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「大人のクセに」を連発する人は夢中が足りない。~ソシャゲのデッキ編成に学ぶ、中小企業の組織づくり~

出張帰りの新幹線で「妖怪ウォッチぷにぷに」に勤しみながら、
SNSのタイムラインを流しているとこんな投稿が目に入ってきた。
同じように新幹線に乗っている人の投稿。

「隣席の人が座るなりスマホを開いてゲームを始めた。
いい大人のクセに。私は移動時間も無駄にしない。
本を読んで自分を高める時間に使おう」と。

ゲームよりも読書のほうが有意義というのは己の価値観でそれはいい。
けれど、それを以てして人様を大人のクセにと蔑むとは何事だ。
と言うのと見聞の狭さ。

例えば。
僕はかつてゲームメーカーにいたので、
移動時間デバッグしまくってたこともある。
つまり「移動時間も仕事でゲームをしている」ことが当たり前で、
この人からすれば、僕は「大人のクセにゲームをしている人」だった。

ガラケーのアプリ時代は、
「市場に流通している端末の80%で正常稼働しないとリリースできない」
というようなガイドラインがあったので、キャリアの本社の端末ライブラリーに泊まり込んでデバッグすることもあった。

バグが見つかっても、そのバグがどういう条件下で発生するのか「再現」を取れないとデバッグにはならない。

とにかく大人のクセにゲームをしているのが仕事だったし、
デバッガーと呼ばれる、バグを潰して改善し、ゲームが正常に遊べるようにする職業だってある。

年収や業務で貴賤を唱えるのならば、デバッガーの統括なら700万~1000万プレイヤーもいる。

小さなアプリでも5,000万~1億の受注なんてザラで、
どうも先述のような表現をしている人は、そういうことを知らずに自分の視座でマウントを取りたいに過ぎないように思える。

大人になれば漫画もゲームもアニメも卒業して然るべき、
仕事に生きている人こそカッコいいという価値観をお持ちのようで。

それも僕の視座で、僕のまわりにはゲームもアニメも漫画も好きっていう人が多く、SNSでそういったコミュニティも活発に動いている。
参加者の半数は経営者、経営幹部だったりする。

サブカル好きだけではなく、他にも、
真冬でも週末になると波乗りに行く人、
還暦を越えても草野球で先発を張る人、
よなよな手の込んだ自作の料理を投稿する人、
スイーツ食べ歩きする人、
毎晩映画1本観てる人など、
それぞれに夢中を持っている人はやはり素敵であることが多い。

もちろん、仕事と趣味の区別がなく、そういう人は働くことに夢中になっていて、それはまた素敵。

だけれど、そういう人が「大人のクセに」という表現をするのはあまり記憶にない。
多様性を認めているから、趣味のモノゴトに優劣をつけているケースもあまりない気がする。

いやまぁ、そもそも人様の楽しみを蔑んで自分アゲでSNSに投稿している時点でどうかなって思うし。
それぞれに真実と理由があるのだから。

つまり、このエントリーで言いたいのは

「大人のクセにゲームしてる人がいても、大人のクセにってSNSで晒さないでね!」

ってこと。

ソシャゲの多くは5~6キャラぐらいでデッキと呼ばれるチームを組んで戦うことが多いけれど、相性や属性、特化スキル次第でチームの力に雲泥の差が出る。

強いレアキャラを並べたって、属性特化の雑魚キャラチームにボコられたりする醍醐味がある。

老若男女問わずブームを巻き起こしたポケモンGOもその一つ。
電気ポケモンは水に強いが、土には弱い、昆虫ポケモンは草ポケモンに強いなど。
これはこれで、子どもは自然の摂理や弱肉強食を学ぶにはいいものではないかとも思う。

以前、普段登壇するセミナーとは違うテーマ
「ソシャゲのデッキ編成に学ぶ、中小企業の組織づくり」
という題目で少し話をしたら、割とご年配の経営層の方も爆笑してくれた。

ソシャゲはプレイ開始当初のプレイヤーレベルが低いと
チームの総コスト(デッキコスト)も小さい。
これは中小企業で言う、従業員に支払える人件費の上限が小さいことと同じ。

デッキコストは人件費やランニングコスト。
強いキャラが1体入るだけでコストを圧縮し、チーム5人をエントリーできず戦うことすらできなくなる。

小さな企業が大企業から高給取りをスカウトしても
その1人で数人分のコストが攫われるのと同じ。

少しずつレベルを上げることで強いキャラを並べることができる。
小さな企業でも、しっかりチームを作れば、チームのレベルアップができ、強い組織になる。
ただし、デッキコストもあがるので、雇用待遇も向上させる必要がある。
それができない中小企業は人材が流出していく。

信長の野望や三國志などの歴史シミュレーションゲームでは、俸禄が支払えず忠誠心が下がり戦闘中に寝返ったり、引き抜かれたりするパターン。

デッキコストに余裕があり、個性、特性、属性がバラバラの強キャラを並べても、足並みが揃わず力が発揮できない場合がある。

一発当てて、急激に大きくなり、中途採用や引き抜きで人員を揃えた会社でしばしば見聞きするパターン。
1人1人がなまじ力を持っているので我が我がのスタンドプレーでチームが瓦解。やがて会社も弱体化。

コンパクトながら強い中小企業はソシャゲで言う属性揃えができているケースがある。
属性が揃うと属性揃えの補正が入り、2体で5%アップ、5体で30%アップなど特性に磨きがかかり、弱小軍団でもジャイアントキリングできたりする。
だけど、一点突破型の特化チームは相性の悪い属性にはとても弱く脆いともいえる。

強い中小企業はそれを分かった上で
「無理はしない」「相性が悪い相手とは戦わない」を戦術的に行っている。
相性が悪い相手とは戦わないとは、足元を見る相手とは取引をしない、
無理して不得意な仕事を取らない。などではないかと思う。

そこで企業にもソシャゲのデッキ同様、
アタッカー、バファー、タンク、ヒーラーとバランスよく並べるデッキづくりが要求される。

アタッカー=モンスターを倒す役
バファー=仲間にバフ(強化)したり、敵にデバフ(弱体化)する
タンク=壁役でモンスターの攻撃を一身に受ける
ヒーラー=仲間を回復する

アタッカーは攻撃。一撃必殺の強力な技を持ち、強い相手と戦うには必要不可欠。
強い近接戦闘と魔法など遠距離攻撃で敵を薙ぎ払う役目。
いわば、仕事を取ってくる最強の営業マン。

バファーは敵の攻撃を一手に引き付け他の仲間を守る補助。
時に攻撃力アップや守備力アップなどチームの底力を引き上げるユニット。
クライアントの競合分析や、課題を洗い出し、営業マンを補助するアナリストのような存在。

タンクは壁。攻撃を受け止める役、カスタマーサポートのような役目。
タンクは近接戦闘が得意な場合が多く、稀に攻撃力の高いキャラがいる場合も。
中小では大企業から独立した経営者にこのタイプが多い。

ヒーラーは仲間を癒す役目。いわゆる癒し系。総務や経理に1人はいてほしいタイプ。

ドラクエ2でサマルトリアの王子の評価が低いのは、
アタッカー、バファー、ヒーラーとしても中途半端で
タンクというには脆すぎる所以ではないかと思う。

それゆえ、ドラクエ3のお手本のようなパーティー、
ゆうしゃ(全ての仕事を担える=中小社長)、
せんし(アタッカー、タンク=営業マンとしても優秀でクレーム処理もできる)
そうりょ(バファー、ヒーラー=総務、経理)
まほうつかい(バファー、アタッカー=分析解析に長けた営業マン)
は理想的なチームと言えるかもしれない。

最後に敬愛する兄貴分の素敵な言葉を

「戦略はゲームで学び、美学は漫画で学んだ」

こういう兄貴は事業を数年で400%にした凄腕でもある。

大人のクセにゲームや漫画が好きな人には仕事でもヤバい人が多い。
そして、僕は今日も「妖怪ウォッチぷにぷに」に勤しむのである。

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