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グリューワイン(天秤座の詩)


闇夜に浮かぶ銀の取っ手が

水平に光る

シナモン香るあなたの左手が

冬の訪れを

爽やかに押し開いたから

ミニチュアのシーソーの上で

行ったり来たりを繰り返す

黒い子猫の尻尾が

くるりと円を描いて

琥珀色の瞳を細めて

八重歯鋭くミニャアと鳴く


いっときの感情を持て余す

優雅なペーパームーン

あなたの鏡の中に広がる

私の景色の切れ端を

ほんの少し覗いてみたくて

瞬きに息を呑んだ


バランスの悪いハイヒールで

階段を駆け上がりながら

息切れした日々の

何もかも全く同じ

その時のその場面は

もう二度と起こらない

何もかも流れてゆく

良くも悪くも


願いは誰かのために温める時

祈りとなって空に届き

天体を駆け巡って

愛という魔法になるから

鏡の隅の方に浮かぶ

上弦の月の角度を

誰か教えてください


温かな盃を両手でくるんで

肘掛け椅子に深く沈む

三角座りの膝の上が

甘く薫った


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