまりに不恰好で醜く、元あったはずの存在感、自分自身という固有性──というより透明な絶対性は跡形もなく失せている。

存在することの与件:哲学『不安の克服』その1

 言葉を手にしたとき、我々は存在することすら許されない。
 これは矛盾、ジレンマの片面であり、そしてある種のダブル・バインドの片面である。言葉はこのように逆らい難い桎梏を我々に課し、意地の悪い苦しめ方を倦むことなく続ける。それは自重というものをまるで知らない悪しき魂がごときである。千本の針の山はあなたがこの地に誕生する前から用意されていた。その針をこの地に植えたのは言葉であり、世間であり、社会性と

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小説家になるために自分が目指していたことの振り返り;15歳から現在までのプレイバック

 甘えが生じていた。この十年あまりの自分についての話である。
 その原因の一つとしては、頭の回転の速さを意識的に落としていたことが挙げられる。
 なぜそんなことをしていたのか? 理由は二つある。一つには、自分の注意散漫な体質を制御するためというのがある。思考の速度が高ければ高いほど、不必要な考えや拙速な結論付けで、頭の中が溢れかえってしまう。これらは注意散漫の直接的な原因であるし、散漫になるのを解

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『魚の名前は~』の振り返りなど 2023.12.18 【なぐり書きの日記】

『魚の名前は0120』が商業誌『太宰治賞2023』に掲載されてもう半年となる。この作品をしっかり振り返る時期がそろそろ来たような気もするが、医師国家試験も近いので、ある程度簡便な形で今回は済ませておきたい。そのついでに、俺が長く構想している「変なラノベ」についても述べておきたい。
 哲学上の問題として「存在」なる概念を扱うにおいて、人間にとっての「存在」と、伝統的な形而上学が目指していた「存在」の

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【なぐり書きの日記】2023.09.19 Twitter 勉強法

【なぐり書きの日記】2023.09.19 Twitter 勉強法

 勉強の経過を記録していこうと思う。それもTwitter──”X”とはまだ呼びなれないし、聞きなれないので、しばらくはこう呼ぶ──にである。Twitter のスマホアプリには便利な機能があり、特定のアカウント内の投稿に範囲を限定してキーワード検索ができるというものだ。だから、記法を統一すれば自分が何をいつ勉強したかが簡単にわかるということである。
 衆人の目にさらすことで、自分の勉強の進捗に対して

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【なぐり書きの日記】2023.09.16 フィクションの構想と身体化(無料部分で完結)

【なぐり書きの日記】2023.09.16 フィクションの構想と身体化(無料部分で完結)

 身体化という概念がある。ややこしい、というより厄介な概念だ。この言葉はかなりあいまいに、直感に任せて使われる向きが強く、それゆえ論理の正当性を恣意的に作り出している──すなわち、身体化されていれば是、という格調ある符牒によって、評する者の個人的好みを正当化してしまう──風潮すらある。ポストモダンの論者において、身体化という概念やお作法は便利な懐刀であったし、自家薬籠中のものであった。しかしその薬

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【なぐり書きの日記】2023.08.16(水)本屋で200冊見てきました

 14日は一日中出かけていた。あまりにも最近うだつが上がらないので、ここは早起きして外に出てみようと考えたわけだ。台風もこれから立て続けに来るようだし、しばらく行けなくなるかもしれない大阪市内のジュンク堂に、気になる本を見に行ったのである。
 俺は本屋に長居するのが全く苦ではない。6時間から7時間くらいまでなら休憩を挟まずにひたすら歩き回って目当ての本を続々とチェックし続けることができる。hont

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【生存戦略】有料連載はじめます

【生存戦略】有料連載はじめます

 自堕落である。野原しんのすけのよく言うセリフとして「ゴロゴロするのに忙しい」というものがある。母親の野原みさえにとってこれは言い訳でしかないが、俺はその気持ちが痛切にわかる。ゴロゴロしなければそのあと活動的になることができないのだ。気力を蓄えている、というと語弊がある。というより、活動していて取っ散らかった頭の中が整理されるのを待つ、という具合だ。俺の頭の中は頻繁に散らかるのだが、全力で活動しよ

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【なぐり書きの日記】2023.08.11(金)

※この記事は連載ものです。本来なら有料で販売したいところですが、内容があまりに貧弱すぎて、有料で売りつけるのはどう考えても憚られるので、初回ということもあって無料で公開します。次回以降はもうちょっと内容もあると思うので、許して!

 とりあえず今しないといけないことがある。論文が2本あって、それをしっかり読み込まなくてはいけない。だが論文というのは結構読むのに時間がかかるものだ。とりあえず1本読み

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精神分析を知ってみる ① 男性の中に棲む「未完の女性」

精神分析を知ってみる ① 男性の中に棲む「未完の女性」

※今回の話のテーマはあくまで医療に関することですが、精神分析というテーマを扱う以上、性的な事柄が非常に多く、人によっては大変不快を催すような記述があります!
少なくとも食事中に読むことは推奨しません! 僕は注意しましたよ!
また、執筆者は現在学生であって臨床心理学や精神医学の専門家ではないので、内容の信頼性は何ら保証されていないことにご注意ください!!

 人間は劣等感を覆い隠すためならいくらでも

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放りっぱなしになった数々の事柄について

 怒りに任せてこの文章を書いている。何に対しての怒りか。これまでやることなすこと全て、半端なまま途中で放り出して、それが堆積していることへの怒りである。堆積といえば、無計画に本を買ったあげく積読にして、リボ払いの残高がかさんでいることも深刻ではあるが、とりあえずその話はおいておく。
 まどろっこしい前説は省いて、これまでに俺が半端なまま放り出しているものを以下に列挙してみる。
・ドイツ語
・C++

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人ならざるモノの意志:『新世紀エヴァンゲリオン』について

人ならざるモノの意志:『新世紀エヴァンゲリオン』について

 先日友人から聞いた話。日本人のキリスト教信仰にはある特徴が目立っているとのことで、いわゆるご利益を求めてしまうところが日本人の信仰の弱さだと彼は語っていた。彼に教えを授けた(?)聖職者は南米の出身らしく──南米のキリスト教信仰はそれはそれで元々のキリスト教のかたちと大きく違うとは思うが──神という絶対者を前にすると自分自身がどのように惨めであろうが困窮していようが、信仰以外の選択肢はない、という

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