飯田彩乃
記事一覧
飯田彩乃第一歌集『リヴァーサイド』刊行のお知らせ
自選五首(帯裏)
雨音ももう届かない川底にいまも開いてゐる傘がある
触れてゆくそばから指が泡になる君はどこにもゐない人だな
埋み火を胸に宿して眠り込む百年はながいながい熱(ほとぼ)り
輝きをすこし遅れて連れてくる川の蛇行は微笑みに似る
向かふ先をゆくべき道と思ふこと戦野あらたな光を焚いて
328首収録/四六版208ページ
栞文 伊藤一彦/東直子/服部真里子
帯文 黒瀬珂瀾
装幀 柳川貴代
(い
大口玲子『自由』書評
近年、特に『トリサンナイタ』以降コンスタントに歌集を刊行している大口の第七歌集。本書にて第四十八回日本歌人クラブ賞を受賞している。
本書は「まえがきにかえて」という言葉を添えた「風のごとくじぶんは」という自己紹介の一連から始まり、平成以降の大口の歩みをまず見せてくれる。
詞書に二〇〇六年、二〇一一年とある二首。「風のごとく」という章題は自由の象徴とも言えるような風にみずからをなぞらえたかに
終わりへと挑む~岡井隆『鉄の蜜蜂』解題
『鉄の蜜蜂』は二〇一八年一月に角川書店から刊行された第三十四歌集。生前最後に出された歌集となる。黒一色の表紙を、斜めに裁断された白そして黒のカバーが違いちがいに覆い、その上にタイトルがくすんだ金色で箔押しされている。帯はなく、その横には本書を「甘美なる挑戦状」とする煽り文が印字されており、装幀の重厚さも相まって手にするだけで緊張感を生む歌集となっている。
本歌集は二章構成であり、Ⅰ章は歌誌「未
生と死のあわいにて響く~岡井隆『暮れてゆくバッハ』解題
『暮れてゆくバッハ』は二〇一五年七月に現代歌人シリーズの六冊目として書肆侃侃房から刊行された歌集。歌誌「未来」および短歌総合誌や雑誌に掲載された作品を中心に、未発表の作品も含めておよそ編年体になっている。
近年注目を集める出版社が力を入れて展開するシリーズの一冊としての刊行であり、新たな読者の出会いを意識したものか、これまでの歌集にはない特色が見て取れる。「花と葉と実の絵に添へて」の章などはそ
しんとあかるい〜小林久美子『アンヌのいた部屋』書評
歌集を手に取ったときにまず驚いたのは、その風体の軽さだった。空気のようだ、と思いながら砂の色の表紙を明かりの元で傾けると、黒の箔押しで記された書名と作者名が硬質的な輝きを帯びてきらりと光った。
導かれるようにして、歌集を開く。歌は、三行書きか四行書きになっていて、見開きに四首。五七五七七のリズム通りではなく、あくまでも言葉が切れるところで改行がなされている。
とうめいな器と真水
くも
掲載情報(2015〜)
2018
「歌壇」2018年1月号 平成30年を迎えて「或夜」8首、エッセイ「平成の三十路」
角川「短歌」2018年6月号 新鋭14首+同時W鑑賞プラス1「すべからく」14首
2017
「短歌研究」2017年2月号 相聞「長い眠り」7首
「歌壇」2017年6月号 私の時間術エッセイ「幾重にも時間を」
2016
「歌壇」2016年2月号 第二十七回歌壇賞受賞作「微笑みに似る」30首
うた新聞2
はかなき寄辺をはなれて〜大辻隆弘『景徳鎮』書評
前歌集『汀暮抄』から五年、大辻隆弘の第八歌集『景徳鎮』が刊行された。一見平明にも思える歌のかずかずをよく見てみれば確かな技巧が幾重にも重ねられており、深みを増した文体とともに独自の境地へ辿り着こうとしているようである。
五十代後半の茂吉について思いを巡らせたり、その茂吉の本歌取りをしたりと、どこか自身の年齢を意識している印象のある本歌集であるが、背景としてやはり死を前にした父の姿があるだろう。
2016年の記録〜出産編〜
【はじめに】
これは自分のための覚書になります。目まぐるしい日々だったので書き留めておこうと思いました。妊娠編の続きになります。当然ですが生々しい話題なのでご注意ください。
【あらすじ】
はじめての出産、予定日は9月29日だったのに10月になっても生まれる気配がない。
【誘発分娩へ】
初産は遅れるって言うしね〜とか、お母さんのお腹の中が居心地良すぎて出てきたくないのよね〜とか言われながら
2016年の記録〜妊娠編〜
【はじめに】
これは自分のための覚書になります。あまりに目まぐるしい日々だったので、文章の体裁などは二の次にしてとにかく書き留めておこうと思いました。時期的には妊娠初期から出産直前までです。
【発見まで】
2016年1月。歌壇賞受賞にまつわるあれこれ、及び月の半ばに控えている結婚式の準備もすすめていて、人生でこんな風に忙しいことってないんじゃあ…と思ってたんですけど、まだ上があるとは思ってい