なつき

時間と空間、もう手に入らないものに愚かにも手を伸ばす日々/http://kitsu7.…

なつき

時間と空間、もう手に入らないものに愚かにも手を伸ばす日々/http://kitsu7.hatenablog.com

マガジン

  • 東京の街、いつかの交差点

    東京をこよなく愛する気持ちを、こよなく愛している東京のごはんやさん/カフェなどを巡っているときの気持ちとリンクさせて、誰でも追体験できる幸せを記したい。という試みです。

  • 木挽町徒然

    歌舞伎の観劇録を書こうとして、言葉を積み重ねることしか出来ないくせにすべてを記録できないことに絶望するだけの記録

  • 涯てなき文字の海に

    溺れた記録。

最近の記事

五月歌舞伎と切られの与三、あるいは役割を全うするということ

恒例の、今月の観劇録。 今月はご贔屓が休演なのでそんなに熱量高く観るものもないかなとたかをくくっていましたが、とんでもなかった。脈々と続いていくいつか線になる点を目撃したな、という印象。 まずは歌舞伎座午前の部、海老蔵さんです。 雷神不動北山櫻、思っていたより楽しめた。海老蔵さん、観客を喜ばせるわかりやすい間を作るように努力してるのかなと思った。もっと疾走感があるとよりいいんだろうなー。今月も可愛いまるるが観られて嬉しかった 終演直後にこんなツイートをしていました。

    • 青山ブックセンター六本木店を悼む

      青山ブックセンターの存在を初めて知ったのは、江國香織の本の中だったと記憶している。 中学生の時、江國香織の本を好んで読んだ。文章の温度、ひらがなと漢字のバランス、登場人物たちの憎めなさが好きだった。 東京の街に愛着がわいたきっかけも、今思えば彼女の作品の舞台の多くが東京だったからかもしれない。 青山ブックセンターが閉店するというニュースは、あまりに衝撃的で、私は思わずその場で立ち止まってしまった。 本屋よりも書店という言葉の方が似合う気がする、あの空間。居住まいを

      • 2017年秋冬ひとこと観劇録

        *2017年年末に書いていたものを今更ながらお焚き上げ。 九月からこっち、忙しさにかまけて記録を怠っていましたが、引き続き色々な歌舞伎を観ました。今更過ぎて公開するのもお恥ずかしいですが、常に全ては語られるべきであるという信念の元に遺しておく。 九月ー谷口裕和の会九月歌舞伎座については以前書きましたので割愛。今回は市川團子さん、市川中車さんの息子さんが越後獅子を踊られるということで、国立へ。 越後獅子の前になんと、中車さんの藤娘がありまして、この時点で会場は大盛り上がり

        • かじかむ手、傘二つ分の距離が似合う新宿

          新宿には冬が似合う、そう思うのはかつて大好きなバンドが「突き刺す12月と伊勢丹の息が合わさる衝突地点」と歌ったからだろうか。 新宿は、私にとっていくつかの顔を持つ街だ。というよりも、私が生きてきた時間の中で、様々なタイミングで新宿という街を漂ったから、多面的かつ断片的にかかわりがある街だと言える。 今から10年ちょっと前、中学受験を経て、渋谷にある中高一貫女子校に進学した。校則が中々厳しい学校で、スカート丈や髪型や制バッグなどいろいろなルールがあり、それを守らせる厳しい先

        五月歌舞伎と切られの与三、あるいは役割を全うするということ

        マガジン

        • 東京の街、いつかの交差点
          3本
        • 木挽町徒然
          6本
        • 涯てなき文字の海に
          0本

        記事

          秀山祭九月大歌舞伎

          最近、中川右介著『歌舞伎 血と家と藝』、郡司正勝著『かぶき入門』を読了しました。いずれも早稲田大学関係者であるのが面白いところ。前者は歌舞伎役者に焦点を当てたもので、色々な名跡についてその歴史を紐解いてくれました。個人的には芝翫、歌右衛門などこれまであまり意識したことのない役者だったり、仁左衛門、羽左衛門など好きな役者だったりの関係性、因縁みたいなものを俯瞰出来て面白く読みました。 また、後者については、大御所の河竹繁俊先生のお弟子さん?の著作ということもあり、かなり学術的

          秀山祭九月大歌舞伎

          八月納涼歌舞伎観劇録

          巨大な扇風機とミストに囲まれて三部の幕見席のチケットを買い求めた私は、どうしても我慢できそうになかったので、二部のチケットもオンライン購入。しかし今回は奮発して1階席で。久しぶりの1階席、舞台を上から見下ろすのに慣れてしまったのでなんだか初めてきたかのような新鮮な気持ちになった。 というわけで二部の『修禅寺物語』『東海道中膝栗毛』を観劇してきました。 江戸時代、夏はもちろんクーラーも扇風機もなく、しかも人が多い中での上演だったので、妖怪や幽霊など所謂背筋が冷たくなるような

          八月納涼歌舞伎観劇録

          八月納涼歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』

          いやあまいった、まいったなあ。という気持ちでいるのは、思考を占領されるだけの熱量がそこにあったという事実を認めざるを得ないからだ。 下敷きの坂口安吾の小説は未読、野田作品も初めてという下地ゼロの中、頭フル回転で拝見しました。今月は『団子売り』も観たいし二部の岡本綺堂と十返舎一九も気になるし、しかも夏休みで観客の入りはいいしで、なかなかハードだった(二部は後日観に行きます)。 ネタバレ満載の観劇録なので心してご高覧ください。坂口安吾の原作やら批評やらを読んだらまた何か結び

          八月納涼歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』

          いつまでも子供でいさせてくれる日本橋

          心のふるさと、お江戸日本橋。私は日本橋をこう呼びたい。 江東区深川に5年ほど住んだあと、私たち一家は中央区日本橋へと引っ越した。日本橋と言っても日本橋箱崎町、水天宮のあたりなのだが、箱崎町と言っても伝わらないので日本橋のあたり、と人には言っている。なんだか少し嘘をついているような気持ちになりながら。 この家には10歳から22歳まで住んだ。最も多感な時期を過ごしたからだろうか、私にとって「実家」は今でも箱崎の家、だ。 中高は渋谷の私立一貫女子校に進学したのだが、毎年配られる

          いつまでも子供でいさせてくれる日本橋

          私と東京と、それ以外の街たち

          東京という街が好きだし、東京にいてこそ私は私でいられる、と思う。 東京に住み始めたのは5歳のとき、父親の転勤でそれまで暮らしていた東北を離れ、江東区深川のあたりに住むことになった。それまで暮らしていた東北の家は広く、近くに川があり、幼稚園にはスキーウェアを着て行っていた幼い私にとって、東京はまったく驚くべき土地だった。……と言いたいところだが、正直そんなに大きな衝撃はなかった。確かに深川の家は東北に比べると手狭になったし、マンション12階、永代通りに面したその部屋は比較的車

          私と東京と、それ以外の街たち

          七月歌舞伎観劇録

          七月歌舞伎を観に行った。今年3回目の歌舞伎座。河竹黙阿弥の脚本が好きなので、基本的に黙阿弥作品を演るときは観に行くようにしているのだけれど、今月は小林麻央さんのこともあり、ためらっていた。ただ、午前の部の三幕目『連獅子』は思い入れのある懐かしい作品でもあるし、来月は黙阿弥作品がないようなので、観に行くことにした。 案の定幕見はものすごい混みようで、チケット販売30分前に行ったのだけれど午前の部の一幕目『矢の根』は完売、お目当ての『加賀鳶(盲長屋梅加賀鳶)』も立ち見という有様

          七月歌舞伎観劇録

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          道路のはざまの灯りが消えたとき、誰かの恋が終わったのでしょう ふと思い出した君はもう会えない、これを絶望と呼ぶのだろう きっと前世ではきょうだいか恋人ね、と笑いあえる残酷な距離 素敵な思いつきには共犯者が必要だ、お風呂上がりのアイスとか * やや字余り多め。3つ目が一番気に入っています。 #短歌

          人生ネタ作り

           人生ネタ作り、がわたしの人生のモットーだ。と公言するようになったのはいつからだろう。年配受けしなさそうなフレーズだけれど、確実にわたしの背骨になっている言葉だ。  たぶらかすという言葉が好きで、何故なら言葉で狂わせるから。ひとひとりを狂わせるのに、身体なんて使うまでもなくて、言葉だけでその気にさせることはできると思う。かわいい笑顔と隙があればパーフェクト。  「こうなりたくない」という斥力が反転して引力になっている気がする。文系に行きたくない(女の子の大多数なんて「私立

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          shut up and deal

          いろいろあって大きなデスクトップとキーボードを手に入れた。これまでずっとノートパソコン派で、一度もデスクトップを持ったことのない私は、デスクトップと聞くとアップルのおおきな四角い箱を連想します。だいぶ古い。 いろいろと書く場所を持ちすぎていて―Twitter、Instagram、自分の記録用のブログ(もう10年以上使っている…)と公開しているけど読者はいないと思われるブログ、手帳などなど―、人格、気分もしくは書きたいことに合わせて場所を作っているんじゃないかと思うけれど、そ

          shut up and deal

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          かなしさをずっと待ってるふりをして バターが溶けた頃には忘れてる

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          会いたいね 会いたいねって 言い合って どこでもドアの発明を待つ