吾亦紅

写真と、息子(二歳♂)が描いた絵を載せることが多いです。最近は、描いてくれないけど。

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『ロリータ』を読んだので

ウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』を読んで胸が震えたので、もう少しだけちゃんとした理解を得たいと思い、再読しました。その感想です。   『ロリータ』とは   『ロリータ』という小説は、本作の主人公(どうやら罪人っぽい)が記した手記という形式をとっています。言うなら、「クレイジーなおじさんの、めっちゃ長い独り言」です。その内容は主に、とある少女とのありし日々を中心に展開されていきます。 おじさんことハンバート・ハンバートは、博識でありながら、心臓に持病があり、また精神を

    • 夜桜を見に

      子どもの入園式も(なんとか無事に)終わり、慣れない環境に戸惑いながらも、ゆっくりと平穏な日々が戻ってきています。 河川敷近くの公園へ夜桜を見に行きました。 屋台がいくつか出ていて、祭りは大いな賑わいを見せていました。桜は見事な美しさです。ベンチに座る人、草地に座り込む人、中にはレジャーシートを広げて、折り畳みテーブルを持参している人も。 わたしは園内をぶらりぶらりしながら、三島由紀夫の文体でこの情景の描写を読んでみたいなと思いました。きっと綺麗でしょうね。 息子は、屋

      • シカゴ詩集

        いつも子どもを寝かしつけてから家事をしたり内職をしたり本を読んだりするのだが、昨日は疲れていたのか、寝かしつけと共に自分も寝入ってしまった。 長く寝たせいか、優しい夢を見た。 夢の中のわたしは、まだ子どもである。手をひく母もかなり若い。場所はおそらく地元だろうと推測する。日が射すと風景が霞む、平凡な住宅街。わたしの記憶の中の地元が、忠実に再現されていた。 まだ若年のわたしに、何故ふるさとへの感傷があるのかと言えば、たった九年間しかそこに住んでいなかったからだ。高校進学と

        • ありがたき人々

          春休みである。三歳になったチビを連れて遊びに出かけた。自然豊かな公園で、川が流れていた。夏には水遊びができそうだと思った。 昨日の深夜に『ロリータ』を読み終えて、ほんといい作品だったとしみじみとした余韻に浸っていた。 そんなわたしの心をよそに、日常は流れていく。息子にジュースを買い、自分にお茶を買う。いちごミルクを手に持ち、これを川辺で飲みたいとチビが言うので、土手から降りる場所を探していたところ、散歩中のおじいさんと出会った。川面に近い場所を尋ねたら、答えと同時になんと

        『ロリータ』を読んだので

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          白木蓮を撮る女

          自宅の横に狭い車道が通っていて、その通りを挟んだ向かいに小学校が建っています。正門の近くに白木蓮の木があって、知らないうちに綺麗な花を咲かせていました。 わたしは腕を伸ばしてスマホで写真を撮っていて、するとその後ろを近所のレンタカー屋の従業員さんが通って行きました。よほど物珍しかったのか、何度も振り返ってこちらを見ていました。そんなに奇妙かな? わたしの姿? 運動不足なので、夕飯食べたあとちょくちょく走るようになりました。真っ暗な土手から眺める街の明かりが綺麗です。 最

          白木蓮を撮る女

          プチ家出の参考例

          些細なことが積み重なって、家出をした。頭中の理性を総動員して、何とかその場は堪えたけれど、旦那から「ブチギレた顔をしているよ。なにかあったの?」と聞かれた。この場合の「なにかあったの?」は、なんというか、形式的なもの。旦那は薄々気づいているだろう。わたしもこれまで、散々言ってきたことであるので、今更言わなかった。ただ夕飯の支度して、一晩泊まる準備をして、財布を持って家を出た。 駅前の陸橋では、三組くらいのミュージシャンがギターを弾きながら歌っていた。彼らのお友達と思しき人た

          プチ家出の参考例

          ヘッセ愛

          今日はすこしばかり辛いことがあって、って、記事を書くたび、似たようなことを言っている気がしますが。 そんな日はヘッセを読みます。新潮文庫の『ヘッセ詩集』です。ヘッセの言葉はほんとに素晴らしい。ヘッセの言葉が素晴らしいのか、ヘッセそのものが素晴らしいのか、分かりません。ですがわたしは、ヘッセの言葉なら書物に収められているものも、収められていないものも聞きたいし、読みたいです。 この友だちって、いわゆるわたしたち読者のことと解釈してもいいのでしょうか。まあ、好きに解釈することに

          ヘッセ愛

          所用(野暮用?)があって、関西に行きました。海がありました。ひさしぶりに関西弁を聞きました。わたしは関東に住んでいて、わたしの周りで関西弁を喋るのは夫と息子(三歳)だけなのですが、ふたりともしょせんエセ関西弁なんですよね。今回は純粋な関西弁を聞きました。ことばが同じだと、心理的な距離の近さを感じます。だからか、自分の心身の置き方?というか、バランスみたいなのが不安定になってしまって、すこししんどかったです。関東では、他者と(心の)距離を置いて会話をするのが当たり前になっていて

          数学者の朝

          たしかに本を探しているはずなのに、現に本屋さんにはこんなにも本が溢れ返っているのに、なぜか読みたい本に出逢えない。 そんなときに出会った詩集が『数学者の朝』でした。作者はキム・ソヨン。帯には、「語りえない物語のために」。 装丁は、表紙が全面銀色で、白い花を啄む青いトカゲ(ヤモリ?)の絵が描かれています。とても印象的で思わず手に取ってみました。レジに持って行ったら、一冊2000円ちょっとしてびっくりしてしまいましたが。 詩集は第一部から第五部+解説+訳者あとがきによって成り立

          数学者の朝

          ギルガメシュ叙事詩

          立春を過ぎたとはいえ、ずいぶん暖かい気がします。わたしは春が苦手です。ぬるい大海にぽんとひとり放り込まれた気持ちになるといいますか。とりつく島もなく溺れるしかない心境に陥ります。でも、桜は好きですし、殆どすべての草花が好きなので、とくべつ嫌いな季節というわけではありません。花の匂いが立ち込め、彩りを楽しませてくれる季節は、やっぱり春が一番です。 ですが、このように心身のバランスが崩れたときは、ありとあらゆる言葉が受け付けなくなったりします。文字を介した言葉も、声を介した言葉

          ギルガメシュ叙事詩

          継続の先にある世界

          dir en greyのリーダー薫のインタビュー記事を読んでいた。彼の文章を読んでいると、dir en greyの活動が26年も続いているのはひとえにこの人の考えが根幹としてあったからなのだな、ということがよく分かった。 続けることを目標とすることは大切である。家庭もそうだ。最初こそ夫婦はふたりきりで仲良くやっていけるものの、年月が経てば色んな問題が浮き彫りになって、ときには安寧からは程遠い状態に陥ることもある。 バンドも同じではなかろうか。メンバーの性格や、方向性の違い

          継続の先にある世界

          星であったわたしたち

          バクチクのボレロという曲が無性に好きです。まず、出だしの歌詞がいい。わたしたちは生まれる前は星であった。 星であったわたしたちは、何も持っていなくて、何者でもなくて、それゆえに不安も、希望も持っていなくて、だからこそ安心して夢を見ていられた。 夢といっても色々ありますが、星であったわたしたちが見ていた夢というのは、きっと温かくて、素敵な夢なんでしょうね。 と、ここまでは「俺」の感想であったようで、現実世界では、どうやら「君」が亡くなってしまったようです。「俺」はそのこと

          星であったわたしたち

          わたしの好きな「はやみねかおる」

          たとえば世界がひとつの球体だったとして。それが硬い鉄かなにかで覆われていたとする。しかしその表面をまさぐっていくと、たった一つだけ、あたかも温い海のように柔らかい箇所があることに気づく。 突然なんの話だろうと思われるかもしれないが、上記の感覚がわたしにとってのはやみねかおるである。 はやみねかおるという人は、児童作家である。また、元は小学校の先生でもあった。 小学生の頃、教室のロッカーの端に、この先生の本が置かれてあった。本って面白いな、と思い始めたわたしはそれを貪るよう

          わたしの好きな「はやみねかおる」

          ウィーンの辻音楽師

          グリルパルツァーという劇作家の短編小説を読んでいます。小説のタイトルは『ウィーンの辻音楽師』。本を開くと、もう一編『ゼンドミールの修道院』と題されたお話も載っていました。私はこちらの方から読み進めました。 圧倒的な迫力。ただならぬ感じが伝わってくるような、一分の隙もない物語です。内容は殺人、不倫、贖い、とかなり重苦しかったですが、読了後の胸の重たさは心地よく、所感としては、すごいものを読んだな、という気がしました。 感動のさめやらぬ内に、『ウィーンの辻音楽師』を読んでしま

          ウィーンの辻音楽師

          Ado「unravel」が素晴らしかった

          久しぶりにTKさん(凛として時雨)でも聴こうかとYouTubeをつけたら、Adoが歌っているunravelを見つけた。 Adoがアンラベル歌ってる? なぜ? 本人が好きなのかな? と思って、何気なく再生してみたんですが……。 ブラボー!!!!!!!!!!(感激) 素晴らしかった!!なんだこれは!!! シャウトうまあ!!!!!(感激) 今では世界的に有名なAdoちゃんですが、わたしは実のところ、Adoちゃんの歌がかなり苦手でした。何故かと言いますと、デビュー曲「うっせ

          Ado「unravel」が素晴らしかった

          優しい言葉

          ふと読みたくなってシャルル・ボードレールの『悪の華』を買いました。本の裏表紙を見てみましたら、ボードレールの『悪の華』は「罪の聖書」や「近代人の神曲」と呼ばれていると書かれてあります。 わたしはバクチクというバンドのファンなのですが、このバンドのギターを担う今井寿さんは、ボードレールが好きなのでしょうか。彼らの代表曲である「悪の華」もそうですし「ボードレールで眠れない」などボードレール関連の単語が随所に出てくる気がします。 そんなわけで、ボードレールはいつかは読んでみたい

          優しい言葉