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[連載短編小説]『ドァーター』

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【連載小説】「ドァーター」をまとめたマガジンとなっております。 あらすじ;妻を守れなかった過去をもち、その罪悪感によって実の娘を愛することができず、守り抜くことができない主人公… もっと読む
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「スピリット地雷ワールド」新連載小説始動 あらすじ

新連載予定 「スピリット地雷ワールド」 あらすじ〜 地雷系女子、闇葉のありとあらゆる爆発のせいで高校生の青春が再建不可能にまで破壊されていく愛音。ある日家の前で奇妙な色をした謎のパイナップルとメモを見つける。メモには、「このパイナップルを食べると、食べた後一番初めに見た人の精神世界に入ることができるようになる。副作用で、見られた人は見た人の人生が上書きされます」と書かれていた。信じる、信じない関係なく今は闇葉の精神でもめちゃくちゃにしたい気持ちだった愛音は、パイナップルを一

【掌編小説】『ますかけをツ噛ム』

  和風屋敷に轟く足音が、荘厳な空間に重みを加えた。襖の奥には、鋭い眼差しを放っていて、威厳のあるお祖父様が居座っていた。その左右に合計十人がそそくさと綺麗に並んで、座布団に足をたたんだ。  僕は襖の外からその光景を見ていて、へそと膝の先がお祖父様に向いている。 「みな、集まったな」その声を聞いて背筋がすんと伸びる。「今日、皆を集めたのは、他でもない良行のことだ」いきなり、ここにいる人間の視線が僕に集まる。頬から悪い汗が糸をひく。 「いったい、良行がどうしたと言うんです

[連載短編小説]『ドァーター』「最終章:許してほしかった」

※この作品は最終章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひ読んでください!『ドァーター』のマガジンリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすくしてあります👌 _________登場人物紹介_________ 茎崎二十二……連載小説「ドァーター」の主人公。 茎崎乙枝……二十二の実の娘。茎崎家の長女。 茎崎巴枝……二十二の実の娘。茎崎家の末っ子。 茎崎鏡花……二十二の妻。 ◼︎□葉……自称二十二の遠い親戚。 _________本編_

[連載短編小説]『ドァーター』第十七章

※この小説は第十六章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひ読んでください!『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすくしてあります。 _________登場人物紹介_________ 一葉……自称、二十二の遠い親戚。 _________本編_________ 第十七章 いないいないばー 「初めまして、カズハ」  真っ暗の部屋で機械的な声が聞こえた。すると、3畳ぐらいの大きいモニターが光り、一面の壁

【短編小説】「ドァーター」5作品まとめ。

_________説明_________ この記事では、連載小説「ドァーター」15章を昨日投稿し忘れていたため、ルールに従い1日で5作品をお届けします。 いっぱい小説が書けるので僕としてはとても嬉しいです。🥳 ですが、罰はしっかりと受けるつもりです。これからは絶対に忘れないようにします。🙇‍♂️ 五つの作品は、どれも本作品に登場するキャラクターの日常を描いたものになっています。 _________登場人物紹介_________ 茎崎二十二……連載小説「ドァーター」の主人

[連載短編小説]『ドァーター』第十六章

※この小説は第十六章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひ読んでください!『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすくしてあります。 _________登場人物紹介_________ 茎崎二十二……今作、ドァーターの主人公。 茎崎乙枝……二十二の実の娘。茎崎家の長女。 茎崎巴枝……二十二の実の娘。茎崎家の末っ子。 茎崎鏡花……二十二の妻。 _________本編_________ 第十六章 あなたの

[連載短編小説]『ドァーター』第十五章

※この小説は第十五章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひお読みください!『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすいのでぜひ! 第十五章 ために  ギラギラとバックミラーが光っている。積荷を下ろし、解毒薬の入った段ボール箱を開けた。  僕は一葉を止めたい。彼女のやっていることはただの虐殺だ。罪もない人をたくさん苦しめている。絶対に止めないと。それが僕にしかできないことだと思うから。  1300万人を

[連載短編小説]『ドァーター』第十四章

※この小説は第十四章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひお読みください!『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすいのでぜひ! 第十四章 許し  トラックを勢いよく発進させた。  空回り貯まった、タイヤは急速に地面を這い、3250キログラムの解毒薬をコンテナに乗せて混沌たる街を走った。  歩道には互いに肩を貸し合い歩く人々がいて、車道にはフラフラと走る、今にも事故を起こしそうな車が走っていた。  一人だ

[連載短編小説]『ドァーター』第十三章

※この小説は第十三章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひお読みください!『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすいのでぜひ! 第十三章 毒の日  後に人々は「毒の日」そう呼ぶようになった。  僕は3日後に予告された、1300万人の毒殺を阻止するため、準備を着々と済ませている。薄暗いLEDの下でこめかみを捻り引っ張った。  解毒薬の培養は、町長と協力し、すぐに量産することができた。しかし、1300万人分

[連載短編小説]『ドァーター』第十二章

※この小説は第十一章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひお読みください!『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすいのでぜひ! 第十二章 抱きしめて  選べるわけがない。  娘を見殺しにすれば、街の1352万の人命が助かる。逆に、街を見捨てれば、娘を救うことができる。  どうすればいいんだ。また、僕は何もしないでのうのうと生き残るのか?  僕はあの日のことを思い出した。妻を失ったあの日、僕はただ見ている

[連載短編小説]『ドァーター』第十一章

この小説は第十一章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひお読みください!『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすいのでぜひ! 第十一章 愛してやまない人  少しだけ、水が電気で焼けたような匂いのする路地裏にいた。 「いったいどうしたんだ、急にこんなこと初めてさ。なあ、お前は何者なんだ?」月夜に輝く、金色の髪がなびいた。街灯の下で照らされた僕は闇に潜む一葉を見て言った。 「私はただ、二十二を守りたいだ

[連載短編小説]『ドァーター』第十章

※この小説は第十章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひお読みください! 『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓ 第十章 奇戦開戦  その場はただ冷たい。照明も、壁の色合いも、床の模様も、彼女の視線ですらその奥は、とてもひんやりとしていた。 「パパ、私役に立ちたいの。巴枝を殺してしまった、これはもう取り返しのつかない私の罪。だから、少しだけでも罪滅ぼしがしたい。だから私にも手伝わせてほしい」  巴枝は決意に満ちた眼差しで僕に言った

[連載短編小説]『ドァーター』第九章

※この小説は第九章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひお読みください! 『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓ _________本編_________ 第九章 宣戦  鉄の門をくぐるとカビの匂いが鼻をついた。  重たい空気に押しつぶされそうになりながら僕は薄暗い道を進む。  昨日、乙枝が受刑者になった。まさか、こんな形で刑務所に戻ってくることになるなんて思ってもいなかった。なぜ乙枝は実の妹である巴枝をあんなにも気に留め、愛し

[連載短編小説]『ドァーター』第八章

※この小説は第八章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひお読みください! 『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓ _________本編_________ 第八章 死人が笑う  一葉が家にやってきた。彼女は今までいつもフードを深く被り、素顔を決して表さなかったが、今回は違った。  100日間娘を守り抜くという約束期限はすでに過ぎ去っており、約一年が経過した頃だった。巴枝はまだ眠っていて、乙枝とはずっと音信不通だ。そんな中、一葉は