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エッセイ

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××××帝国で考え中

××××帝国で考え中

the pillowsと鳥肌実が好きな先輩の横で四六時中聖書みたいにライチ光クラブ持ち歩いてる不遜な中学生だった私、田舎のヴィレヴァン出たすぐそこで先輩が好きな男の子に電話しててその横で「ライチのカネダ可愛いっすね先輩」つって「うるさい」って適当にいなされる生意気な後輩やってるのが心地よかった。ピロウズは結局funny bunny止まりでよく知らないけどゆらゆら帝国の千代ちゃんとか呼んでる姫カット

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徳島なんか燃えてしまえ

徳島なんか燃えてしまえ

ノスタルジーなんかくれてやる

1時間おきのディーゼル車に乗った牧歌的なかったるいクソ田舎の思い出とかそういう名前のついたものを新快速に15分おきにクチャクチャにしてもらいに6年前私は都会に来た

岸和田出身の知人が「岸和田なんか燃えてしまえ」と言っていてどうもそれがめちゃくちゃよかった
頭の中にフレーズだけ濾し取られたそれは地元への熱いヘイトも相まってその“岸和田育ち”っぽさが否が応でも出ちゃっ

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文芸部誌「うわごと」発足に際して

文芸部誌「うわごと」発足に際して

10年前、私たちは片田舎の中高生でした。

徳島の県立中高一貫校の片隅。
校舎2階の端っこにある文芸部室が私たちの活動場所。
「文芸部」という地味な部活の割に活動メインである文芸部誌の発行は毎月欠かさず締め切りがあり、部員が手作業で印刷製本をするという活発な部活でした。
文芸部誌の名前は「空言」。
「そらごと」と読みます。
この名前は私たちより随分前の代のいつかの先輩方がつけた名前みたいなので

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地獄行きだなおまえもおれも エンドロールにきみがいる

地獄行きだなおまえもおれも エンドロールにきみがいる

「私、本1冊で1回ヤります」
「キスだけお金で売ってます」
「でも処女だから、挿れられません」

私は夏と引き換えに“売女”をはじめた。

「辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。ある朝とつぜんに。そして五月雨に打たれるように濡れそぼってこころのかたちを変えてしまいたいな。」
桜庭一樹『少女七竃と七人の可愛そうな大人』(2009)より

昨年の夏、魔がさして出会い系アプリ Tinder をイン

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投げやりな朝を煮詰めてできた珈琲を飲めるのは大人になったあなただけ

投げやりな朝を煮詰めてできた珈琲を飲めるのは大人になったあなただけ

始業式に出ずに過ごしたことが何度かあった。
当然ながら始業式の時は先生も生徒も端から端まで体育館に集められるので、普段過ごす校舎は空っぽになる。
始業式をサボった私は嬉々として空っぽになった学び舎を見学する。

曖昧な幽霊になったように廊下を走ってみる。
校舎中のトイレットペーパーの先を三つ編みにして回る。
北校舎の一階の角、3番目のトイレに書き残された名無しの誰かの詩とその返歌を読む。
足音の

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私は君を弔う言葉を知らない

私は君を弔う言葉を知らない

二十歳にもならない人間が死んだことについてずっと考えている。

年下のお通夜に行く機会なんて、あるとしても到底先のことだと思っていた。
6月半ば、知人が死んだ。
たった19歳だった。

今年の4月に初めてお会いした彼の印象は、場を明るくすることに長けている“底抜けに明るい”少年だった。
モデル(被写体)と劇団をやっていて、ファッションやメイクに造詣の深い少年。
私の認識はそれ以下でも以上でもなかっ

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《平成享年六月四十九日》(2019)

《平成享年六月四十九日》(2019)



かれらを見送って四十九日が経った
私は棺桶に入り損なったので髪の毛をあっちに置いてきた

孤独にかしづいて雨上がりの青を洗うとき私は必ず一人になる
スクランブル交差点を歩く歩幅もきっともう忘れてしまったからせめて一人分の傘を広げていた
けれどこうやって手を放したから
ことばを集めながら濡れそぼって愛を畳んでいる

幼稚園の先生が書く私の名前がこの世でいっとうきれいな文字だった
あの頃からずっと

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そのダサいネイルでしぬのか

そのダサいネイルでしぬのか

負けん気が強いと言われる。
10年来の親友は私を「肉を切らせて骨を断つ女」と例えた。
膝を叩いてなるほどと言ったが厳密には「肉を切られるくらいなら自ら骨を断つ女」の方がより正確かもしれない。
どちらにせよ字面の上ではともに深手を負って死んでいるのは確かである。

私は前日にその翌日着る服を決めるということがどうしてもできない。なのでやらない。
その当日の気持ち(前の晩の気分で代替することはできな

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食べかけの昼飯を持ったまま飛ぶことはできない

食べかけの昼飯を持ったまま飛ぶことはできない

少しでも涼しければ、隙を見て出てくるらしかった。
猛暑の今年は油断していたが少し気温が低いと思えば飛んでいる。
友人が仕留める。
横の動きで叩くと逃げられやすいが縦の動きだと仕留めやすいのだと言う。
潰した手に黒くはりついて、血はついていなかった。
払うとへろへろと地面に落ちて、何事もなくなった。

「この間は1日に3件も起きて、ひどかったな」
鉄道会社勤めの友人が呟いた。
「あれって、どういう人

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平成最後の夏まで生きてしまった私から、受験生の夏の私へ

平成最後の夏まで生きてしまった私から、受験生の夏の私へ

拝啓 受験生の私へ

盛夏の候、貴殿におかれましてはますますご清栄というほどでもないというか私もあまり元気なわけではないですね暑いので。
受験生、17歳の夏。
いかがお過ごしでしょうか。

受験生になったばかりの夏はまだきちんと現実味がなくて、ぶっちゃけあまり受験を意識して勉強していなかった頃かと思います。
あなたは最終的には、冬まで全くマークしていなかった関西の某私大に進学を決めます。

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