髙橋サフラン

京都市内在住。ライター/コピーライター。 毎晩強制的に短歌を一首つくることを自身に課し…

髙橋サフラン

京都市内在住。ライター/コピーライター。 毎晩強制的に短歌を一首つくることを自身に課している。そのほか「意味のカスタマイズ」という妙な屋号でも活動中。 一応誇れるのは、インタビューマガジン「世田谷十八番」のライターであること。普段は特養で介護士をしています。

最近の記事

変わらなくていいものと変わっていいもの

一応初詣という枠で、奈良は東大寺の大仏さまに手を合わせて来た。 20年以上前に中学の修学旅行で訪れたときは、イヤイヤ行ったんだと思う。きっと同級生とだべりながら、だるさを出すほうがかっこいいと勘違いしながら、参拝時間をやり過ごしたんだろう。 でも今回は当然、自分たちの意思でわざわざ車を走らせた。 消極的参拝から積極的参拝へ。長い時間を経て、個人レベルでは大きな変化があったといえる。 そして20年以上前と何ら変わりのない大仏さまの御姿。その迫力たるや。 こちらの事情で何年経

    • 村上隆さんを出汁に

      村上隆さんの大規模個展が来年2月からここ京都で開催されるというから、個人的にはうれしいニュース。 しかももしかしたら日本国内でこの規模の個展を開くのは最後かもしれない、本人が何かのインタビュー記事内でそうほのめかしてもいたので、観に行くつもりのコチラとしても、集中して村上作品を目に焼き付けようと思っている。 そのようななか、今回ピックアップしたいのは彼のこのポーズである。 仮にアフレコするなら、「ワオ!」か「どひゃー!」とか「おったまげー!」……そのあたりの感慨をポーズ化

      • ゴジラを出せばなんとかなる

        88歳独語強めの方の第一趾の爪が気になったので 「ゴジラみたいだな」とつぶやきながら、そのマッシブな爪をぶった切ったり削り落としたりして整えている。 ようこそ、ここはグループホーム。 リビングにて爪切りの施行に入ったばかりの僕。だがすぐに、奥のほうでのっそりと立ち上がる人影を視界にとらえる。このフロアでの最年長・93歳が、何かを思い出したように急に座席から立ち上がる。 大丈夫、危な気はなさそうだ……。そしてそのままゆっくり、ゆっくりと、こちらへ向かって歩いてくる。 こりゃ

        • 認知症が救いになることもある

          むかしむかしあるところに、一人の企業戦士がいました。 「24時間戦えますか?」と聞かれたなら、おそらく二つ返事で「はい」とうなずいたであろう、所属企業にどっぷりの戦士。ザ昭和的会社人間。 きっとかつての同僚たちからは、めちゃめちゃ頼られたり慕われたりしていただろうと想像します。 過去、実際の彼の仕事っぷりや会社愛の大きさについては、もはや今では知りようがありません。 だから今のぼくらが頼れるのは、あくまでもフェイスシート上の情報です。 その情報上、かつての彼は、家庭につ

        変わらなくていいものと変わっていいもの

          佐野元春と宇野昌磨

          ミュージシャン・佐野元春と、フィギュアスケート選手・宇野昌磨。 この二人が同じステージ/同じスケートリンクに並び立つ姿は、おそらく一生ないように思う。 仮に宇野昌磨選手が佐野元春さんの大ファンであれば、バラエティ番組の企画でオファー云々・ドッキリ云々が成立するのかもしれないけど、そんなことは起き得ない。なんせ世代はおろか、キャラクターも全然ちがう。お互いの趣味趣向も確実に交わらないタイプだからである。 だがそんな二人が、他人の土俵ではぶつかり得る。 誰の土俵かって? ぼ

          佐野元春と宇野昌磨

          缶詰めをめぐる価値観

          夕食時のグループホーム。 介護職員・Hさんの言う「缶詰めだから」が気になった。 今日の夕食は中華丼。みなさん、よく進んだ。 器の形状が丼ぶりだから食べやすいのか、とろっとした液体が具材や白米と混じり合うことで掻き込みやすくなるのか、そもそも美味いからなのかはわからない。でもとりあえず、丼ぶりものが出た食事時には高齢者の方々の食事がよく進む。 だからメニューに丼ぶりものが出ることは、私たち介護職員的にも(仕事量がやや減るので)都合の良いことである。 おぼんの左上、置いてある

          缶詰めをめぐる価値観

          本当にそれで、座席を確保したつもり?

          フードコートの魅力は、自分が食べたいものを相手の都合度外視で食べられることだと思っている。 このシステムは家族連れにもカップルにも、友達グループにとってもありがたい話ではないだろうか。だって気分じゃない店の気分じゃない料理を選ぶ必要はなく、本当に自分が食べたいものをたくさんの選択肢から選ぶことができる。 しかも別ジャンルの食べ物を持ち寄ったら、シェアしたり会話のフックにしたりすることもできるだろう。今さらながら「フードコート」って、もっと見直されていい画期的なシステムではな

          本当にそれで、座席を確保したつもり?

          どこからが下品でせうか。ぺろぺろ

           うちのグループホームではほぼ17時きっかりに夕食の配膳がはじまる。  たしかにご老人の方々は夜寝るのが早けりゃ朝起きるのも早い。となるとご飯の時間も(ぼくたちの時間感覚より)前倒しになるのが自然だとは思う。  それでもさすがに、17時ジャストの夕食は早過ぎやしないだろうか。  今日の夕食は麻婆茄子だった。  ご自身で食べられる方には温かいうちにさっそく召し上がってもらう。ぼくの小腹が空く時間帯と重なることもあって、他人の夕食がやけに美味そうに見えてくるもの。そこで感化され

          どこからが下品でせうか。ぺろぺろ

          ディズニーよりもピーナッツ

          (実家は)千葉県です。 そう答えると―—ここが京都のせいか―—地理的にも音韻的にも「滋賀」だと聞き間違えられることが多い。出身地を誤解されたところで業務上なんの問題もないんだけれど、そのまま雑談が進むのは落ち着かないので、すぐに「関東の」や「東京のとなりの」で補足する。この時に妙なプライドが働いている自覚はある。でもその由来や正体までは自分でもよくわかっていない。 いずれにしても、千葉県からはるばる来た身であることまでは理解してもらえた。すると話は、定番のあの話題へと移行する

          ディズニーよりもピーナッツ

          きーざくら~

          「きーざくら~」 と口ずさんだら、「どん~」というレスポンスはどれだけあるだろう。 このタイトルがあって、冒頭でもこう書き出されたら、次はどんな話の展開が待っていると思うだろうか。ちょっと他者視点に立って想像してみたい。 ・ざっくりと、お花見にまつわる話 ・世代間ギャップの話 ・酒といったら「黄桜っしょ」というステマめいた話 ・印象に残っているテレビCMの話 ・とりあえずジングルに乗せると記憶に残りやすいよね、という話 ・黄桜といえばカッパで、カッパからはじまるUMAや妖

          きーざくら~

          書きたいときに書きたいことをかくかくしかじか

          書きたいときに書きたいことを書く。 心からこのスタンスでいたら、1000字くらい書いたところで集中力が切れたり、思うように書き進められなくて諦めたりで、投稿までいたらない日が増える。では翌日に続きを、と思って下書きの編集を開くものの、その日の僕の気分はまた違ったりする。 つまり結局2023年そこそこ日は経つが、まだ一つもnoteを投稿できていなかった。それで早くも3カ月近くが過ぎてしまった……。 これは野球でいえばフォアボールだろうか。打席には立つものの「まだ、この球じゃな

          書きたいときに書きたいことをかくかくしかじか

          映画評のようで、全然ちゃう話。(おそらく今年最後の投稿にもかかわらず)

          先日『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を観てきた。仰々しい専用のサングラスをかけてから約3時間半ものあいだじっと座っていられたことを振り返ると、映画にのめり込んでいたんだと思う。 実際、映像美とやらには驚かされた。ストーリーも嫌いじゃなかった。『アポカリプト』なんかもそうだけれど、未開の地に入植して起こるすったもんだの話には、これまでほぼ無条件で好反応を示してきたような気がする。だからジャングルを舞台にした人間ドラマには、とかく弱い自覚がある。 そんな僕だが、リアルな身

          映画評のようで、全然ちゃう話。(おそらく今年最後の投稿にもかかわらず)

          名前があるのは社会的に価値があるから

          かつて歌人の穂村弘さんが言った印象的な言葉に、「名前があるのは社会的に価値があるから」というものがある。 一言一句を完全再現はできてはいないかもしれない。だからもしかしたら彼のアイロニカルな一面が出て、「社会的に価値のないものに名前はない」という真逆・否定的な言い回しだったかもしれない。 ただニュアンス的には合っているはずだ。当時コピーライター養成講座に通っていた僕の前にそびえ立つステージの上、ゲスト登壇者として招かれた穂村さんは、「名前」と「社会的価値」の関係性について確実

          名前があるのは社会的に価値があるから

          服薬介助の無駄話

          錠剤と粉薬はどっちが先だろう。 というのも介護を仕事にしていると、毎日とんでもない量のお薬を扱わなければならない。主に食後がゴールデンタイム。いや、シルバータイムといったほうが適切かもしれない。 いずれにしても医師に処方されているお薬を、各ご高齢者に確実に、滞りなく飲み込んでもらわなければならない。そのために介護士として介入させてもらう。そこそこに神経をすり減らす任務であろう。 もしチョンボがあろうものなら、即カンファレンスが開かれ、チームとしての改善策をお上に明示する必

          服薬介助の無駄話

          お花見の花ってサルスベリでもいいのでは

          今見頃のサルスベリ。夏から秋にかけて花を咲かせる落葉高木だ。その開花期間がざっと100日間であることから、漢字では「百日紅」と書くのが一般的。だが「猿滑」という別の漢字を当てられることも多い。それは読んで字のごとく(木登りの得意な)猿ですらすべってしまうという意味合いに由来する。そうサルスベリ最大の特徴は幹肌にあって、皮が剥げてすべすべとしているのだ。だから目が慣れてくれば、冬でもサルスベリを簡単に見分けることができる。 ただやはり、サルスベリの魅力が存分に発揮されるのは今の

          お花見の花ってサルスベリでもいいのでは

          門掃きのポテンシャル

          早朝の庭先、玄関前、あるいは路上にて。門掃きのついでに始まった井戸端会議なのか、井戸端会議をしたくて門掃きをしているのかはわからないけれど、とりあえず朝からいくつかのグループが井戸端会議をくり広げている。そんな光景を横目に入れながらロードバイクを走らせるのがぼくである。 ほうきを片手に持ちながら、あるいは両手に抱えながら話し込む人々。ここではあえて「おばちゃんたち」と呼ぶことにするが、おばちゃんたちがくり広げている会話の中身を想像すると、ぼく的にはそこそこ怖い。 勝手な先入観

          門掃きのポテンシャル