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caseExtra-01 :日記
第二十九回文学フリマ東京【入場無料】 2019/11/24(日) 11:00〜17:00 ・会場: 東京流通センター(キ-41) ・詳細: https://bunfree.net/event/tokyo29/ 上記に参加すること…
case03-03 : 黒い面接官
その少女(?)は背中をまるめ、外敵を警戒する小動物のように、入り口の外からキョロキョロと店内を覗き込む。
席から「前を見て」とメッセージを打ち込んで送ると、少女は届いたメッセージにビクッと肩を震わせると同時に前を向き、大きく目を見開く。
店の外でひとりでビクビクしている姿は、無声映画のピエロを見ているようだ。
ガラスの扉ごしに見える少女は、やや地黒の肌に薄い髪色、大きな目が特徴的だ。通った鼻
case03-02 : 濃紺の道化師
ふぅ…とタバコの煙が夕暮れ時で朱色に染まった空に、ふわりとかかる。海沿いの倉庫裏の一角。設置型の大きな灰皿にタバコを押し付けると、隣にいた現場の責任者に声をかける。
「それじゃ、あとはよろしくお願いします」
まったく今日は朝から動きっぱなしだ。ガシャンガシャンと耳をつんざくプレス機の轟音から逃げるように、待たせていたタクシーに足早に乗り込む。
・・・
・・
・
新浦安は埋め立て地に
case03-01 : 道化師からの手紙
2月。時刻はまだ午前中。
窓越しに見える通りには、行き交うサラリーマンの姿が目立つ。
お気に入りのファミレスの、お気に入りの日が差し込む窓際ソファ席で注文が届くのを待つ。浅く腰掛け、背もたれに大きくもたれかかり、足を組み、天井を仰ぎ見る。お世辞にも姿勢が良いとは言えないが至福の時間だ。
店内は暖房が充分にきいており、冬用のコートは少し蒸し暑く感じたが、脱ぐ動作すらしたくなかった。絶妙なバランス
case01-23 : 黒猫
5月になっていた。
狩尾と出会った冬からもう既に暖かな季節に移り替わり、木々は青々とした葉を揺らしていた。
狩尾の別宅を訪れた翌日、約束された額が振り込まれていた。もう狩尾がどういう生活をしているのかも分からない。
ただ、狩尾の母親とはなぜか身の上話を聞くような関係になっていた。身近に話せる相手がいないのだろう。俺も何故か話を聞いていた。
「そうそう!藤嶋さん、来週えりが誕生日なんです
case01-22 :幸福
「そ、そんなこと言われても事情が分かりませんし関係のしようがないですよ!」
今井が俺が肩に置いた手を、身をよじるように振りほどき声をあげる。
「狩尾さん、今井さんの言うことはもっともなんだが俺から説明するか?」
俺は狩尾が今井に対してどう自分の家のことを説明しているかも知らない。まずはそれを含めて承諾を得るかのように狩尾に預けてみることにした。
「…え?私?えっと、その…」
ここで察する。今
caseExtra-01 :日記
第二十九回文学フリマ東京【入場無料】
2019/11/24(日) 11:00〜17:00
・会場: 東京流通センター(キ-41)
・詳細: https://bunfree.net/event/tokyo29/
上記に参加することになりました。
ただ今この時点でもまったく現実感がございません。本は学生の頃に狂ったように読み漁っていた時期がありましたが、ここ数年はとんとご無沙汰でしたし…「誰かが
case01-21 :覚悟
「え、なに、なんで」
混乱する狩尾の顔を見ながらドアに手をかける。
「探したよ狩尾さん、また面白いところにいるんだね」
グレーのパジャマ姿の狩尾が、思わず後ろを振り向き彼氏を確認する。
少し大きな声をあげれば届いてしまう程度の広さ…ワンルームに毛が生えた程度というところか。玄関から延びる廊下からリビングへ繋がる扉は閉まっており、中からは何かのバラエティ番組から流れてくる下卑た笑い声が漏れている
case01-20 :確保
着いた駅は、最初に出会った大井町駅であった。
なるほど、ここに別宅があるのか。
初めて会った際は、お互いのアクセスの関係で大井町になったと考えていた。実際は単純に別宅の近くだったということだ。
東口を抜けたあと、狩尾は迷いなくスタスタと歩いていった。紺色のスーツにヒールを履いた始業式用の後ろ姿は、ちょっとしたOL風にも見える。時間にして15分程度だろうか。既に位置関係としては青物横丁駅に近い場
case01-19 :発見
狩尾の家を後にする。
かなりの時間、狩尾の母の愚痴に費やされはした。その中で聞き出せた有益な内容としては、月に数回週末こどもに会いに来ていることからそれほど親子関係は悪くない程度であった。狩尾からこどもへは一定の愛情があるように感じる。
しかしそれを見込んで毎週末家を張り込むことも現実的に難しいし、失うコストも大きすぎる。
ただ狩尾が現れる可能性が高い日を選ぶのは容易だった。今は
case01-18 :家庭
「狩尾はわたしですが」
「…は?」
一瞬何を言っているのか分からなかった。軽く30歳ほど老けてしまったのか?いやまさかそんなわけがない。
「狩尾明代さん?」
初老の女性はふっと目を伏せると
「…もしかしてまたあの子は何かしたんですか」
と答えた。
なるほど、<母親>か。一瞬混乱してしまったがそう見るのが普通だ。恐らく狩尾の子供であろう女の子は狩尾の母親の斜め後ろに下がり、どこか冷めた目
case01-17 :訪問
新川崎駅。19時。
川崎駅はかなり発展した印象が強いが、新川崎となると雰囲気がだいぶ違う。寺や神社、住宅街が広がるいわゆる何の変哲もない街だ。ちょうど武蔵小杉での貸付予定が済んだ後、その足で新川崎に向かったのだった。
結局、返済日である25日が過ぎた後、狩尾から連絡は来ないままだった。経験上だいたい3日以内に連絡が来ない場合は、ほぼ逃げたと思って間違いない。今の時代、コンビニだろうが何だろ
case01-16 :暗転
3月、日差しも暖かくなり過ごしやすい日も出はじめ、狩尾とも次第にとりとめのないくだけた会話が増えていた。
貸してる側・借りてる側の関係ではあるものの、狩尾に限らず返済日に至るまでは可能な限りは<普通の対応>を心掛けている。相手が人ということを忘れてしまうとどこまでしてしまうか分からない。
『今日は動物園いってきましたよ!』
『昨日きたお客さんが嫌で嫌で…もう出勤したくないです…』
『トーアさん
case01-15 :食事
確かに今日は何も食べていなかった。
しかし俺はそもそも基本的に1日1食、もしくは3日2食程度の食事量というエコ生活なのだ。あまり空腹も感じてもいなかったが、お言葉に甘えて<俺の金で奢られる>という不思議な話が始まった。
「西船橋やけに詳しいな」
狩尾は都内でも西側だ。西船橋という駅を使うことはあまり考えられなく不思議に思い、言いかけたところで口をつぐむ。上川に呼び出されたことがあるのかもし
case01-14 :要求
「上川さんさ、提案があるんだよ」
「・・・はい」
タバコが吸えないから苛立っていたというわけではない。
「お互いこの状況で話してても平行線だろう?俺が身分証出せと言ってもだせないし、それに代わる案もあんたは出せそうもないし」
実際この状況で既に1時間以上は経過し、その間何かを俺が話すたびに上川の顔色は紅く青くと忙しく繰り返していた。狩尾は下を俯いた状態で沈黙を保っている。寝てるのかと途中疑っ
case01-13 :包囲
「誰?」
これから裏にあるホテルに女と行く気満々だったところに、見たこともない男が突然現れたのだ。当然の質問だった。
ちゃんとした(?)闇金であればそういった行為も脅す材料にするか、撮影したものを裏に売り払うくらいで、良くも悪くも金銭以外には興味はない。裏を返せばこんなことになっている時点で素人とも言える。
「この状況で現れる男なら誰だと思うんだ?」
身体を相手に向け、覗き込むように様子を