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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】花粉症と鍼灸

千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。
いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。

先日、筆者の鍼灸院『鍼灸 あやかざり』で、肩こりのお悩みで治療に来ている患者さんから、こんな内容の質問がありました。
『先生、鍼灸治療をうけるようになったからか、今年は花粉症の症状が不思議と楽に感じる。これは鍼をうけてるからですか??』
この患者さん、肩こりに悩んで来院をされ、『脾虚、肝鬱気滞、肝血虚、腎虚』と証を診断して、週に1回程度で治療を繰り返していました。

そうです、生活環境、他の治療は何もしていないことから、まさに鍼灸の効果が発揮された可能性大です!!
この患者さんの場合、鍼灸治療を受け、胃腸の調子を整えながら体内の水分代謝をよくして、体質の根本的な改善をしていたことから、肝気の高ぶりを予防することができ、春先の花粉症の症状改善につながったのではないか、と考えられます。

<< 鍼灸は花粉症にも有効なのです>>

 今回は、『花粉症』について、どうしておこるのか、症状ごとのタイプや原因、治療方法についてみていくことにしましょう。


1.花粉症とは

花粉症は現代医学的には季節性アレルギー鼻炎と呼ばれ、からだに侵入した花粉に対するアレルギー反応のことをいい、鼻炎のほか喘息やアトピーの症状が出る場合もあります。
原因となる花粉にはいろいろな種類がありますが、代表的なものとしてはスギとヒノキ。
1月末ごろになると気象協会からその年の花粉の飛散予測が出るくらいですので、みなさんよくご存知ですよね。
では、実際に花粉症を発症する人はどのくらいいるのでしょうか??
なんと、ある統計上のデータによれば、約3人に1人がスギ花粉症と診断されているようです。
日本で最初にスギ花粉症が報告されたのは1964年、その後わずか50年ほどで急激に増えて、今では誰もが知る身近な病気となっています。

2.症状

花粉症の代表的な症状は、
・くしゃみ
・鼻水、鼻づまり
・目のかゆみ
ですが、そのほか
・喉のかゆみ、咳
・皮膚のかゆみ
・下痢
・頭痛
などの症状が現れることもあります。

また、症状が強くなると
・眠れない
・集中できない、仕事が手につかない
・からだがだるい、外出できない
など日常生活に支障が生じることもあります。

あたたかくなり外に出るのが楽しい季節のはずなのに、花粉症の方にとっては一年でいちばんつらく憂うつな季節となってしまいますね。。。

3.花粉症のしくみ

花粉は空気中にただよっているので、みんな必ず接触しています。
でも、花粉に触れた人が全員花粉症を発症するわけではありません。
なぜでしょう??
花粉症はどのように発症するか、現代医学的なメカニズムをみていきましょう。

①花粉が異物であると認めると、身体は抗体を作り出します。
②作り出された抗体は、鼻や目の粘膜にある肥満細胞の表面に結合して、からだの中に溜まっていきます。
③次に、花粉が身体に入ってくると、肥満細胞の表面にある抗体と結合します。
④結果、肥満細胞から化学物質(ヒスタミンなど)が分泌されます。
⑤この化学物質が、花粉をからだの外に出そうとして、鼻や目の神経を刺激すると、くしゃみや鼻水、涙が出てきます。

こうして、花粉症の症状がはじまります。

去年までは大丈夫だったのに急に花粉症になってしまった。
それは、これまでに身体に溜まっていた抗体が一定量に達してしまったからです。
また、遺伝的な要素とも関係があり、生まれつきアレルギー体質の人は花粉症になりやすいという説もあります。
さらに、食生活の乱れや睡眠不足、運動不足、ストレスなどが重なると免疫のバランスが崩れ、花粉症がひどくなることがあるため注意が必要である、ともいわれています。

4.花粉症の原因

4−1.主な花粉の飛散時期

今までに約50種類の植物で花粉症が報告されているそうです。
よく知られているのはスギとヒノキですが、花粉症を発症する方が増えるにしたがって、カモガヤやブタクサ、ヨモギなども知られるようになってきました。
【春】
・スギ:2月~4月 ピーク3月頃
・ヒノキ:3月~5月 ピーク3月末~4月前半
・シラカバ:4月~6月 ピーク5月頃
【夏~秋】
・イネ科:3月~10月 ピークは5~6月
【秋】
・ブタクサ(キク科):8月~10月 ピークは9月
・ヨモギ(キク科):8月中旬~10月

ほぼ一年を通して花粉症になる可能性がありますね。
春の植物では冬があたたかいと花粉の飛散も早まりますので、スギ花粉は1月から注意が必要です。
また、スギに反応する人はヒノキ科の植物に反応することが多く、症状が長引く傾向にあります。スギ花粉の飛散が終わっても症状があれば、別の花粉が原因かもしれません。

4−2.環境の変化

花粉症の増加には生活環境の変化も大きく影響しています。
①花粉の飛散量の増加
1950~70年頃、日本各地の山にスギが植林されました。それから30年以上経ち大きく成長したスギが開花適齢期を迎えています。そのため花粉飛散量が増えています。
②住環境の変化
アスファルトの道路やマンションの床などに落ちた花粉は雨で流れない限りそのまま貯まり、風や車によって再び舞い上がります。そのため、花粉に接触する時間が長くなっています。
③生活環境の変化
夜型生活に代表される生活リズムの乱れや過度なストレスなど、生活習慣の変化によってアレルギーを起こしやすくなっています。
また、野菜が少なく高たんぱく・高脂質の食事が中心となっていることも影響しています。

5.現代医学によるアプローチ

新しい薬や飲み薬を使わない治療法も出て、花粉症の治療はどんどん進歩していますが、まずは原因となる花粉の種類を特定することから治療は始まります。

5−1.花粉症の検査

①血液検査
採血し、血液中の抗体が反応する花粉の種類とその抗体の量を調べます。
抗体の量が多い花粉ほどアレルギー反応を起こしやすくなっています。
②皮膚テスト
原因として疑われる花粉のエキスを皮膚に貼りつけたり、軽くひっかいてそこにしみ込ませて反応を見る検査です。
抗体があればその部分が虫刺されのように赤く腫れるので、原因となる花粉を特定できます。
③誘発テスト
ろ紙に染み込ませた花粉のエキスを鼻の粘膜に直接触れさせます。原因となる花粉であればくしゃみや鼻水、鼻づまりなど花粉症の症状が現れます。

5−2.花粉症の治療

①経口薬、点眼薬、点鼻薬
この時期、街中の薬局でもいろいろな種類の花粉症の薬を見かけます。
どの薬もアレルギー反応で発生したヒスタミンの働きを抑えたり、直接炎症を抑えることで症状を軽くします。
飲み方や効果に違いがあるので、お医者さんや薬剤師さんに相談して自分に合った薬をみつけましょう。
②手術療法
レーザーで鼻の粘膜を焼き、アレルギー反応を抑えます。また、鼻の内部の形が原因で鼻づまりがひどく生活に支障がある場合には、その部分を矯正する手術が行われることもあります。
③減感作療法
アレルギーの発生に関連する物質を少しづつ注射で体内に入れて抵抗力をつけていき、アレルギー症状を出にくくする治療法です。
スギ花粉症に対しては、最近では舌下免疫療法(舌の下で溶かす飲み薬)も行われるようになりました。
治療は年単位で長期間かかりますが、スギ花粉症の完治も期待できます。

6.鍼灸によるアプローチ

ここまで、花粉症とは何か、現代医学的な花粉症へのアプローチについてみてきました。
次に、東洋医学の手法のひとつである、鍼灸による花粉症に対するアプローチについてみていきましょう。

「花粉症は鍼灸で治療できるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、花粉症の症状である、目のかゆみ、鼻水、喉のイガイガなども鍼灸によるアプローチが対応可能な症状の一つです。
一般的な投薬治療では、花粉症のつらい症状を飲み薬、外用薬等により抑えます。
投薬による治療を受けている方の中には、『飲み薬を飲み続けることをストレスに感じる』『薬が効かなくなってきたように感じる』『服薬をすることで胃粘膜が荒れてしまったため、薬を飲むことができない』『毎年、同じ症状を繰り返しているので、対処療法ではなく根本から治したい』と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。

一方、鍼灸による花粉症の治し方は「症状を引き起こしている根本の原因」をみつけだし、それを正すことによって、様々な症状を取り除くとともに、花粉症の症状がおきにくい身体づくりをしていきます。
東洋医学的には、「体質、季候、食事、疲労、ストレスなど、何らかの原因で、身体のバリア機能が上手く作用しなくなったり、体内に過剰な水分があふれ体外にうまく排出できなくなることから、花粉症の症状を発症をする」と考えて、鍼灸治療にあたります。

鍼灸で一度の施術に使うツボは1~3つで、施術時間は休憩含めて1時間程度です。
なお、鍼をする前には、予め、詳しく問診をする必要があり、その症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(随伴症状といいます)、その人の体質や体格、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。
その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼灸の施術をします。
そのため、花粉症の症状や原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。

7.東洋医学における花粉症とは

東洋医学においては、花粉症そのものにずばり該当する病名はありません。
なぜかというと、花粉そのものを悪者とするのではなく、それに対して反応し、症状をひきおこす身体のほうに問題がある、と考えているからです。
あえて、東洋医学上の病名のなかから、花粉症の症状に該当するものをあげるとするなら、

〇眼の症状
 目痒(目のかゆみ)、流泪(なみだめ)
〇鼻の症状
 鼻痒(はなのかゆみ)、鼻鼽・鼻淵(はなみず)、鼻塞(はなづまり)
〇喉の症状
 喉痒(のどのかゆみ)、咳嗽(せき)、噴嚏(くしゃみ)

となります。

では次に、どうして、これら花粉症の症状がおこるのか、東洋医学的にその原因を探っていくことにします。

7−1.感冒によるもの(風寒、風熱邪型)

春先は、気候が安定せず、寒くなったり暑くなったり、東風も強く吹きがちです。
東洋医学においては、身体の中を気血水(エネルギー・血液・水分)が滞りなく巡っている時は心身ともに健康な状態であり、外界の気候変動の影響を受けにくく、外邪(風・寒・熱など)が身体に入ってこようとしても、自分自身の力で柔軟に対応をして体内への侵入を防ぐことができます。
これが、いわゆる自己免疫力ですね!!

ところが、外界の気候変化から身体を守るバリア機能(=衛気)が弱り、身体が外界の気候の変化にうまく対応できなかったり、日常生活の不摂生・過度の疲労・虚弱体質などで身体機能が低下しがちだったりすると、風寒・風熱邪(いわゆる風邪=感冒)が身体の中へ入り込むことで、体内の気血水の循環を停滞させて、身体の上部を中心とする、花粉症の症状をひきおこします。
東洋医学では、春は風が吹きやすい季節で、風が花粉を運んでくることから、花粉も風邪(ふうじゃ)の一部としてとらえます。

花粉症の症状が出る前にゾクゾクっとした寒気や寒気、背中のこわばりを感じたとしたら、風寒邪が原因であることが多く、鼻水の色は透明でサラサラした状態のことが多いです。
一方、花粉症の症状に伴い、喉や口の乾燥・ひりひりとした痛みを感じたとしたら、風熱邪が原因であることが多く、発熱や微熱を伴い、鼻水の色は黄色から黄緑色で、長引くにつれて粘性が高くなることが多いです。

7−2.精神的な緊張、興奮によるもの(肝鬱気滞、肝気逆型)

春という季節は、上方向のエネルギーが強く働くようになり、自然界では草木が芽吹き、花を咲かせます。
東洋医学では、人間も自然界の一部であるという考え方(=天人合一思想)があり、上方向のエネルギー(=木気)の働きは人間自身の中でも例外なく作用するようになります。
そういえば、春になると、なんとなくウキウキしたり、気分が昂揚しやすくなったり、のぼせるようになったりしませんか?
また、仕事・学校・人間関係など、新生活をスタートさせるシーズンでもあることから、精神的に緊張や興奮をすることが増えます。
精神的な緊張や興奮の連続は、体内で気血水の循環停滞をひきおこし、そこに春の上方向のエネルギーが加わることで、身体の上部を中心とする、花粉症の症状をおこしやすくなります。

このタイプの場合、普段から、肩こり・頭痛・腰痛がある、イライラ・気分の落ち込みがある、ため息が多い、喉の異物感、胸や腹に張った感じの痛み、月経不順があるなどがあり、春先には、上半身の症状(イライラの悪化、眩暈、頭痛、顔面紅潮、耳鳴り、胸脇満痛、しゃっくり、酸っぱいものがこみ上げる、のぼせ)が強く出がちです。

7−3.胃腸の働きの弱りによるもの(脾虚、湿邪型)

食べ過ぎを繰り返したり、水分を必要以上にとったりと、暴飲暴食を日々繰り返して胃腸への負担が積み重なることによって、胃腸の働きが弱まり、消化・吸収が上手く行われなくなります。
また、体質的に胃腸が弱く、お腹を壊しやすい人も、同様のことがおこりやすくなります。
その結果、体内には過剰な水分が老廃物(湿邪)としてたまりやすくなり、そこに春の上方向のエネルギーが加わることで、花粉症の症状をおこし、身体の上部を中心として水があふれ出てくるようになります。

ここまで、東洋医学における花粉症についてその原因をみてきました。
実際には、原因がズバリ一つだけに特定されることは少なく、いくつかの原因が複雑にからみあって症状をひきおこしているケースがほとんどですので、素人判断せず、ぜひ東洋医学の専門家に相談してみてくださいね!

8.鍼灸治療における花粉症の診断

次に、少し専門的に鍼灸治療による花粉症診断のポイントを解説していきます。

8−1.風寒、風熱邪型

①風寒(太陽表証)
脈浮緩OR緊、舌湿潤、外関、合谷、身柱、肺兪、申脈、三陰交といったツボに反応が出やすくなります。
②風熱(衛分証)
専門的診断のポイントとしては、脈浮数、舌先紅・舌乾燥、内関、労宮のツボに反応が出やすくなります。

風寒、風熱邪など外邪の侵襲を受けやすい=易外感の場合は、衛気気滞、衛気虚が原因となりやすく、それには肝鬱気滞、肺虚、脾虚、腎虚などが関与すると考えられます。

8−2.肝鬱気滞、肝気逆型

①肝鬱気滞
肝気の鬱滞で、疏泄機能が低下し気が停滞することをいいます。
督脈上の圧痛、臍周の冷えと緊張、脇腹(肝相火)の邪、肝兪・胆兪、太衝、合谷、後渓といったツボに反応が出やすくなります。
②肝気逆
肝気の亢進によって、身体の上半身が影響をうけることをいいます。
実脈、百会の熱感や圧痛、神道や霊台、至陽、八椎下、筋縮などの圧痛、天枢の左右差、といったツボの反応が出やすくなり、全体的に上実下虚、舌先紅刺、舌先から舌辺の赤みと無苔になりやすくなります。

8−3.脾虚、湿邪型

①脾虚
脾が虚している状態のことをいいます。
脾気虚は運化機能が低下した状態となり、目眩、疲労、消化不良、腹部膨満感、脱力感、食欲不振、下痢、自汗などの症状の訴えがその特徴となります。太白、公孫、脾兪、中脘、下脘などのツボに反応が出やすくなります。
②湿邪
湿邪が身体の中に停滞することで、その重濁で粘着性な性質は、体内の気の流れを阻害することから、肉体疲労感、手足の鈍重感、頭重感、食欲不振、腹部膨満感、下痢、舌苔として滑苔や膩苔、外関、脾兪、陰陵泉などのツボに反応が出やすくなります。

9.まとめ

今回は花粉症について、症状ごとのタイプや原因、治療方法について解説をしました。
東洋医学においても、花粉症に対する治療が可能なことはご理解いただけたでしょうか。
鍼灸治療によって花粉症を改善して、春の新生活をたのしく過ごしませんか?

今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132


画像の出典:https://www.photo-ac.com/

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