涼み客

NovelJam’ [dash] 2019 著者参加:ポートフォリオ

NovelJam’ [dash] 2019 著者参加となりました。嬉しいです。

今回は著者としてアピールすべく、ポートフォリオを作成しました。

◆noveldays

全部9月に書きました。

テーマ:【嘘】, リベンジ, 茨城県
狂った歯車(4,103文字)
https://novel.daysneo.com/works/616347e022889a583417baff972f9c6a.ht

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涼むためにわざわざ暑いところへ行こうって

駅前で手に取った 旅のパンフレット

君が僕の目をのぞき込んで

涼しそう、川床料理だってって

僕らには縁がないよ、だって

高そうだよって二人で笑った

でも僕はバイト増やした

君と二人で 京都の川床料理

わざわざ暑い夏に 暑い町へ行って

川床料理で涼もう 風流にきどって

熱帯夜の駅前通り 目にしみる汗を

ぎゅっと目をつぶって絞る

照明バルーンが360度 

24時間明るく 僕を励

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カッパ

「遠野に行きたい」

「どこか出かけようか」と母に聞くと、そう言われた。遠野とは、岩手にある河童の伝承地である。

「なんで?」

「だってカッパ、見たいじゃない」

そんなちょっと不思議な母の希望で、遠野にあるカッパ淵へやってきた。

カッパ淵には小川が流れている。湿気を含んだひんやりとした空気が漂い、薄暗くてなんだか不気味な場所。

カッパ捕獲許可証をもらって釣りができるらしく、キュウリを付け

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ウラジオより愛をこめて

極東ロシアの港町、ウラジオストクへ行かれたことはありますか?
東京からのフライト時間は2時間半、帝政ロシア時代の街並みが残る、日本に一番近いヨーロッパです。
真夏に訪れても気温も湿度も低く、まさに避暑地と呼ぶにふさわしい街です。この夏、私は涼み客の1人でした。

シベリア鉄道の始発駅、ウラジオストク駅で首都モスクワへ思いを馳せるもよし、鷲の巣展望台からウラジオストクの街を一望するのもよし。
マリン

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0015 《ひと夏の.》

恋なのかもしれない。

 2019年の夏。アメリカ西海岸にある、サンタモニカへやってきた。真夏でも25℃くらいの日が多くて、海を眺めながらお散歩するだけでも気持ちのいい街だ。すぐ近くのロサンゼルス中心地は、東京と同じくらいの暑さだったりするから、夏を過ごすのにほんとうに最高の場所。それでいて、陽射しは夏そのもので、ビーチも綺麗で、道沿いの椰子の木がバカンスにふさわしい景色をつくってくれている。気候

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明るい夜更けの夕涼み

「暑い、、。」タオル1枚、桟橋の突端に腰掛けた。右隣には先客。僕の母くらいの女性が目を閉じて風を楽しんでいた。「あら、いらっしゃい。ようこそ、特等席へ。旅行中?フィンランドは初めて?」と目を開けた途端、突然の涼み客へ質問のシャワーだ。「いや、2度目です。この前は仕事で来て、その、また来ちゃいました。」ぼかして言ってはみたが、実は取り返しのつかない失敗をして逃げ出してきた、のが実情。しばらく向かいの

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この湿度の高い国の避暑地で

夕暮れのテラス席でソフトクリームを食べる。高原の宿は大抵、ソフトクリームが名物だ。

空の、オレンジ色と薄紫が溶け合った部分をぼんやり見ていた。食べ終える頃には、名前を知らない山々がすっかりシルエットになっている。

「さて」

コーンを包んでいた円錐型の紙を小さくたたみ、ノートパソコンを開いた。

いろんなことが積み重なって、少しずつ息が苦しくなって。衝動的に、東京から逃げ出してしまった。暑さを

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涼み客

私は伯母を「茨城の魔女」と呼んでいる。

華奢なからだに黒や小豆色のワンピースをまとい、犬と2人暮らしをしている。
蜘蛛の巣すら生き生きと見える彼女の庭は、花木が雑然と絡み合っている。
そのくせ丁寧に計算された奥行があって、一つひとつが美しい。

真夏に彼女の家を訪ねると、ひんやりと涼しく暗い。
冷房はないけれど、庭の木々が作る影のおかげで室内は日光を知らない。

雑然としたキッチンで、魔女はお茶

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旅する日本語まとめ-エッセイとショートショート覚書-

旅する日本語、コンプリートしました。

noteで今年も「#旅する日本語」投稿コンテストを開催します。

ぶりぶりこさんと、
「これ、参加してみませんか?」
「書きました」
「ぜんぶ行っちゃいます」
みたいなノリで始めたのです。

対象作品は、400文字までのエッセイ、ショートストーリー、写真です。「旅する日本語展」で使われている、旅にまつわる美しい日本語を用いて、作品を制作してください。

テー

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愛しいほどの悲しみと。

「ねえ、旅がこんなに悲しいものだって、私、知らなかった。」

こちらを見向きもせず、ぽつり、と呟いた彼女の言葉は、目の前を流れる川に、吸い込まれるようにして落ちていった。

「どこか遠くへ行きたいんだ。昔みたいにさ、付き合ってよ。」

仕事を辞めた彼女が、学生時代と変わらず、明るく振る舞った声で、電話をかけてきたのを思い出す。

「どうして?楽しくなかった?」

「ううん、楽しかった。」
「田園の

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