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パリ軟禁日記 55日目 ロックダウン最終日に思うこと
2020/5/10(日)
単調で彩のないこの生活を、いつの日か懐かしく思い出すことができるのだろうか。
昼過ぎに、少し離れたアジア系食材のスーパーに買い出しに行った。扉を出る前に、スマートフォンに外出証明書をダウンロードする。もう明日からこいつを気にする必要がなくなるのかと思うと、心が軽くなった。一度ダウンロードしていないことに気づいて、冷や冷やした日もあった。明日から、好きな時間に外に出
パリ軟禁日記 54日目 解放を前に思うこと
2020/5/9(土)
何事にも終わりがある。あと1日で、長かった軟禁生活にも終止符が打たれる。
つまり、ここまで続いた軟禁日記も残すところ、今日含めてあと2回。50日以上も、毎日ある程度の量の日記をつけ続けたのは生まれて初めてだ。小学校の夏休みの絵日記だってこんなに長くはなかっただろう。毎年必ず日記の宿題があったはずなのに、僕はどんなことを書いたのかほとんど思い出せない。
まずは、こ
パリ軟禁日記 51日目 川に暮らす人たち
2020/5/6(水)
セーヌ川に暮らす人がいる。川沿いの眺めのいい部屋で、という意味ではない。文字通り、川に船を浮かべて暮らしている人たちがいる。
今日は数日ぶりの快晴だった。ランニングの途中、侵入禁止のテープが風で飛ばされた箇所から、セーヌ川に降りて行った。ふと左手を見ると、日本の集合住宅で見かけるような郵便受けが置いてある。嗚呼、そうか。ここにも人が住んでいる。人影は見えなかった
パリ軟禁日記 48日目 昼からシャンパンを飲むのが適切だと思った。
2020/5/3(日)
昼から、思いつきでシャンパンを開けてみたくなった。
日曜日だし、近所のフレンチの持ち帰りランチを頼んでいたし、そうするのが適切な行いのような気がした。天気は曇り。くさくさした気持ちを吹き飛ばすのにも悪いアイデアではないだろう。
去年から冷蔵庫に眠っていたシャンパン。「いつか特別な日に開けよう」と思っていても、その日はなかなか訪れないものだ。まして昨今の状況を考える
パリ軟禁日記 45日目 まだ見ぬ本の世界
2020/4/30(木)
今日の天気は曇り時々雨。まだ見ぬ世界を夢見る、アンニュイな一日。19時になると運動のための外出ができるようになるのだけれど、同時刻、大雨が降り出した。気温も低い。降り止むのを待ってランニングをするとしたら、夕食が遅くなってしまう。今週は調子も良くないし、休むことにしよう。
そういうわけで、今日は一歩もアパルトマンから出なかった。せいぜい数百歩しか歩いていないだろう
パリ軟禁日記 44日目 耐えろ、ダウンヒル
2020/4/29(水)
人生にはやはり、勝負事につきものの「流れ」というやつがあると思う。
今の自分の調子は下り坂なのを感じる。ここ数日がそうだ。なかなか底を打たない。スポーツで例えるならば、一つの試合、もしくは一年のシーズンの中で必ず訪れる苦しい時間帯。これまでのやり方が急に上手くいかなくなり、心が焦り、モチベーションが下がる。そのためか、小さなミスが発生し、自信までぐらつく。
そ
パリ軟禁日記 43日目 「ウイルスと共に生きる」〜外出制限緩和プラン〜(フランスver.)
2020/4/28(火)
本日15時、国民議会にてエドゥアール・フィリップ首相による外出制限緩和についての計画発表があった。僕たちの今後数ヶ月に大きな影響を持つ談話だ。
そういうわけで、僕は仕事をそっちのけでTVをつけた。同僚とのグループチャットを見る限り、皆この時間はテレビかラジオに耳を傾けていたようだ。
以下、要約:
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基本方針として「
パリ軟禁日記 42日目 春の雨に僕は髪を切った。
2020/4/27(月)
昼過ぎから滝のような雨が降り注ぐ天気だった。 空には少し晴れ間が見えつつも、半刻ほどだろうか、容赦なく大粒の雨が降りつけた。みぞれも少し混じっていた。雨が止んだ後、開けっ放しの窓からは濡れた街の雨の匂いがした。久方ぶりのこの匂いが懐かしくて、少し心が落ち着いた。
Le mariage des renards – キツネの嫁入りという単語をフランス語にするとこうなるだろ
パリ軟禁日記 41日目 それでも、ハラは減る
2020/4/26(日)
街中を駆けていると、春から夏にむけて少しずつ季節が動いていることがわかる。
2週間前は葉がまばらだった街路樹は、今や青々とした葉を繁らせている。公園の近くの花壇には色とりどりの花が咲く。速度が遅くなっているのは人間が営む経済活動だけで、地球は回れば他の生物たちの営みは変わることがない。
僕の生活の速度も今遅くなっている。ここ数日は特にやる気が出ない。そういう日は生き