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「リアル書店の売り」は「一冊の選書」

本屋(実店舗)の利用頻度は「半年に1回未満」が44.2%、「月に1回以上」が32.1%とのこと。

ただ「本屋に行かない」=「本を買わない」ではないでしょう。

正直、本を買うだけならオンラインで十分です。交通費は一円もかからず、列に並ぶ必要もない。町の書店に置いてなくてもアマゾンなら大抵ありますし、取り寄せにかかる時間も短い。いいことづくめです。

だからリアル書店は従来の「欲しい本を買える」ではなく「新たな関心が見つかる」体験を売りとしてアピールする必要があります。いかに知的好奇心を刺激するか、意外な出会いを演出するか。そのためには他の店と同じ品揃え&置き方をしていては難しい。担当者の腕と研究熱心さが問われます。

たとえば日本史。↓とかどうでしょうか? 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を毎週楽しんでいる方はぜひ。

吉川弘文館の日本史本は感銘を受けたものが多く、けっこう信頼しています。少し前に「100分de名著」でテーマになった「太平記」が好きな方には↓もオススメ。時代を象徴する「ばさら大名」の美学と矜持、そして思わぬ一面に触れてみませんか?

売れるかどうかは結果論。でもこういう試みを続けていれば、たまたまお店に来た日本史好きや大河ファンの方が「おっ」と足を止めてくれるかもしれない。そして「じゃあ他の棚も見てみよう」と思い、そこで買いたい本と出会ってくれるかもしれない。

定番や売れ筋を積むことは、データの見方や発注のやり方さえ覚えれば誰でもできます。それは「選書」とは呼べない。「選書」の意義はその本を売ることと同時に、その本をきっかけに他の本に、何よりもお店自体に関心を持っていただくことにあるのです。

だから人手不足にも負けず、選りすぐった一冊を随時入れています。まずは「足を運びたくなる空間」を作る。大型書店の経営陣の方々には、その辺りをどう捉えているのか訊いてみたいです。

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