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平成時代が終わる、ONE OK ROCKの新章が始まる

【ONE OK ROCK/『Eye of the Storm』】

ロックの歴史は、浅い。

正確に言えば、音楽が真の意味でリスナーのものとなった「ポップ・ミュージックの歴史」ということになるが、オリジネーターとされるポール・マッカートニー(ザ・ビートルズ)も、キース・リチャーズ(ローリング・ストーンズ)も、まだまだ現役である。

だからこそロックは、必然として、これからも絶えず変革を繰り返していくだろう。

ラップ・ミュージックが、その更に浅い歴史の中で、無数のジャンルとの新結合を果たしながら、今や世界のメインストリームを制してしまったように、ロックは、いや、ロックこそが、果敢に新たな挑戦を繰り返していくべき音楽なのだと、僕は思う。

僕が、そして世界が、これまでに何度も何度も、ロックに奮い立たされてきたのは、その無謀とも言える「冒険心」ゆえだ。

だからこそ僕は、ONE OK ROCKの新作『Eye of the Storm』が、既存のロックの文法/文脈を大胆に逸脱していく作品となった事実に、改めて驚くことはなかった。

今作は、決してギターサウンドの野性や爆発力に依存してはいない。バンドサウンドとプロダクションの配合の中でカタルシスを生み出すサウンドデザインに、はじめは戸惑うこともあるかもしれない。

しかし、一度聴けば気付くだろう。

ロックは、これほどまでに美しくクリアで、しなやかなフォルムを獲得することができるのだ。

ロックは、これほどまでに鮮烈なビート、特に、地鳴りのように響く重厚なローを撃ち出すことができるのだ。

ロックは、これほどまでにブライトな開放感をもってして、僕たちの人生を称えてくれるのだ。

そしてロックは、これほどまでに大胆に「ポップ」に接近して、その真髄を核心に秘めることができるのだ。

それら全てが、新たな次元にたどり着いた「次」の時代のロックにおけるスタンダードだ。

全世界のロックリスナーからの狂騒的な期待を受けながらも、冷静に、確実に、これからの時代にロックが進むべき道を切り開いてみせたTaka、彼の批評性は、やはり本当に凄まじい。

遠慮も忖度も妥協も一切ない。ONE OK ROCKのこの勇気ある決断は、時を待たずして世界中で受け入れられていくだろう。

2019年、全世界的な音楽シーンの趨勢として、ロックというジャンルは、相対化の果てに隅に追いやられ、その存在感を弱めつつある。

それでも、ロックは、死なない。

それどころか、時代に合わせてアップデートを重ねていくことができるジャンルとして、革新的な表現フォーマットであり続けていくのだ。

心からそう思わせてくれるバンドが、この日本にいることを、僕はどうしようもなく誇らしい。


※本記事は、2019年2月13日に「tsuyopongram」に掲載された記事を転載したものです。

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