吾亦紅

写真と、息子(二歳♂)が描いた絵を載せることが多いです。最近は、描いてくれないけど。

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写真と、息子(二歳♂)が描いた絵を載せることが多いです。最近は、描いてくれないけど。

マガジン

記事一覧

ディフェンス

ナボコフの『ディフェンス』を読みました。 面白かった〜。 まず前書きの切れ味が最高で、さすがナボコフだな……(笑)と笑ってしまった。 『ディフェンス』はチェスの…

吾亦紅
16時間前
9

目が眩むほどに

わたしは山が好きだ。夏になるとしょっちゅう行く。特に川が好きで、川のせせらぎを聞いて、虫の鳴き声を聞いて、緑の木漏れ日を眺めたりしていると、芯から安心するという…

吾亦紅
10日前
18

『ロリータ』を読んだので

ウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』を読んで胸が震えたので、もう少しだけちゃんとした理解を得たいと思い、再読しました。その感想です。   『ロリータ』とは   『…

吾亦紅
4週間前
29

夜桜を見に

子どもの入園式も(なんとか無事に)終わり、慣れない環境に戸惑いながらも、ゆっくりと平穏な日々が戻ってきています。 河川敷近くの公園へ夜桜を見に行きました。 屋台…

吾亦紅
1か月前
17

シカゴ詩集

いつも子どもを寝かしつけてから家事をしたり内職をしたり本を読んだりするのだが、昨日は疲れていたのか、寝かしつけと共に自分も寝入ってしまった。 長く寝たせいか、優…

吾亦紅
1か月前
20

ありがたき人々

春休みである。三歳になったチビを連れて遊びに出かけた。自然豊かな公園で、川が流れていた。夏には水遊びができそうだと思った。 昨日の深夜に『ロリータ』を読み終えて…

吾亦紅
1か月前
18

白木蓮を撮る女

自宅の横に狭い車道が通っていて、その通りを挟んだ向かいに小学校が建っています。正門の近くに白木蓮の木があって、知らないうちに綺麗な花を咲かせていました。 わたし…

吾亦紅
1か月前
16

プチ家出の参考例

些細なことが積み重なって、家出をした。頭中の理性を総動員して、何とかその場は堪えたけれど、旦那から「ブチギレた顔をしているよ。なにかあったの?」と聞かれた。この…

吾亦紅
1か月前
15

ヘッセ愛

今日はすこしばかり辛いことがあって、って、記事を書くたび、似たようなことを言っている気がしますが。 そんな日はヘッセを読みます。新潮文庫の『ヘッセ詩集』です。ヘ…

吾亦紅
2か月前
30

所用(野暮用?)があって、関西に行きました。海がありました。ひさしぶりに関西弁を聞きました。わたしは関東に住んでいて、わたしの周りで関西弁を喋るのは夫と息子(三…

吾亦紅
2か月前
18

数学者の朝

たしかに本を探しているはずなのに、現に本屋さんにはこんなにも本が溢れ返っているのに、なぜか読みたい本に出逢えない。 そんなときに出会った詩集が『数学者の朝』でし…

吾亦紅
2か月前
33

ギルガメシュ叙事詩

立春を過ぎたとはいえ、ずいぶん暖かい気がします。わたしは春が苦手です。ぬるい大海にぽんとひとり放り込まれた気持ちになるといいますか。とりつく島もなく溺れるしかな…

吾亦紅
2か月前
28

継続の先にある世界

dir en greyのリーダー薫のインタビュー記事を読んでいた。彼の文章を読んでいると、dir en greyの活動が26年も続いているのはひとえにこの人の考えが根幹としてあったか…

吾亦紅
2か月前
21

星であったわたしたち

バクチクのボレロという曲が無性に好きです。まず、出だしの歌詞がいい。わたしたちは生まれる前は星であった。 星であったわたしたちは、何も持っていなくて、何者でもな…

吾亦紅
3か月前
16

わたしの好きな「はやみねかおる」

たとえば世界がひとつの球体だったとして。それが硬い鉄かなにかで覆われていたとする。しかしその表面をまさぐっていくと、たった一つだけ、あたかも温い海のように柔らか…

吾亦紅
3か月前
29

ウィーンの辻音楽師

グリルパルツァーという劇作家の短編小説を読んでいます。小説のタイトルは『ウィーンの辻音楽師』。本を開くと、もう一編『ゼンドミールの修道院』と題されたお話も載って…

吾亦紅
3か月前
16
ディフェンス

ディフェンス

ナボコフの『ディフェンス』を読みました。

面白かった〜。
まず前書きの切れ味が最高で、さすがナボコフだな……(笑)と笑ってしまった。

『ディフェンス』はチェスの物語ですが、じつのところわたしは、チェスについては殆ど何も知りません。
実力といえば、iPhoneのチェスゲームアプリにおいて、相手がレベル1の敵であっても引き分けになってしまうほどの最弱プレイヤーです。

さて、いささか興奮しながら本

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目が眩むほどに

目が眩むほどに

わたしは山が好きだ。夏になるとしょっちゅう行く。特に川が好きで、川のせせらぎを聞いて、虫の鳴き声を聞いて、緑の木漏れ日を眺めたりしていると、芯から安心するというか、わたしはきっと山から生まれたんだろうとさえ思う。この世に生まれてはや数十年、気づいたこと、わたしのこの存在は山の一部であるということ。小指の爪。あるいは垢。落ちた髪の毛の先っちょ。それがわたしです。

ワーズワスというイギリス人の詩を読

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『ロリータ』を読んだので

『ロリータ』を読んだので

ウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』を読んで胸が震えたので、もう少しだけちゃんとした理解を得たいと思い、再読しました。その感想です。
 

『ロリータ』とは
 

『ロリータ』という小説は、本作の主人公(どうやら罪人っぽい)が記した手記という形式をとっています。言うなら、「クレイジーなおじさんの、めっちゃ長い独り言」です。その内容は主に、とある少女とのありし日々を中心に展開されていきます。

おじ

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夜桜を見に

夜桜を見に

子どもの入園式も(なんとか無事に)終わり、慣れない環境に戸惑いながらも、ゆっくりと平穏な日々が戻ってきています。

河川敷近くの公園へ夜桜を見に行きました。

屋台がいくつか出ていて、祭りは大いな賑わいを見せていました。桜は見事な美しさです。ベンチに座る人、草地に座り込む人、中にはレジャーシートを広げて、折り畳みテーブルを持参している人も。

わたしは園内をぶらりぶらりしながら、三島由紀夫の文体で

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シカゴ詩集

シカゴ詩集

いつも子どもを寝かしつけてから家事をしたり内職をしたり本を読んだりするのだが、昨日は疲れていたのか、寝かしつけと共に自分も寝入ってしまった。

長く寝たせいか、優しい夢を見た。

夢の中のわたしは、まだ子どもである。手をひく母もかなり若い。場所はおそらく地元だろうと推測する。日が射すと風景が霞む、平凡な住宅街。わたしの記憶の中の地元が、忠実に再現されていた。

まだ若年のわたしに、何故ふるさとへの

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ありがたき人々

ありがたき人々

春休みである。三歳になったチビを連れて遊びに出かけた。自然豊かな公園で、川が流れていた。夏には水遊びができそうだと思った。

昨日の深夜に『ロリータ』を読み終えて、ほんといい作品だったとしみじみとした余韻に浸っていた。

そんなわたしの心をよそに、日常は流れていく。息子にジュースを買い、自分にお茶を買う。いちごミルクを手に持ち、これを川辺で飲みたいとチビが言うので、土手から降りる場所を探していたと

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白木蓮を撮る女

白木蓮を撮る女

自宅の横に狭い車道が通っていて、その通りを挟んだ向かいに小学校が建っています。正門の近くに白木蓮の木があって、知らないうちに綺麗な花を咲かせていました。

わたしは腕を伸ばしてスマホで写真を撮っていて、するとその後ろを近所のレンタカー屋の従業員さんが通って行きました。よほど物珍しかったのか、何度も振り返ってこちらを見ていました。そんなに奇妙かな? わたしの姿?

運動不足なので、夕飯食べたあとちょ

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プチ家出の参考例

プチ家出の参考例

些細なことが積み重なって、家出をした。頭中の理性を総動員して、何とかその場は堪えたけれど、旦那から「ブチギレた顔をしているよ。なにかあったの?」と聞かれた。この場合の「なにかあったの?」は、なんというか、形式的なもの。旦那は薄々気づいているだろう。わたしもこれまで、散々言ってきたことであるので、今更言わなかった。ただ夕飯の支度して、一晩泊まる準備をして、財布を持って家を出た。

駅前の陸橋では、三

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ヘッセ愛

ヘッセ愛

今日はすこしばかり辛いことがあって、って、記事を書くたび、似たようなことを言っている気がしますが。
そんな日はヘッセを読みます。新潮文庫の『ヘッセ詩集』です。ヘッセの言葉はほんとに素晴らしい。ヘッセの言葉が素晴らしいのか、ヘッセそのものが素晴らしいのか、分かりません。ですがわたしは、ヘッセの言葉なら書物に収められているものも、収められていないものも聞きたいし、読みたいです。

この友だちって、いわ

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海

所用(野暮用?)があって、関西に行きました。海がありました。ひさしぶりに関西弁を聞きました。わたしは関東に住んでいて、わたしの周りで関西弁を喋るのは夫と息子(三歳)だけなのですが、ふたりともしょせんエセ関西弁なんですよね。今回は純粋な関西弁を聞きました。ことばが同じだと、心理的な距離の近さを感じます。だからか、自分の心身の置き方?というか、バランスみたいなのが不安定になってしまって、すこししんどか

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数学者の朝

数学者の朝

たしかに本を探しているはずなのに、現に本屋さんにはこんなにも本が溢れ返っているのに、なぜか読みたい本に出逢えない。
そんなときに出会った詩集が『数学者の朝』でした。作者はキム・ソヨン。帯には、「語りえない物語のために」。
装丁は、表紙が全面銀色で、白い花を啄む青いトカゲ(ヤモリ?)の絵が描かれています。とても印象的で思わず手に取ってみました。レジに持って行ったら、一冊2000円ちょっとしてびっくり

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ギルガメシュ叙事詩

ギルガメシュ叙事詩

立春を過ぎたとはいえ、ずいぶん暖かい気がします。わたしは春が苦手です。ぬるい大海にぽんとひとり放り込まれた気持ちになるといいますか。とりつく島もなく溺れるしかない心境に陥ります。でも、桜は好きですし、殆どすべての草花が好きなので、とくべつ嫌いな季節というわけではありません。花の匂いが立ち込め、彩りを楽しませてくれる季節は、やっぱり春が一番です。

ですが、このように心身のバランスが崩れたときは、あ

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継続の先にある世界

継続の先にある世界

dir en greyのリーダー薫のインタビュー記事を読んでいた。彼の文章を読んでいると、dir en greyの活動が26年も続いているのはひとえにこの人の考えが根幹としてあったからなのだな、ということがよく分かった。

続けることを目標とすることは大切である。家庭もそうだ。最初こそ夫婦はふたりきりで仲良くやっていけるものの、年月が経てば色んな問題が浮き彫りになって、ときには安寧からは程遠い状態

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星であったわたしたち

星であったわたしたち

バクチクのボレロという曲が無性に好きです。まず、出だしの歌詞がいい。わたしたちは生まれる前は星であった。

星であったわたしたちは、何も持っていなくて、何者でもなくて、それゆえに不安も、希望も持っていなくて、だからこそ安心して夢を見ていられた。

夢といっても色々ありますが、星であったわたしたちが見ていた夢というのは、きっと温かくて、素敵な夢なんでしょうね。

と、ここまでは「俺」の感想であったよ

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わたしの好きな「はやみねかおる」

わたしの好きな「はやみねかおる」

たとえば世界がひとつの球体だったとして。それが硬い鉄かなにかで覆われていたとする。しかしその表面をまさぐっていくと、たった一つだけ、あたかも温い海のように柔らかい箇所があることに気づく。

突然なんの話だろうと思われるかもしれないが、上記の感覚がわたしにとってのはやみねかおるである。

はやみねかおるという人は、児童作家である。また、元は小学校の先生でもあった。
小学生の頃、教室のロッカーの端に、

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ウィーンの辻音楽師

ウィーンの辻音楽師

グリルパルツァーという劇作家の短編小説を読んでいます。小説のタイトルは『ウィーンの辻音楽師』。本を開くと、もう一編『ゼンドミールの修道院』と題されたお話も載っていました。私はこちらの方から読み進めました。

圧倒的な迫力。ただならぬ感じが伝わってくるような、一分の隙もない物語です。内容は殺人、不倫、贖い、とかなり重苦しかったですが、読了後の胸の重たさは心地よく、所感としては、すごいものを読んだな、

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