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読んだ本やVTuberまわりについて書きます!

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  • VTuberについて

    VTuberについて批評的・社会学な観点で捉えてみたい。 主な関心はVTuberとリスナーの関係にあります。 虚構のキャラクターではなく、生身の人間でもないVTuberという存在をリスナーはどのように捉えているのでしょうか? VTuberはどのような想像力で成立しているのでしょうか? この想像力は今までのサブカルチャーには表れなかったものだと考えています。 VTuberとリスナーの関係を成立させる想像力は、私的な楽しみを超えて公的な連帯、公共性に通じるかもしれない。そんなことを考えています。 語るときは、個別の活動者や団体について語るのではなく、まして称賛や表面的な比較分類に終始するのではなく、なるべくVTuber文化外との関係に接続させるように、そして個人的な意見は極力洗い落とされたものになるようにしたいと思っています。

  • 読書感想文

    毎月その月に読んでよかった本の感想文を書きます

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  • 固定された記事

『「VTuberの倫理学」を検討する』の検討 ~「VTuber批評」の必要性~

はじめにこの文章では『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」に掲載されている論考『「VTuberの倫理学」を検討する──バーチャル・アイデンティティと「場」の形成』について、非アカデミックな立場から批評的な視点で検討を行う。 実はわたしも同じような問題意識を持っていた。 VTuberたちは定期的に炎上するし、そうでなくてもリスナーとの関係についての問題が結構な頻度で散見される。あと定期的に病む。リスナーも。 せっかくなので、この論考に乗っかるかたちで、わたしの認識との差

    • 3月は読んでよかった本ないです。あまり本読みませんでした

      • 2024年2月に読んでよかった本「ウェブ社会の思想」(とその周辺)

        ウェブ社会の思想 鈴木謙介とその周辺 私はこの本を2024年に読んだわけだが、主に二つの理由で問題意識の先駆性に驚いた。 まず「宿命」という言葉について。筆者は以下の意味で使う。 『いまあるものとは別の未来さえ求めさえしなければ、わたしが選んだこれだって、そこそこ幸せだったじゃないか。──そのように思わせる根拠付けのことを、私はここで「宿命」と呼んでいる。』 最近読んだ本でも、さまざまな論者が同じような概念を異なる言葉で表現しているが、インターネットの普及を背景として若

        • 2024年1月に読んでよかった本「増補 サブカルチャー神話解体」

          今読んでも新たな気付きがあって面白い。まさに傑作。 造語が必要以上に多く感じられるのはマーケターゆえか。 本書で論じられる90年代までの宮台の社会分析は2024年現在も有効だろうか? 基本的には有効だろうが、このような分析がかつて持っていた社会的な意味は相当薄れていると思う。 ここで言う社会的とは主にマーケティング的な意味を指す。 実際のところはわからないが、インターネットを筆頭に情報技術が全面化した現代において、統計から導き出した理論に基づいて行うマーケティングは、機械

        • 固定された記事

        『「VTuberの倫理学」を検討する』の検討 ~「VTuber批評」の必要性~

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          2023年12月に読んでよかった本 「資本主義の〈その先〉へ」

          12月というか年始にかけて読んだ本 資本主義の〈その先〉へ 大澤真幸おもしろかった!! 経済だけでなく「全体的社会的事実」(マルセル・モース)としての資本主義に内包されるダイナミクスが、キリスト教カルヴァン派の予定説、近代科学、近代的な小説にも通底しているという説は読んでいてとてもおもしろかったし、納得できるものがある。 社会を考える言説として、以前読んだ東浩紀『観光客の哲学』『訂正可能性の哲学』との関連を意識しながら読んだ。 (ちなみに本書と『訂正可能性の哲学』は外観の

          2023年12月に読んでよかった本 「資本主義の〈その先〉へ」

          2023年にVTuberについて書こうと思ってたけど書けなかったこと

          ちゃんと書こうと思ってたけど書けなかったことを2023年に置いていきます。今年の思考は今年のうちに😎 ↓姉妹編と併せてどうぞ😎 VTuberと二次創作の関係についてVTuber自体の二次創作性 VTuberは同じような見た目をして同じプラットフォームで同じ活動をする。 同じゲームをするし、同じ歌を歌うし、同じ話をする。 同じようなグッズを出し、同じような目標を持ち、同じように現実でライブをしたがる。 アニメや漫画がどこかで見たことあるお話を味付けを変えて提供しているのと

          2023年にVTuberについて書こうと思ってたけど書けなかったこと

          VTuberについて2023年に書いたものを振り返る

          2023年に書いたものを振り返ります ↓姉妹編と併せてどうぞ😎 VTuberコミュニティが「自立」の基礎になることはできるか6月時点で考えていたのは、「VTuberコミュニティが中間共同体のひとつにならないだろうか」ということだった。念頭に置いていたのは大手ではなく、比較的規模の小さい箱~個人勢で、小規模のVTuberコミュニティが個人の「自立」の基礎のひとつになるのではないかと考えていたのだ。 ここで言う「自立」とは、特定のイデオロギー(共同幻想)に回収されず男女の関係

          VTuberについて2023年に書いたものを振り返る

          https://note.com/1vbcxqe5fqqdec/n/n8806b6e4f4a9 これ書いたときは、VTuberにまつわる言説はVTuberにまつわる問題を棚上げして商環境に追随するものにしかならないのではと懸念していたのだけど、実際はそれすら成立せず言説の背後や環境が恣意的に消費されるのみになるのではと思えてきた

          https://note.com/1vbcxqe5fqqdec/n/n8806b6e4f4a9 これ書いたときは、VTuberにまつわる言説はVTuberにまつわる問題を棚上げして商環境に追随するものにしかならないのではと懸念していたのだけど、実際はそれすら成立せず言説の背後や環境が恣意的に消費されるのみになるのではと思えてきた

          2023年11月に読んでよかった本 「『青春ヘラ』Ver.8「シティダーク/アンダーグラウンドレトロ」」「観光客の哲学」

          『青春ヘラ』Ver.8「シティダーク/アンダーグラウンドレトロ」評論と小説がいっぺんに読めてGOOD 評論は「エモ」を分析はできるけど「エモ」くはない。小説は「エモ」いけど「エモ」の分析はできない。つまり、「エモ」を公共に開きつつも、私的に閉じているのだ。両者は対立するものではなく相補するものなのだ。この両方がミソなのだ。 内容も良い。実のある政治的に正しすぎない文章を読める機会は本当に貴重だと思う。個人的には最近の潮流やトピックを扱っているのがうれしい。学生誌ならではだと

          2023年11月に読んでよかった本 「『青春ヘラ』Ver.8「シティダーク/アンダーグラウンドレトロ」」「観光客の哲学」

          なぜVTuberについて語るのは難しいのか

          この記事で「語る」というのは、批評的な観点で言及するということである。 数が多いまず数が多い。大手事務所だけでも500人くらいいる。 裾野を広げるとその数十数百倍のVTuber が活動していることになるだろう。すべてのVTuberのコンテンツを享受することなど到底できない。 それゆえVTuberについて語るとき、それは必然的に、ある特定のVTuber(たち)についての語りになる。 そしてそれは、後述するように、現在主流のVTuberたちに偏ることになる。 活動スタイルが違

          なぜVTuberについて語るのは難しいのか

          2023年10月に読んでよかった本 「サークル有害論」

          サークル有害論 なぜ小集団は毒されるのか 荒木優太興味深く読ませてもらったのだけど、レビューを見てみると結構評価低め。 これはおそらく、タイトルから想像されるような 「世の中にはこんな悪いサークルがあります!みなさんも気を付けましょうネ!」 といった事例紹介と表面上の注意喚起ではなく、なぜ集団はそのような「毒」を持つのかという根源的な問いに説明を与えることを試みるものであったからだとおもう。 帯に「解毒法、教えます」と書いてあるが、本書が提示しているのは、帯文から想起される

          2023年10月に読んでよかった本 「サークル有害論」

          「なぜVTuberの身体は活動を通じて、ただひとつの「魂」と離れなくなってしまうのか」を検討する

          はじめにこの文章では『青春ヘラ』Vol.7「VTuber新時代」に掲載されている論考『なぜVTuberの身体は活動を通じて、ただひとつの「魂」と離れなくなってしまうのか』について、非アカデミックな立場から批評的な視点で検討を行う。 IEBという新しい概念を提示してVTuberの「親しみやすさ」に説明を与えたことに新規性があるとおもった。しかし、現象の捉え方自体は妥当であると思えるものの、先行研究(難波,2018)で提示された「三層理論」に無理矢理引きつけているように見え、そ

          「なぜVTuberの身体は活動を通じて、ただひとつの「魂」と離れなくなってしまうのか」を検討する

          「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」と「INTERNET YAMERO」

          最初に断っておくが、今からしたいのはどちらが優れているかという話ではなく、インターネット的な出自を持つ両者がインターネット的なものを引用しつつも決定的に異なっている点の指摘である。これを読むあなたの「好き」を損なうものではない。また文中の固有名詞の解説はしない。 両者は「平成インターネットをSNSでバズった引用した楽曲」という点で共通している。 先に自分で指摘するが、両者が引用する平成インターネットは同じものではない。粛聖!! ロリ神レクイエム☆が引用するのはニコニコ動画的

          「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」と「INTERNET YAMERO」

          2023年9月に読んでよかった本は「訂正可能性の哲学」でした

          めちゃおもしろかった!!! 東氏が言いたかったことは、「民主主義の理念を、理性と計算だけで、つまり科学的で技術的な手段だけで実現しようとしてはいけない」である。この主張を支える論理を様々な時代の哲学者の論を参照しながら明瞭に提示している。それらを「訂正可能性」という一語でつなげるのがベリー良👍これぞ哲学人文学や!!とおもった。 お気に入りポイントは、ルソーが書いた「新エロイーズ」という小説の読解で、彼が論じた社会契約説という民主主義の基礎となる論理は、小説という論理ではな

          2023年9月に読んでよかった本は「訂正可能性の哲学」でした

          VTuber とリスナーの関係ついて

          はじめにVTuber は生身の人間が仮想の身体(アバター、イラストや3Dモデル)で仮構することで成立する。典型的な VTuber は名前と設定を持ち、その設定に従ってなんらかの行為(配信などの活動)をする。設定に従ってふるまうことは、一般にロールプレイ(以下RP)と呼ばれる。原理的には VTuber の活動はすべてお芝居ということになる。 この記事では、VTuberの設定についての考察からひとつの構造を提示し、その構造を通じて VTuber とリスナーの関係の説明をこころみる

          VTuber とリスナーの関係ついて

          2023年8月に読んでよかった本

          宇野常寛の著作とその周辺ゼロ年代の想像力 母性のディストピア 砂漠と異人たち 成熟と喪失 “母”の崩壊 女という快楽 宇野の問題意識は現在まで一貫して、ポストモダンにおける成熟像の模索にあるようにおもう。かつて成熟とは、大きな物語に対して態度を確立させることを意味した。大きな物語が失効し、小さな物語が乱立する現代日本社会における成熟とはなにか、という問いは、自分がもっていた漠然とした「存在の地に足ついてない感」を言語化したもののようにかんじた。 ゼロ年代の想像力(

          2023年8月に読んでよかった本