見出し画像

渋谷区の探究の取り組みへの反応について、自分なりに意見を整理しました!


 渋谷区の探究が議論になっています!

 渋谷区の探究に対して賛否両論が出ているそうです。これについて自分の思うところをまとめてみました。

◇◆ーーーーーーーーーーーー

2/10 ABEMAヒルズ
午後は全て「探究学習」の時間! 教科時間は最大1割減の大胆な取り組みに「受験は大丈夫?」「理念はよく分かる」など賛否も

ーーーーー

 渋谷区の小中は、探究が午後全て入る大改革なので、賛否の声が出ているようです。反対には、受験を心配する声があるとのこと。
 
 私個人としては以下のことを思います。
 
ーー
 
1:世の中には結局、受験をするために学校があると思っている人がまだ多いよね〜
 
2:受験どうするの?もあるが、個人の関心や興味をちゃんと引き出せてるの?

 
ーー

 順に整理したいと思います!

【1】:世の中には結局、受験をするために学校があると思っている人がまだ多いよね〜 




 受験指導をすることは学校においては授業などの延長線上にあると思います。
 
 しかし、出口指導をするために学校があるのではなく、「生きる力」を育てるための公的機関のはずです。ましてや探究は「学ぶ力」をアップさせる科目なので、学校には本来とてもマッチするものです。
 
 受験することはもちろん大事なことですが、学校が全ての面倒をみるということは、それはそれで問題があります。基礎学力は大事なのはよーーくわかりますが(探究を好きすぎるあまり、基礎学力の不要論者がいますが、私はその類ではないです)、やはり新しい何かが生まれる時には、学校の本来の意味を問い返しても良いと感じます。学校は進学塾ではありませんから。
 

【2】:受験どうするの?もあるが、個人の関心や興味をちゃんと引き出せてるの?




 受験どうするも大事ですが、個人の関心や興味をどのくらい引き出せているのかを議論していく必要があると思います。何を学びたいのか、社会をどうみているのか、どんなことに関心があるのか・・、そういった観点を欠落させた状態で受験に挑むとあまり良い結果を生むとは思ません。そういう人を私も高校教員としてたくさん見てきました。
 
 受験指導を偏重するあまり、いろんなものを詰め込まれて育つと、大学や社会人のギャップに対応できないという問題が発生しやすくなります。(社会人になってから、学校でそんなことをしてこなかったと嘆いたり、怒ったりしている人と私もよく会います。笑)

 これについてはキャリア教育やトランジョン(学校と社会をつなぐ研究)研究の第一人者である桐蔭横浜大学教授の溝上慎一先生の論考がとても参考になると思うので引用します。

溝上慎一先生からの提言

 これまでの教育現場では、部活動を一生懸命おこなっていても勉強はしない生徒に対して、「彼・彼女は部活動を頑張っていて元気だから、それでOK!」といった見方をしてきた学校や教員が少なからずあったはずである。あるいは、勉強はできるが行事参加や対人関係が苦手といった生徒に対して、「それは彼・彼女の性格だから」と、勉強をしているかどうかだけの視点でしか生徒を見ていないという状況があったはずである。後者の生徒に関しては、「それでも、彼・彼女は●●大学をねらっているんですよ」と誇らしげに述べられたこともある。それらの生徒が、大学へ進学した後、仕事・社会へ移行した後どうなるかを深く考えてみる必要があろう。
 大学生の学びと成長のデータを大規模に収集してきた経験から、講演やシンポジウム、フォーラムの機会に、高校の先生方に、高校生に学習だけでなく、対人関係やコミュニケーション、キャリア意識を併せて育ててほしいと何度も説いてきた。そうでないと、大学生になって彼らは学ばないし成長しないからである。いくら勉強ができても、いくら良い大学に入っても、大学で学び成長する気がないならば、彼らは何のために大学へ進学するのだろう。良い大学へ入れば将来安泰という時代はもうとっくに終わっていることを知らないわけではあるまいし。そう説いてきたわけである。
 大学がいくら頑張って教育改革を進めても、関わってこない学生を育てることは不可能である。とくに大半の総合大学では、担任もいない、学生の顔と名前もわからないなかで教育をせざるを得ない。この状況下で、対人関係の弱い学生は、選択の演習科目やプロジェクト型の授業を履修してこない。今でいうところのアクティブラーニングや実験においても、他の学生と積極的に作業をしない。キャリア意識の弱い学生は、クラブサークル、アルバイトといった目先の楽しさに溺れ、将来に向けて自分を一歩でも高める活動に従事しない。そして、なによりそうした学生たちが単に学習を積極的にしないだけにとどまらず、いま施策で叫ばれる資質・能力も十分身につけていないというデータが蓄積されてきている。こういう話を高校の先生方にしてきたわけである。ところが、高校の多くの先生方は、「話はわかるけど、大学受験が変わらないと」と金科玉条のごとく、それを持ち出して耳を貸さなかった。「大学受験がそんなに大事で、生徒の将来の大人に向けての成長が二の次になるのなら、その高校は○○予備校と名前を変えたらいいんじゃないですか」「先生方は何のために教師になったのですか」と嫌みも言ってきたが、そんな私の嫌み程度で変わる現場ではなかった。
 今は政府の施策が力強く進んでいる。課題は多いが、新しい時代に向けての学校教育の大きな方向転換を目指している。大学入試も変わろうとしている。大学側もすでに対応を始めている。このようななか、「大学受験が変わらないと・・・」と言っていた高校も、重い腰を上げ始めた。まずは、講義一辺倒の授業を脱却してアクティブラーニング型授業への転換、教科と総合的な学習、キャリア教育、課外の活動を有機的に繋いで○○教育を充実させていくこと、カリキュラム・マネジメントをはかっていくことである。2年前あるいはそれ以前の腰が重かった高校の変わりようには目を見張るものがあり、私が政府の推進力に頭が下がる思いを何度もしてきたのは、容易に想像できるだろうと思う。
 10年トランジション調査はまだまだこれからであるが、主張点は一貫している。高校生までの間にしっかり人生を力強く生きていく基礎・基本を育てておく、少なくとも育てようと努力することが、小学校・中学校まで含めた初等・中等教育において重要だということを、データで示すことである。少なくとも2時点目までの結果は、この主張を支持している。半数の生徒は変わらないといっても、残りの2~3割は変わる。また、大学がこの現実を受け止めて、もっと一人ひとりを育てる教育や指導をするようになれば、もっと多くの学生が変わるだろうと思う。本研究が、日本の高大接続、トランジションの改革を推進する基礎資料の一つになればと心から願う。

http://smizok.net/education/subpages/a00013(transition2).html?fbclid=IwAR2xWYqOnjH-mODa3-m9PJPv7l2YwoCSb0biV1fqDwmPeJBWBSRItoHaw_c


 また、大学や学部選択も偏差値順・人気順で選ぶことが多くなりがちです。レベルの高いところで学ぶことは大事ですが、入ってから後悔したり、学部と自分の関心のズレなどが大きくなる確率も上がります。
 
 今回の渋谷区のプログラムでは外部講師などの参加も念頭に置かれているので、魅力的な大人と出会うキャリア教育的な側面にも効果を発揮すると思います。

 最近では、探究を重視している中堅私立の中学高校の倍率が伸びてきていますが、それもまさにこの流れを汲んでいると思います。

 受験はもちろん大事ですが、受験のために学校があるわけではありません。その受験の前にも、実はやることが結構あります。探究は学部・学科、就職先などの進路選択などにもかなりの効果を発揮します。探究やキャリア教育的な側面が充実してこそ、学びに本気になったり、進路への意識も上がってきます。
 
 ちなみに、勉強をしたいのであれば、勉強の良い方法などを探究のテーマにするのもありだと思います!受験校の調査とか問題の傾向などでも、探究したければ、テーマにして良いと思います。探究と受験は分けなくても良いんです。関心があるなら、それをテーマにすればいい。
 



 
 探究はやはり奥が深く、いろんな要素を入れていく必要があるし、丸投げではうまくいきません。適切な授業設計や介入の度合い、臨機応変な対応など、それこそ総合的な探究力がないとできないと思います。職場の普段のチーム力が問われると思います。時間はかかるかもしれませんが、それでもこの改革は応援したいなと思っています。
 

 ちなみに探究ができない!と言う先生もいますが、探究は人間誰しもやっているんですよね。何かをうまくなろう・詳しくなろうとして、本を読んだり、アドバイスをもらったり、試行錯誤した経験は誰にでもあるはずです。部活だって、授業改善だって、恋愛だって趣味だって、そのような経験は誰にでもあるはずです。探究は実は誰でもやっているものを、ちょっと勉強っぽくやってみよう!という感じです。

 あと誤解が結構ありますが、先生たちの負担にならないような仕組みづくりは、それなりに実現可能です。生徒たちで深める仕組みを作っていけばいいのですが、教員が全て指導をしなければいけないという呪縛から手を離していけると良いなと思います。
 
 いずれにしろ、かなり現場に無理を強いる痛みを伴う改革になるので、先生たちの負担は上がるだろうなと思います。ですが、学びが変わっていく大きなチャンスではあるので、この痛みが最終的にプラスになることを祈るばかりです。
 

 受験か探究かという二項対立になりがちな議論ですが、そうではないので、その辺りも含めて私も今後考えたいと思いました。

 以上です。最後までお読み頂き有難うございました!

参考


この記事が参加している募集

探究学習がすき

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?