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【無料公開中】Vol.02「やさしいB2Bブランディング講座」

目の前の、顧客の課題、第一に。
おはようございます。クリエイティブディレクターの矢野まさつぐです。

今回は「やさしいB2Bブランディング講座」の第2回目にして、いきなりB2Bと関係ない話からスタートしますw

ネット時代の現代では、予め卸は通さずにECで販売することを前提に作られた「D2C」というビジネスモデルがあります。D2Cは「DirecttoConsumer」の略なので直訳すると「直接販売」

昔からあるメーカーが消費者に直接販売する、「メーカー直販」との大きな違いは、購入後の顧客との関係性です。

「メーカー直販」は、乱暴に言うと「売って終わり」のビジネスモデル。一方、D2Cは、ネット上で消費者に直接販売するので、売り手の手元にリードと言われる顧客情報が残ります。ですから、売った後も顧客に対して様々なアプローチをすることができる、という仕組みなので、一度購入してくれた人の好みに合った商品の提案や、お役立ち情報とセットで新商品の連絡をすることができます。

今はこれをAIが効率的にやれるようになってきていますし、D2Cブランドからの提案は、「欲しいものを先回りして提案してくれる」と、消費者にとっても願ったり、かなったり...だといいのですが、そこはブランド側も商売なので、ついやりすぎてしまい、「必要以上に連絡がくる」「しつこい」などと思われてしまうことも多々あり、なかなか難しいのが実情です。

ちなみにメルカリやヤフオクなどの「消費者間取引」は、
C2C(ConsumertoConsumerの略)と言います。

D2CやC2Cなどの直接取引のビジネスの鍵を握るのは、インスタやTikTokなどのSNSだということは、皆さんもご存知かと思います。ですが、ここは残念ながらボクの専門外なので、触れずに先に進みます。すみません。

今日、お話ししたいのは、前述の、特にD2Cのビジネスを展開する企業さまが、ファンをしっかりつけて売上が安定してきた頃に、従来のブランドのように企業間取引を始める、というパターン。

このコラムの第1回目を読んでくださった方は、お気付きかもしれませんが、前述のD2Cブランドの進化は、D2Cをやりながら「B2Cの一つ手前のB2B」の機能を追加する、ということになりますので、今までにはなかった課題が、次々に勃発することが予想されます。

一番の課題は、「どこを向いて仕事をすればいいのか分からなくなる」ではないでしょうか。

そもそも利益率の高い直接取引で売上を上げているのに、なぜわざわざB2Bをやるのか、と思った方もいるかもしれませんが、やはりD2Cは、利益率が高いのは良いのですが、回転を止めることができないので、発信活動と販売活動のリソースとの戦いになります。

そんな感じでファンが突き出して、軌道に乗りつつあるけれど、万年リソース不足で悩んでいるところに、上手いこと代わりに売ってくれる人が現れて「うちで取り扱いをさせて欲しい」と言ってきたりします。

予め、卸に展開することを視野に入れているD2Cブランドは、上代設定から原価率を計算していると思いますが、多くのD2Cブランドは、「中間業者を通さないから高品質でも低価格」を売りにしているので、(利益率が合わないため)卸の話には、そのままでは乗れずに、別商品や別ブランドを立ち上げることになります。ちなみに、卸(つまりB2B)をする場合、上代の2〜3割に製造原価を収める必要があります(100均など低価格商品は物によりますが4割近くが原価です)。

この辺りからも分かる通り、B2BとD2Cでは、ビジネスの構造だけでなく、プライシングに対する考え方にも大きく違いがあります。そしてそこで生まれるのが、前述の通り、社員さんが「どこを向いて仕事をすればいいのか分からなくなる」問題の勃発です。

なので、ボクは個人的には、D2CブランドがB2Bに参入するのは難しいと思っていますので、事業拡大の舵きりを「B2Bへの参入」にしない方がいいと思っています。

ここまでは、皆さんも納得してもらえていると思います。「そりゃそうだ」ですよね。

実は、ここからが本題です。本題短いので、もう少しお付き合いください。

今日皆さんにお話ししたいのは、前述のパターンの全く逆で、B2B企業がD2Cビジネスへ参入!の場合の注意点です。

これは、B2Bブランディングを約10年やってきている中で、ちょこちょこ相談があり、実際にブランディングのお手伝いをさせていただいたこともあり、いい部分も、難しい部分も見てきました。

結論、「こっちも難しい!」です。

ボクらが見てきた難しさは下記です。
・プロダクトアウトの文化が強く、顧客起点での商品開発がスムーズに進まない
・どこを向いて仕事をすればいいのか分からなくなる(D2C→B2Bと同様)
・顧客との距離が近いのが嬉しくて、顧客の声を聞きすぎる
・D2Cは、B2Bに比べて顧客単価も、売上額も小さいため、社内で揶揄される

最後のは、結構強烈で、ひどい時は「社内で新規事業が潰される」ということに発展します。

新規事業が、B2B企業の新たな柱に成⻑するまでは、相当時間がかかるかと思いますが、立ち上げ時に社内でのコンセンサス(合意形成)を怠ったばかりに、軌道に乗る前に内部が分裂して、せっかくの新規事業が経ち消えるというシーンも実際に目の当たりにしたこともあります。これは、ボクらの力不足もあったかと思うので、今でもとても申し訳なく思っており、悔しい思い出です。

と少しセンチメンタルな気持ちになりましたがw お伝えしたいのは、「直接取引」と「企業間取引」は、全くビジネスモデルが違うので、新規事業を立ち上げるときに、商材を変えずにマーケットを替えるという手法を選択するのは、現場が思っている以上に難しいですよ、ということ。

それなら逆に、マーケットを変えずに商材を変えた方がラクにビジネスができると思います。

例えば、「自動車部品をつくっている工場が、後継問題で困っているお弁当屋さんを買収して、取引先にお弁当の配達をする」みたいな話。「部品工場がお弁当やなんて上手くいくはずない!」と普通の人は思うかもしれませんが、しっかりブランディングすれば、絶対に成功すると思います。

なので、もしB2B企業さんで、何か新規事業を始めようかとネタを探している方は、既存のクライアントさんに、今抱えている課題を聞きに行ってはどうでしょうか。これが、マーケットを変えずに商材を替える戦法です。もしクライアントさんが、「ランチ難⺠問題」を抱えているなら、本当にお弁当屋さんは上手くいくかもしれませんよ!

あー、お弁当屋さんのブランディング、やってみたいですw!

もし前述のように何か新規事業を始めたいとお考えのB2B企業さまがいらっしゃったら相談に乗らせていただきますので、お気軽にご連絡ください。オンラインでよければいつでもお話を伺います。ボクの学びにもなりますので、もちろん無料です!

それでは、今日もピントのあった1日に!

矢野まさつぐは、「4つの質問でピントを合わせる」の著者であり、B2Bブランディング専門のデザインファーム、株式会社レンズアソシエイツの代表兼クリエイティブディレクターです。このnoteでは、経営者として、またクリエイターとして日々戦う中での学びを、惜しみなくリアルタイムで発信していきます!次の記事もお楽しみに!


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