埃及

言語が好きな人類学専攻。得意だとは言ってない。 好きな食べ物は唐揚げ。給料は唐揚げでも…

埃及

言語が好きな人類学専攻。得意だとは言ってない。 好きな食べ物は唐揚げ。給料は唐揚げでもらいたい。

マガジン

  • アラビア語RTA

    アラビア語の勉強をしていた時の記録です

  • ロマンスはカイロにて

    大学3回生の冬休み。寒さの厳しいアレクサンドリアを脱して、暖かなダハブへの逃避行をした。そこでの出会いと束の間の日常を描く。

  • イスラム教との邂逅

    エジプトに住み、イスラム教に触れる中で考えたことをゆるく書く。厳密な考証は行っておりません。

記事一覧

道標

思い出なんて、今は、誰にも話したくない。それでも、どこかに書いておきたい。 目の前の状況がさっぱり理解できない。本当に意味がわからない。点と点が全く線を結ばない…

埃及
3週間前
7

えっ、私がバーで働くんですか!?完結編

同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。たった1日働いた話を結局一万字程度書いた自分に驚いています。しかしながら、想像以上…

埃及
4週間前
11

えっ、私がバーで働くんですか!?客来た編②

同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。普段働かなすぎて、全てが新鮮に映った結果、たった1日働いた話でもうすでに6000文字程…

埃及
1か月前
12

えっ、私がバーで働くんですか!?客来た編

同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。冒頭はこちらから。 注文を取らなければならないという事実に戦々恐々としていた。よ…

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1か月前
8

えっ、私がバーでバイトするんですか!?開店準備編

同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。冒頭はこちらから。 店に入る。あたりを見回す。1度来たことがあったが、改めて見ると…

埃及
1か月前
15

えっ、私がバーでバイトするんですか!?

同居人から、唐突に告げられた。 「明日バイト入れる人知らない?人がいなくてさ。」 同居人のバイト先は、バー。それもオーセンティックバー。一度冷やかしに見に行った…

埃及
1か月前
14

選手宣誓のようなもの

日本軍は第二次世界大戦で、真珠湾攻撃を仕掛けしました。それはどうしても勝ち目のない戦争でした。局地的には勝利を続けましたが、兵站が伸び切ったタイミングで、徹底的…

埃及
1か月前
3

ときどきときめき

2023年6月23日。久しぶりにギターを弾いた。今滞在しているカオサンのホステルに偶然置いてあったのだ。まあ、弾いたと言っても別に私はギターが得意なわけでもなければ、…

埃及
2か月前
6

「教養」嫌い

先日、本屋に行くと、「本物の教養を身につけるには」とか「教養を学ぶ意味とは」といった毒にも薬にもならないような本が積み上げられていた。この手の本の中身は、まるで…

埃及
2か月前
7

友人とタクシーに乗っていた。そのうちの一人が

「有給使って、6連休にしたんだ〜」

と言った。私は以前、一年半休学するという記事を書いた。一年半というとそうでもないけど、これを日数に換算して、547連休と言うと、とんでもないダメ人間になったような気がする。実際そうなんだけれども

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2か月前
2

旅のはじまりと、インターネットカフェ

小学校の同級生たちとの旅行を終え、福岡のネカフェに泊まることにした。私だって、ネカフェのような閉塞された空間に宿泊したくなんかない。ありとあらゆる人間たちが、こ…

埃及
2か月前
5

孤独を泳ぐ

『52ヘルツのクジラたち』を読んだ。大学が大分にあることもあって、とり天やら、ゆめタウンといった、小説の中で描かれるモチーフに親近感を持った。作品の中で、余所者に…

埃及
2か月前
6

暴力革命

課題に追われる日々の中、ふらふらとYoutubeの海を彷徨っているとある動画に出会った。そこでは、若者が左翼的な活動に傾倒している様子が映されていた。 「資本主義を打…

埃及
3か月前
12

手さぐり

私が通う大学には、4月にちょっと狂った催しがある。曰く、新入生を集め、1ヶ月間で論文を書かせるというものだ。一回生たちはグループに分かれ、リーダーと呼ばれる指導者…

埃及
3か月前
9

大学4年生、休学する

必要な書類を抱えて、大学のオフィスへと向かう。普段は入らない場所へと入っていく。なんだか変な気分だ。まだ最終レポートがいくつか残っているし、卒論も書いている途中…

埃及
3か月前
13

電話

赤黒い液体が壁に飛び散ったような写真が高校時代の友達から送られてきた。 「もう死にます。探さないでください」 精神にある種の問題を抱えているような友達からこんな…

埃及
3か月前
9

道標

思い出なんて、今は、誰にも話したくない。それでも、どこかに書いておきたい。

目の前の状況がさっぱり理解できない。本当に意味がわからない。点と点が全く線を結ばない。何をしていても、何もしていないような気分になってくる。全てのことは風のように体を通り抜けるばかりで、それ以上何も影響を及ぼさない。

どうやら、恩師が亡くなったらしい。

どうしても理解できない。友人から連絡があったが、それを理解するこ

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えっ、私がバーで働くんですか!?完結編

えっ、私がバーで働くんですか!?完結編

同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。たった1日働いた話を結局一万字程度書いた自分に驚いています。しかしながら、想像以上に長くなった連載もここまで。意味もあんまりよくわからない駄文にお付き合いいただきありがとうございました。冒頭はこちらから。

団体客が帰っても、忙しさはしばらく終わらない。グラスを下げて、洗い、そして磨く作業があるからだ。ほっと一息つく暇

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えっ、私がバーで働くんですか!?客来た編②

えっ、私がバーで働くんですか!?客来た編②

同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。普段働かなすぎて、全てが新鮮に映った結果、たった1日働いた話でもうすでに6000文字程度書いている自分に驚いています。冒頭はこちらから。

ウェルカムドリンクを運び終え、バーカウンターの中へと戻った。とは言っても洗い物などはまだない。すると、ひと組のお客さんが来た。中年のカップルだか夫婦で、非常にご機嫌だった。ひょっと

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えっ、私がバーで働くんですか!?客来た編

えっ、私がバーで働くんですか!?客来た編

同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。冒頭はこちらから。

注文を取らなければならないという事実に戦々恐々としていた。よく考えててみてほしい。アルコールに弱いがために、あまり酒に詳しくもない人間が的確に酒の注文を取ることができるのだろうか。できるわけがない。あゝこんなことなら、もう少し酒について知識があったらよかったのに。

「ないものはない」というのはも

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えっ、私がバーでバイトするんですか!?開店準備編

えっ、私がバーでバイトするんですか!?開店準備編

同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。冒頭はこちらから。

店に入る。あたりを見回す。1度来たことがあったが、改めて見るとその荘厳さに驚いてしまう。さまざまな人間のさまざま人生が交差し、そしてまたそれぞれの生活へと戻っていく。オレンジ色の優しい光と、古い洋画を映し出すブラウン管テレビ、真っ赤でふかふかな回転椅子に、人の思いが詰まったバーカウンター。この場所

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えっ、私がバーでバイトするんですか!?

えっ、私がバーでバイトするんですか!?

同居人から、唐突に告げられた。

「明日バイト入れる人知らない?人がいなくてさ。」

同居人のバイト先は、バー。それもオーセンティックバー。一度冷やかしに見に行ったことがあるが、マスターはジャケット、バイトもワイシャツにベスト、蝶ネクタイという出立だった。バーカウンターの後ろの壁には何やら高そうな酒が所狭しと並べられていた。

そんな雰囲気むき出しのバーで急遽1日だけバイトできるような友達を私は一

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選手宣誓のようなもの

選手宣誓のようなもの

日本軍は第二次世界大戦で、真珠湾攻撃を仕掛けしました。それはどうしても勝ち目のない戦争でした。局地的には勝利を続けましたが、兵站が伸び切ったタイミングで、徹底的に分断されました。よくある手法です。それ以前の戦争の影響もあり、人員も物資も慢性的に不足している中、戦争が開始されました。

それは、悲惨な、末路をたどりました。多くの人が死にました。多くの若者が死にました。なぜこんなことが起こってしまった

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ときどきときめき

ときどきときめき

2023年6月23日。久しぶりにギターを弾いた。今滞在しているカオサンのホステルに偶然置いてあったのだ。まあ、弾いたと言っても別に私はギターが得意なわけでもなければ、きちんと弾けるわけではない。ただただいくつかのコードを鳴らすことができるだけだ。

昨日の続きが今日で、今日の続きが明日で、日々の境界が溶けていく日々の中で、何かを求めていた。「BABY BABY」「夢で逢えたら」「少年少女」を手始め

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「教養」嫌い

先日、本屋に行くと、「本物の教養を身につけるには」とか「教養を学ぶ意味とは」といった毒にも薬にもならないような本が積み上げられていた。この手の本の中身は、まるで生成AIにでも書かせたかのように内容が均一で、とても教養のある著者が書いたようには見えない。そんな本には興味はないので、目当ての本を探しに行く。レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』だ。

言わずと知れた古典的名著。しかし、『悲しき熱帯』はおろ

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友人とタクシーに乗っていた。そのうちの一人が

「有給使って、6連休にしたんだ〜」

と言った。私は以前、一年半休学するという記事を書いた。一年半というとそうでもないけど、これを日数に換算して、547連休と言うと、とんでもないダメ人間になったような気がする。実際そうなんだけれども

旅のはじまりと、インターネットカフェ

旅のはじまりと、インターネットカフェ

小学校の同級生たちとの旅行を終え、福岡のネカフェに泊まることにした。私だって、ネカフェのような閉塞された空間に宿泊したくなんかない。ありとあらゆる人間たちが、この狭い空間でし得るすべてのことをしてきた歴史のある部屋に、果たして安らぎなどあるのだろうか。怨念やら、執念やらは漂ってそうだけれども。

祭りが終わった翌々日は(翌日は片付けがある)、大きな虚無感と寂しさに悩まされるように、旅行の終わりもま

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孤独を泳ぐ

『52ヘルツのクジラたち』を読んだ。大学が大分にあることもあって、とり天やら、ゆめタウンといった、小説の中で描かれるモチーフに親近感を持った。作品の中で、余所者に干渉しすぎる、田舎特有の空気感が描き出される。

私が住むこの街では、まだまだ他人に関心を払う。例えば温泉に入るときは、先に入っている人に挨拶をしたほうがいい。こうすることで、地元のおじさんたちは話しかけてくれるようになる。「他人の家の風

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暴力革命

課題に追われる日々の中、ふらふらとYoutubeの海を彷徨っているとある動画に出会った。そこでは、若者が左翼的な活動に傾倒している様子が映されていた。

「資本主義を打破する」

打破、ダハ?その文字列の音の響きが、あまりにもしっくりこないものだから、思わず声を出してしまった。いまだにそんなことを真面目に言っている人がいるのか。60年代の若者が、革命という言葉にロマンを感じ、大学を占拠していたよう

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手さぐり

私が通う大学には、4月にちょっと狂った催しがある。曰く、新入生を集め、1ヶ月間で論文を書かせるというものだ。一回生たちはグループに分かれ、リーダーと呼ばれる指導者のもとでテーマごとに論文を書く。テーマの内容は多岐にわたる。リーダー(2回生以上)が興味のあるテーマを事前にある程度リサーチし、読むべき本や論文を収集して一回生とともに探求していく。

私は今年そのリーダーをやってみようと思っている。一つ

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大学4年生、休学する

大学4年生、休学する

必要な書類を抱えて、大学のオフィスへと向かう。普段は入らない場所へと入っていく。なんだか変な気分だ。まだ最終レポートがいくつか残っているし、卒論も書いている途中だ。このタイミングで、本来なら就職するタイミングで休学なんてどうかしている。

休学理由書を必要もないのに5000文字も書き、30000円の印紙を買って、必要な書類に必要な情報を記入した。あとはこれを大学に提出するだけで休学ができてしまう。

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電話

赤黒い液体が壁に飛び散ったような写真が高校時代の友達から送られてきた。

「もう死にます。探さないでください」

精神にある種の問題を抱えているような友達からこんなメッセージを受け取ったものだから、私はびっくりして、2秒後には電話をかけていた。

「お前どうしたんだ!」
「ん、あ、これ?ビーフシチューこぼした。」

心配を返しなさい。曰く、コンビニで売っているビーフシチューを開封しようとしたところ

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