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山/酒/映画/美術/落語/日本語/France-Tokyo-Montréal/ ライターです。

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Watashi no Rirekisyo

日本で暮らす縁がない30代女子。 社交性の皮を被った臆病者。合理的に生きることが苦手。 フランス語を話す人たちに振り回される人生。 異国の地モントリオールで、 いつも何かを失いながら 自分ではない誰かになりたい日々を過ごしています。

    • peux pas dormir sans panser à toi.

      「ごめん、私昨日変なことを言ったよね。 私の言葉があなたのプレッシャーになっていないことを願ってる。 大切なあなたへ。」 赤ちゃんがあなたたちを選んだ・・・なんて言ったことが 彼をさらに追い詰めていたのではないかと不安になっていた。 女の子を妊娠させてしまったこと、きっと、本当に心を許している人にしか伝えていないんだと思う。 堕ろすことは殺人と一緒だと思っているけど それがあなたの決断なら、私は精一杯応援したい。 「ああ、君が言ってくれたことは本当に可愛いよ。 近いうち

      • Le problème qui bloque ma respiration

        あなたのいない時間に、あなたの家に行った。 あなたが女の子を妊娠させたと知ったとき 怒りと戸惑いでどうにかなりそうで、当事者のあなたに強く言ってしまった。 お詫びに、あなたと再会した日に飲むつもりだったお茶を 玄関のドアに掛けて帰った。 「こんばんは、玄関のお茶見つけたよ。 こんなの思ってもみなかった、嬉しい。ありがとう。 はは、うん、昨日の君はキツかった。でもフォローありがとう。 彼女妊娠してた。医者にも確認してもらった。予想してなかったな。 うまくいくことを願っ

        • Je souhaite votre bonheur

          誘ってもらってから、もう2週間も経っていた。 別れてからは、もう3ヶ月くらい? 久々にあなたに会える!と思って、昨日の夜はワクワクして寝た。 最近のあなたは、何でもないことで連絡をくれる。一緒にいた頃と同じようにすぐに返事をくれたり、私の冗談にもよく笑ってくれる。何か変な感じ。 「実は、今夜僕たちが会うことが、いいことなのかわからない。」 今朝あなたからのメッセージを見たとき 最近妙に仲が良かったから、少し戸惑ってるのかなと思った。 (頻繁に連絡をよこしてくるのは、あ

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          Embrasse-moi

          大好きなあなたからの、久々の連絡だったのに あ、連絡きてる。くらいにしか思わなかった自分に驚いた。 「もう君は誰かと一緒にいるのかもしれないけど もしよかったら、今度うちで一緒に食事でもどうかなって思ってる。 君の好きなタラの缶詰、フランスで買ってきたし。」 そうだった。別れた理由をちゃんと話し合いたいって、はじめに言ったのが私で クリスマス休暇で帰省するからって先延ばしにしたのが、あなただったよね。 気づけばあれからもう1ヶ月、私たちが別れてからはもう2ヶ月も

          Embrasse-moi

          Des amis qui ne se croisent plus

          「今日は君にとって、いい1日だった?」 毎晩必ず届くこのメッセージに、正直かなり疲れている。 常に私を褒めちぎって、絶対的な自信を持たせてくれる彼の言葉や 私以上に私を心配して、やさしく接してくれる彼の存在が 最近はとてつもなく重い。 「今日、僕たちはわかりあえていない気がして悲しかった。」 「君が寂しくなったら、僕に連絡すると約束してほしい。」 「君が君の問題について話してくれないのは、僕を信用していないから?さみしいよ。」 君は僕の大切な友達だよ、と

          Des amis qui ne se croisent plus

          Deux vies trop blessées

          「僕が君にずっとキスしたかったこと、君はいつから気づいてた?」 あなたから聞きたかった言葉の全てを、彼は惜しげも無く私にくれる。 「待って、ちゃんと話したいことがある・・・」 この街に来た本当の理由を話すのはつらかったけど、それを知らない人に触られたくない。 私は元婚約者のエゴのためにこの街に連れて来られたことを、彼に話した。 大好きな仕事をやめ、大好きな友達や家族と別れ 縁もゆかりもない外国の街にやってきたけれど、結局私は元婚約者のことも拒絶してしまったこと。

          Deux vies trop blessées

          Comment je peux sortir de ma vie?

          「今何してる?いつものスタバにいるから遊びに来てよ」 モンゴル人の男の子と再会してから2週間、気づけばほぼ毎日こんなメッセージが届く。 一度身体を求められて、しばらく距離を置いていたはずなのに やることなすことうまくいかず、自分のやりたいことがわからず 一人で考え込むのが苦しくて、誰かと話したいと思ったとき この街でひとりぼっちの私は、彼に助けを求めてしまった。 あの子と再会するってことは、自ら悩みの種を増やすようなものだって わかっていた。はず。 彼のこと

          Comment je peux sortir de ma vie?

          Un long moment

          「ラマダンでもないのに毎週月曜断食をして、週末は欠かさずジムに通って、哲学の本を読んで どうしてそんなに頑張っているの?人生を豊かにしたいの?欲を捨てたいの?」 ムスリムの彼のことを知りたい、なんて意図は全くなく、ただ興味本位で聞いた。 「なんで鍛えているんだろう、考えたことなかった。 自分はいい職場で、いい給料をもらって、健康で、イージーな人生だ。 だから何かしないと、貧弱になってしまう。 それに、尊敬できる賢い女性と結婚したいから 強くて賢くて尊敬されるよう

          Un long moment

          l'Avenir où le plein de tristesses m'attendent

          「あの人は、自分の欲望が満たされることしか考えていません。 復縁しても、また悲しい思いをすることになるようです。」 相談できる相手すらいない私に、 電話口の占い師は追い打ちをかける。 「彼は優しかったかもしれませんが、こういう人はみんな外面がいいんですよ」 優しかったらそれでいいじゃん!と思ってしまうのは ダメな男に慣れ過ぎているからなんでしょうか。 そんな女の行き着く先が、こういう場所なのかも。 その後少し泣いて、落ち着かないうちに、あなたにメッセージを送っ

          l'Avenir où le plein de tristesses m'attendent

          La vie qu'on doit pas choisir

          自分のキャパシティを超えた人生に、人はどう向き合うんだろう。 愛してくれている人はムスリムで 彼との未来を、どうしても想像できない。 彼の声を、どうしても好きになれない。 彼の優しさから、どうしてもどうしても逃げたくなってしまう。 私の中では答えが出てるのに、伝える勇気がないままに 二人だけの時間を重ねてしまう。 こんなとき、あなたに助けてもらいたい。 叱ってもらいたい、抱きしめてもらいたい。 全て叶わないのは知ってるし、相談できる友達はいなくなった。 だ

          La vie qu'on doit pas choisir

          Une bise inoubliable

          スマートフォンの写真フォルダを整理していたら 友達だったモンゴル人の男の子が、ベットの上でギターを抱えているサムネイルがあった。 彼の家でふたり、飲んでいた時 彼が唐突に尾崎豊の「I LOVE YOU」歌い出したときの動画。 変な空気になるのが嫌で、 カタコトの日本語に無理やり笑って 早く終わってくれと願いながら撮った。 この2分20秒の気まずさと、その後のキス、私たちが出会ったこと 何もかもすべて忘れたい。

          Une bise inoubliable

          Un cœur peureux

          気持ちを落ち着けるために文章を書いているはずなのに 書けば書くほど、あなたのことが好きになっていく。 まるで遠距離恋愛みたいに 「今は会えない時期だから、頑張らないと」なんて あなたに会えない悲しみを、無意味なポジティブさで抑え込んでいる自分がいる。 今日は「君に会いたい」と言ってくれる人に会った。 私は相変わらずあなたが好きだから、彼のことは愛してないけど。 きっと彼のこともまた失って、後で彼の素晴らしさに気づくんでしょう。 私はいつ、こんな人生を選んだ

          Un cœur peureux

          Un homme et une femme

          元婚約者に連れてこられた外国の寒い街で、たくさんのものを失って スターバックスで泣きながらあなたへの手紙を書いていたとき 声をかけてくれたのが彼だった。 フランス語の読めない彼は、私が書いていた手紙の内容なんて知る由もなかったけど 私の悩みを真摯に受け止めて、笑いとばして、励ましてくれた。 「上と前をむいて、歩かないと」 彼の話すカタコトの日本語は、不思議と心に突き刺さった。 次の週末は近所のブルワリーでふたり、酔いつぶれるまで飲んで その翌週は彼の家で、ラー

          Un homme et une femme

          Un métro de minuit

          モントリオールはマイナス五度。 時刻は夜十時を回ったところ。 家路へ急ぐ人々の群れに、ひらひらと雪が舞いおちる。 自分の不甲斐なさと疲れで、もやもやしながら眺める何もない車窓。 あなたの最寄駅まであと少しのところで、急にメトロが止まった。 別の列車でドアのトラブルがあった、とフランス語のアナウンス。 車両に閉じ込められた人々の、疲れ切ったため息と重い空気。 あとどのくらいこの状態が続けば、 あなたの家に立ち寄る口実になるのかな。 うつむいたまま、またあなたの

          Un métro de minuit

          Une lettre pour mon bébé

          あなたを失ってから、ひとりの人と出会ったけれど 私には、彼を愛する勇気がない。 彼からの「今日も君を想っていた」「君に会いたい」なんてメッセージを見るたびに 胸が張り裂けそうになる。 スターバックスで声をかけられて、意気投合した他の人とは 何でも話せる親友になれると思っていたけど 向こうはそれ以上の関係を求めていて、つらくなってしまった。 人生ってこんなにも、うまくいかないものなのかな。 あれからの私は、幸せな未来を夢見て あいかわらずあなたのことも恋しく思

          Une lettre pour mon bébé