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#書評
ハーラン・エリスン 『愛なんてセックスの書き間違い』
★★★★★
今年の5月に刊行されたハーラン・エリスンの初期短篇集です。訳者は若島正と渡辺佐智江。
国書刊行会SFが「未来の文学」と銘打ち、60〜80年代の幻のSF作品を集めてリリースしており、そのシリーズの1冊です。
とはいえ、内容は非SF作品に限定されています。解説によると、エリスンはSF作家として地位を確立する前、様々な媒体に多様な作品を発表していたそうです。そうした作品が集めら
Ernest Hemingway “For Whom the Bell Tolls” / ヘミングウェイ 『誰がために鐘は鳴る』
★★★☆☆
言わずと知れたノーベル賞作家ヘミングウェイの古典作品です。訳者は大久保康雄氏。
新潮文庫から高見浩訳の新訳版も出ているようですが、僕は旧訳版で読みました。どうしてなのか? 自分でもわかりません(購入したときは出てなかったのかも?)。
1973年の訳なので、ところどころちょっと古いかな、と感じるところがありました。高見浩訳ヘミングウェイが好きなので、新訳版で読めばよかった……か
J.D.サリンジャー 『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』
★★★☆☆
今年の6月に出たサリンジャーの短篇8篇、中篇1篇を収めた一冊。訳者は金原瑞人。
もともと雑誌に発表されたものの単行本未収録だった作品を集めているので、執筆年にばらつきがありますが、『ハプワース-』を除くと、1940年代に発表されたものです。初期の作品ですね。
最初の二篇は『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の元になっており、作品内にも出てくるエピソードが描かれています。
Jodi Picoult 『small great things』
先週の金曜日は祝日だったため、うっかり更新を忘れてしまいました。できるだけ毎週一回はアップするようにしているのですが、忙しいとつい怠ってしまいます。反省反省。
★★★★☆
2016年に出版されたジョディ・ピコーの小説。未訳なので、ペーパーバックで読みました。今年出た『A Spark of Light』が最新作なので、その一つ前の作品になります。
ちなみに、ジョディ・ピコーの作品はハヤ
橘玲 『言ってはいけない中国の真実』
★★★★☆
2015年に『橘玲の中国私論』として出版されたものを改題して文庫化したもの。文庫化の際に一章分が加筆されています。
3年前に出たとはいえ、内容は古びていないと思います。本書に限らず、数年で古びてしまう内容のものを書く著者ではないので、いま読んでも何の問題もないでしょう。
日本にとって近くて遠い国——中国——を様々な角度から紐解いている本書。正直なところ、僕は中国に対して漠
中田考 『みんなちがって、みんなダメ』
★★★★☆
イスラーム教徒でもあるイスラーム学者、中田考による語り下ろし形式(一部インタビュー形式)による人生指南書的な一冊。
表紙がライトノベルみたいなのが気になりますが、内容とは一切関係ありません(どうしてこの装丁にしたのでしょう???)
ふだん意識することはあまりありませんが、僕も含めて大半の日本人が浸っている資本主義や領域国民国家やリベラルな価値観、ものの見方を快刀乱麻にぶった切
ジュリー・オリンジャー 『溺れる人魚たち』
★★★☆☆
短篇小説を一冊読めば、その作家のことが大まかにわかる。
無駄を省いた上でまとめあげる技術、物語を書くためのアイデアや舞台設定、文体、ヴォイス、モチーフ、テーマ……短篇小説を一冊書くには、そういった要素を作品ごとにまとめ上げなければならない。そうしてできあがった作品群を読むと、その作家の力量、方向性、世界観の概略をつかむことができる(もちろん、長篇小説を一冊読んでもその作家のこと