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脳機能局在論と最近の進展
ヒトの脳には約1000億個の神経細胞が存在するといわれている。
この1000億個の神経細胞は、どのように我々の感覚や運動情報、記憶を生み出しているのだろうか?
ここには2つの対立する仮説が存在する。
1つは機能局在論である。例えば、患者H.M.の事象は、海馬(嗅内皮質)が記憶に不可欠であるという認識をもたらした。前頭葉に鉄パイプが刺さったPhineas Gageの事例は、前頭葉が意思決定や性格の
情報で捉える生物学入門#1 【生物は遺伝子の乗り物である】
僕たちは、個体の特徴を決める遺伝子を細胞内に保持していると、生物学で習う。これはもちろん正しいのだが、生物個体を中心に据えた見方を脱却し、一歩引いて考えると、遺伝子は生命誕生から現在まで、生物の生殖というプロセスを通して、形を変えながらも子孫を受け継ぎ続けていると考えることもできる。そのような地質学的な時間スケールから見れば、生物の寿命は一瞬である。その意味で、遺伝子中心の視点で見れば、生物は遺伝
もっとみる創造とは何だろう?~生成AIがもたらすヒント~
僕らはとても自分には思いつかないアイデアが具現化されると創造的なように感じる。
芸術家の描く絵はどれも素人には真似できないものだ。
しかし、一般人に描けないものであれば創造的に感じるわけではない。ノイズが一面に広がっている絵を見ても僕らは創造的だとは思わない。では、一般的な分布から外れているにもかかわらず完全なランダムでもない創造性とは何なのだろうか?
睡眠時のSWRはブラウン過程とみなせる
第六感~地磁気感覚は獲得可能か?~
ヒトの五感
ヒトは視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感を感じることができる。これらの感覚入力をもとに僕らは周囲の世界を理解し、それを体験している。
しかし、他の動物に目を向けてみると、全く別のモダリティーの感覚を持つ者もいる。例えば、渡り鳥は地磁気を感知し、それをコンパスとして長距離の渡りを成功させることが知られている。
では、僕らは地磁気という感覚を手に入れることはできないのだろうか?
僕た
ゲノムからDNNまで:進化はなぜうまくいく?
進化はなぜうまくいくのか?
自然選択の理論によると、進化は環境内での適応度の高い変異を持つ個体がより多くの遺伝子を残すことで起こる。この際に、xy平面に遺伝子配列の空間をとり、縦軸に適応度をとると、生物は適応度地形を上昇するように進化していくということができる。しかし、よくよく考えてみると、なぜこのような進化がうまくいくのかは自明ではない。ゲノムの配列空間は膨大で、多数のあまり適応度の高くない