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君影草

天の川の見える窓辺に立ち
今日という日を振り返ってみる
目覚めて一番の空気は森の香り
庭の白い小花を摘んで
ミニチュアの花瓶に生けたら
優しい便りが届いた

時々思う
人は忘れてしまっている過去を
知らずになぞりながら生きているのではないかと
既知現象か宿命かそういう命題は
とりあえず本棚の隅に寝かせて

背後で水がぴちゃりと落ちる音がした
この気持ちに名前をつけると
そうしてしまえばどんどん形がはっきりして
どんどん核心に迫ってきて
いつか押しつぶされてしまいはしないか
気持ちが強ければ強いほど
起こってしまう反比例の悲劇は
招かなくても良くないでしょうか

昨日買った古本の頁に
誰かの栞を見つけた
ふと君に知らせたくなって
鈴蘭の白をぱちんと弾く
音の鳴らない5月の鈴
球体に滑り込んでみたら
私に触角があれば
どんなふうにヒラヒラと空中を彷徨う

世の中にある言葉全てを
アメーバのようにぐにゃりと混ぜて
とろりと落としたら
甘いあまいパンケーキ
パラパラと金平糖を散りばめて
鈴蘭を斜めにデコレーションして
ホイップクリームをめいいっぱい盛って
川の前に立つ
地面なのか空なのか
もうどうだって自由なところで
今夜は月が綺麗です

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