スネ夫走り

とっとこ走ります

スネ夫走り

とっとこ走ります

最近の記事

あこがれ

私には憧れの人や物がたくさんいる。 あの人になりたくて自分を着飾ったり、歌ってみたり、書いてみたり、描いてみたり。 あのバンドのフロントマン 昔に死んだロックスター 儚い目をした女の子 お洒落なモデル どんなこともそつなくこなすあの子 仕事が早い先輩 誰かに向けて叫んでいるシンガーソングライター 一輪だけど真っ直ぐと咲いている花 どこかに向かって飛んでいく鳥 道端に寝転ぶ猫 飼い主に忠実な犬 それらになれたらどんなに楽だろうとか、生きやすいだろうとか。 そんなことをふと考

    • This Time

      例えば明日にはすべてが終わるとしても、私はあなたの言葉に救われて、未来などいらないと言うのだろう。あなたの言葉が曖昧だとしても。思い出したくない過去であってもあなたの言葉によって、愛せそうになる。 いつかやってくるだろう終わりとは、季節の変わり目の様に自然に訪れるのだろう。暖かくなって桜は咲くけど、すぐに散ってしまうように。もくもくと育った入道雲は雨を降らせるけれど、雨はいつか止むように。葉は色彩を豊かにするけれど、風に吹かれて落ちるように。風もいつかは止むように。 「私

      • 夏の終わり

        うだるような暑さに負けそうになる9月 テレビやラジオではまだ夏の暑さが続くというけれど、私の中で夏は終わった。 8月の31日間に夏は詰め込まれるべきなのだ。 冷やし中華を始めるラーメン屋 朝の公園に響くラジオ体操 人が居ない閑散とした教室 入道雲の下で走り回る子供達 祭囃子の音がするいつもと違う街 人で埋め尽くされる砂浜 7日間を生きるセミの声 夕暮れに聴こえるヒグラシの声 音と共に消える打ち上げ花火 少し大人になれた気になる田舎の家 手を繋いで買いに行く深夜のアイスクリー

        • あなたのかけら

          新宿の雑踏の中を1歩1歩確かめるように歩く。あの頃の私はそんな風になにかに怯えていた。あの人の咥えていた煙草の銘柄は今でもはっきりと覚えている。 全部夢だったのかもしれない。そう思いたくはないけど、そう思うことで私は記憶に蓋をしようとする。 大学4年の夏のことだった。あの人と出会った時のことは忘れたくても忘れられない。ゼミの同期達と答えのない問いを絶え間なく投げかけ、将来への漠然とした不安をアルコールで流し込む。いつもの夜だった。 同期達と手を振り別れ信号待ちをしていた時の事

          モノラルオーディオ

          右耳が聞こえなくなったイヤホンを耳に突っ込んで電車に揺られる。 あなたの声はいつも右側から聞こえていたな。 助手席で聞くあなたの声と、スピーカーから流れる音楽。 それが好きだった。 今はこのイヤホンのように聞こえないけど。 あなたとの恋はモノラルになってしまった 一緒にしすぎたの イヤホンから聴こえる音楽のように、片側では別々の音が鳴っていて、 一緒にしたら聴こえなくなってしまうその小さな音が大切なんだよ 片耳しか聴こえてこない音楽を聴きながらあなたのことを思い出す。

          モノラルオーディオ

          歓声の中に

          ライブやフェスや花火大会など大勢の人が同じものを楽しむような、 そんなイベントが大好きなんです。 とても楽しくて夢のようで、このままずっと続けばいいのにって思います。 あの空間に人生が集まってる気がして、怖いような、美しいような気持ちになります。 その場の誰よりもはしゃいでいるあの子の今までは、死んでしまいたくなるような人生だったかもしれないし、静かに眺めているあの子のこれからは、バラ色の人生なのかもしれない。 人には人の地獄があると聞いたことがあるけれど。 誰もが今まで

          回想

          祖父の軽自動車に流れるラジオから正午のNHKニュースが聞こえる。 祖父の車に乗って、祖母と妹たちと一緒にダムの水遊び場や果樹園に行く。小学生の夏休みはいつもそうだった。 夏の太陽が肌を突き刺し、額から汗が流れる。 小学生の私は日焼けなどを気にも留めずに、びしょ濡れになって川で遊んだ。 果樹園で祖母が書き込む逗子にいる親族宛ての住所を眺める時間が好きだった。小学生ながらにして、いつまでこの生活が続くのだろうと思っていた私にとって、その住所はどこか遠くの素晴らしい場所のような気が

          好き

          例えば手が綺麗だとか 食べ方が綺麗だとか コンビニの店員さんに敬語を使えるとことか 食べ方綺麗なのに、うっかりして口に食べこぼしついちゃうとことか ショートケーキのいちごをくれるとことか はんぶんこしたときに少し大きなほうをくれるとことか ちゃんと喧嘩してくれるとこ、自分の気持ちを出してくれるとことか 何も言わないでほしいときに何も言わないでいてくれるとか 大丈夫って言ったときに、本当は?って言ってくれるとこ 朝のコーヒーに砂糖とミルクをいれないと飲めないとこ 最後の一つをゆ

          うつむいてるくらいがちょうどいい

          駅までの道を2人で歩く 彼と歩く時は決まって私が3歩先、彼は遅れてついてくる。 「最後くらい並んで歩いたら?」私がそう言うと、彼はそそくさと横に並んだ。 桜の花は散り始め、すっかり暖かくなった3月の終わり頃。 彼は4月から地元を離れて進学する。 なんだか悲しくなってしまって、彼との思い出をふと思い出した。 彼と初めて会ったのは3年前の4月のことでとても昔のようでそう遠くない過去だった。 うつむいて憂鬱そうな彼を初めて見た時の感想は陰キャ、多分仲良くなることはないだろう、そう

          うつむいてるくらいがちょうどいい

          どこにもないもの

          「どこにでもいるって思ってるんでしょ、私のこと、別れよ」 付き合って5年目の春、彼女からそう切り出された 「分かったよ、今までありがとうね。大好きだったよ」 僕の言葉を受けた彼女の表情は呆れたようなどこか悲しいような、そんな顔をしていた。 彼女と僕は大学1年生の時、共通の友人からの紹介で知り合った。彼女と僕と友人でご飯を食べに行き、そこで意気投合した。こんなに話が合う人は初めてだと思った。 そこから数回、今度は2人だけでご飯を食べたり、映画を見に行ったりした。 知り合って5

          どこにもないもの

          彼女と僕の蜂蜜

          『 蜂蜜みたいな味がしたよ』 そんなふうに言って彼女は苦笑いした。 苦学生の僕が行ったピンサロには、僕の元カノにとても良く似てる子がいた。 口でしてもらっている時にふと、元カノの事を思い出した。 僕らは大学2年生の時から付き合い始めた。 きっかけは彼女から告白されたことで、そんなに好きでも無かったけど、成り行きで付き合った。彼女に押されて、同棲もしていた。大学2年の終わりごろから段々と僕達はそっけなくなっていった。部屋には誰のものかわからない男物の下着や、買った覚えのないブ

          彼女と僕の蜂蜜