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ちっぽけなフィッティングルーム
フィッティングルームを出たら春がいて短い丈もいいねとわらう
転んだと思ったきみはしゃがんでて四月のような跳躍力で
だんだんとずれていくのがわかるでしょ春の言葉はあぶなっかしい
牛乳とパンを頼まれていたのにパンと卵を買って帰った
世界には25人のぼくがいてとくにねむたいぼくがぼくです
下水から溢れた意味の洪水も逆さにすればやわらかな雨
帰りますって書いてから二年間帰っていない人のため息
丸めたティッシュくらいの柔らかさ
たくさんのいい人たちに囲まれてそれは違うと言えなくなった
天国は遠いんだってそれだけで憂鬱なのにバスも来ません
明日食べるパンとか落ちたペンだとかどこまでぼくかわからなくなる
微笑んだような気がして人類は揺らめくものを見つめてしまう
食パンは死ねないくらい柔らかく誰も飛ぼうとしなければいい
細マッチョ的なフォルムで湯をわかす新品のガスコンロの炎
「いや、ぼくはあんまり飲めないんですよ」
生真面目なソフトクリーム
勇敢な人は右手に先端の尖ったソフトクリームひとつ
右胸の古い家屋が壊されてまた安い駐車場ができた
駅前で見かけた銀のたてがみが生真面目なことばかり言ってる
地球から採取してきた植物の中に紛れて一輪の傘
本人も知らないとこで店長に謝っているコピーロボット
変わらないべつに何もという顔で趣味の話を続けるゾンビ
矢印じゃなかったようで ただのシミだったみたいで 電車がこない
だからって傘は