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ロジカルにエモーショナる

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[エッセイ]役に立ちそうでギリギリ役に立たないエッセイです。
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記事一覧

偏愛するということ・ぼーちゃんの石

偏愛するということ・ぼーちゃんの石

自分の偏愛ってなんだろう?と考える時間が最近増えた気がします。

時間をいくらつぎ込んでも足りない、この時間がずっと続けばいいのにな、と感じる時間を思い出す。僕の場合には美味しいものを食べたり、銭湯で湯に浸かっている時間。

愛を注ぐことによって人は幸福を感じます。
子どもの時代にはまず人は愛を注がれることによって快楽や安心感を得ますが、成熟していくと人は愛することを通じて、つまり愛する行為の主体

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僕は父が嫌いだ

父のことがどうしても好きになれなかった。父とまともに会話をした覚えもここ数年ない。

いつから父のことを嫌いになったのだろうか。自分と父の間の錆び付いた楔のような記憶、それは小学校低学年のある日の自分の誕生日、母の手作りのチーズケーキを囲んでリビングで団欒していた時のこと、経緯は覚えていないが、父に怒鳴られ泣き出していた。多分その時父は機嫌が悪く癇癪を起こしたのだと思う、定かな記憶はないが、その頃

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春が来そうでこない寒い日々たち・希望的生活

春が来そうでこない寒い日々たち・希望的生活

こんにちは、寒い日が続きますね。

皆さんはこの寒い日々を含めた季節とどのように付き合っていますか?こうも寒くて雪すらちらほらする日々が続くと暖房器具って概ね生命維持装置ですね。

私もおそらく多くの方と同じように、寒いのは基本的にめっぽう勘弁しておくれ、という立場ではあるのですが、この春を予感させるような、寒い日々だけは嫌いになることができません。

季節というのはとても気まぐれで、いつも私を惑

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ここは誰かの小宇宙・他者寛容

ここは誰かの小宇宙・他者寛容

最近よく分からないけど、もやっとしていること。
「他人に対して共感することが良い」という価値観がなんとなく世の中にある気がしていて、それが少し気になります。家でテレビを見ることはないのですが、定食屋さんとかでふとワイドショーとか見ているととても強い違和感を持つようになりました。なんでだろう。

何かしらの意図された感情を、誰かから押し付けられているような感覚が、自分をなんかもにょっとした気持ちにさ

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祖父の本棚・本棚を育てる

祖父の本棚・本棚を育てる

祖父母の家を片付けにきたのは、今回で3回目。まだまだ終わりは見えず、最初は片付けを進めるたびに、かえってものが増えてきたような気がしていたが、ようやくものが減ってきた実感が生まれてきた。

祖父母の家で僕が片付けで担当をしていたのは、祖父の書斎だった。祖父の書斎には大きな本棚が構えられている。書斎はとても深く、広くて、長い時間をかけて熟成された香りがした。

終戦前の本など明らかに劣化していたもの

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暑中見舞い申し上げます・夏の球技

残暑見舞い申し上げます。

暑い日々が続きますね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

僕の方は、こうも暑いとじりじりと足先から溶けていって、身長がやや縮んでしまってはいないか、と心配な気持ちでいます。実際には縦に縮むのではなく、最近の自粛による(という言い訳で通している)多めの栄養摂取で横に広がっているわけですが。

こんな日に外に少しの間でも出ていようものならば、体の内側はからっからに、そして

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豊かな時代ですので・豊かさ再考

豊かな時代ですので・豊かさ再考

豊かさを考える、ないし考え直すということは、今この物質的な豊かさが飽和しつつあるこの日本社会で大事なことだと思います。自分自身の豊かさを手放してしまうときに、人間はどこまでいっても幸福にはなれなくなってしまう。

改めて「豊かさ」を考えるときに、何冊かの本が思い浮かびました。
今回は、種々の観点での豊かさに関する僕の心の師匠のご紹介をしていくことを通して、豊かさを考えてみようと思います。

1.暮

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家の中にいると生命を近くに感じる

家の中にいると生命を近くに感じる

今僕たちは、おうちで何もしないということを専らとしている。
人間が生きるということには、われわれが「活動」とともにあることが重要であることはアレントが述べた通りだ。
今、人間の活動というものがとても制限されていて、その中でこそ、僕らの生きるとはなんだったのか、ということがますます浮き彫りになってきたように思う。
家の中にいる、どうにも何かをしなければならない気持ちになる。一方で停滞する世界の中で、

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降雪を窓から・学びのあり方

金曜日から家にじっと暮らしているのだけれど、案外これが自分の性に合っていて、本を読んだり、映画やドラマをみてじっくりと過ごすことができています。誰かと何かを話すときには感染症の話ばかりになるし、メディアも記事もなにもかも一色になっているのを見るとそれ以外のことを書きたくなる。

そうなんだけど、ある種歴史の教科書に載るようなことに立ち会っているということでもあるので、なんとも微妙な感じ。危機感を感

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年明け・非合理の波の中へ

年明け・非合理の波の中へ

あけましておめでとうございます。昨年は格別のお引き立てをありがとうございました。初めましての方も、いつもふと見てくださる方も、ありがとうございます。世の中にはたくさんの意味ある物事に溢れていますが、僕の文章が小さくささやかなものだとしても、誰かの何かになっているような事がもしあれば、それはこの上ない幸福です。今年もどうぞよろしくお願い致します。

さて、久しぶりに元旦に初詣をしてきました。鎌倉は鶴

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「誰かと一緒にいないといけない」という嘘・好きを磨く

人よりも一人で生きるのが好きな人間であることに最近気がつきました。割とみんな誰かと一緒にいるのが好きなんですね。
SNSの時代では、SNSを誰と一緒に過ごしているか、を発信する使い方をする人が多いと思うのですが、僕はSNSを誰かと緩やかに繋がることにも使いつつも、基本的にはノートみたいに自分の生活の記録を残したり、情報をインプットしたりアウトプットしたりすることに使っている。僕にとっては、時々友人

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ロマンチック万葉・和歌山はじめまして

ロマンチック万葉・和歌山はじめまして

初めて和歌山を訪れました。ロマンチックな地であると和歌山城敷地内の碑に記されていましたが、まさにロマンチックな場所だというのがこの街に抱いた感想でした。この街で青春時代を過ごした人たちは爽やかで麗しい素敵な恋愛をしているのだろう、なぜかそんな感じがします。

和歌山という地名自体、とても麗しい感じがしますよね。もともと和歌の浦というこれまた美しい景勝地が地名の由来になっており、そこを訪れた、山部赤

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紫陽花は白めが良い・座禅の日

紫陽花は白めが良い・座禅の日

梅雨ですね。季節の巡りは振り返れば早いもので、季節がやってきたかと思えば、味わおうとした矢先にもう終わりですね、なんて言われてしまいがちなのだから、急いで季節を噛み締めようと、その裾先をひっつかむのが季節の終わりのいつもです。ご飯屋さんなどではもっぱら季節の食べ物ばかり頼んでしまうし、ケーキ屋さんになぞ行ったらば、「季節限定」の四文字の並ぶもの端から白い箱に詰め込んでくださいませと伝えてしまう次第

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ビルの上の月・孤独と『須磨の浦波』

ビルの上の月・孤独と『須磨の浦波』

あなたは月を見た時に何を思いますか?月に何かの思いを重ねたことはありますか?それは一体どんなものでしたか。

ビルの上にぽっかり浮かぶ月。闇の訪れの前、深い藍色が空をほんのひと時だけ鮮やかに染めている。僕は荻窪のビルにある銭湯で温泉に浸かりながら、衝立の上に燦々と止まっている月を眺めていた。

浸かっているのはナトリウム泉。しょっぱい湯に身体がポカポカと温かい。実のところ湯船に浸かるのは本日二度目

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