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うつわマガジン2019

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#エッセイ

愛しの土鍋とオーブンと

愛しの土鍋とオーブンと

ちょっと「土鍋」に恋い焦がれている。

なんの話か。まずは天気だ。今朝カーテンをあけると、外はどんよりと曇りだった。

今週は、南半球の夏空は休業中。太陽は雲隠れし、うっすら肌寒い。秋冬のニットを着て、本日の夕飯に想いを巡らす。お鍋がいい。カセットコンロの上で、くつくつ湯気をのぞかせる土鍋に会いたい。

家には夫が買ってきた、銀色のピカピカした料理人のこだわりだかなんかの両手鍋がある。耐熱性はピカ

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旅する土鍋2019 「途立つ誕生日のスケルツォ」(後編)

旅する土鍋2019 「途立つ誕生日のスケルツォ」(後編)

(前編よりつづき)

後半目次

3. ドレスと口紅時速100〜 120キロくらいで飛ばせば、リグーリアからミラノまで2時間ほどで到着する。そんな道中も、おかしな話は継続的に、まじめに語られた。

ミラノに着いて一度解散。わたしは、居候している師匠宅のギャラリーの窓を開け風を通したり、洗濯物をゴソゴソやっていた。数時間後、驚くことにイーゥインちゃんは背中が大きくあいたドレスを身に着け、真っ赤な口

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旅する土鍋2019 「途立つ誕生日のスケルツォ」(前編)

旅する土鍋2019 「途立つ誕生日のスケルツォ」(前編)

イタリア語「スケルツォ」は「冗談」という意味かつ、音楽の世界では快活で急速な三拍子の楽曲を示す。おどけた感じが「冗談」という言葉と重なる。ショパンの「スケルツォ第2番 変ロ短調」などがそのひとつ。

前半目次

1. 肉眼と無限遠なレンズ私たちはリグーリアの海にいた。
前の晩に書いた七夕の短冊を見ながら「願いは叶うのだろうか」なんて、無限遠に合わせたレンズでもって話していた。娘のように年齢が離れて

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ちょっとブレイク「春のおとない」

ちょっとブレイク「春のおとない」

春うららであるが、こちらは泥どんよりとでもいおうか。

生きたものを相手にする仕事とは、つめるなと言われても、根をつめなければならないことがある。相手がどんどん育ってしまうのだから、全ての体力でおいかける。子どもを育てることにも似ている。土の中の根っこも、人も、つめられたら苦しいだろう。

イタリア人の陶芸師匠の仕事っぷりにはこの「つめる」がなく「おす」くらいなんだよなあと、冷たい水道水で手を洗い

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