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27.引っ越し先は料理人の家だった!

ネット環境すらない人里離れたB&Bを出ていくにあたり、数少ないタオルミーナの知り合いたちに空き部屋探しを打診しました。
外国人がいきなり部屋を貸してくれと言っても簡単に事は運ばないでしょう。
やはり知り合いを介して話を進めるのが良策、イタリア式クチコミの世界です。


大家さんは女料理人

6月下旬から7月初旬の1週間ほど、東京でどうしても外せない仕事があったので一時帰国しました。

そして再び、東京~ローマ~カターニアを飛び、今度は空港から直接、高速バスでタオルミーナへ。
この時点でまだ部屋は決まっていません。
アパート探しをお願いしていた人のところへ直接、訪ねて行ったのです。

その人はタオルミーナの目抜き通りのバールで働いていました。
バスターミナルからスーツケースをガラガラと押してそのバールへ行ったら「いい物件が見つかった!」と、さっそくある人を紹介してくれました。

タオルミーナにあってキッチンが使える部屋……これが私の条件です。

知人が紹介してくれたのは、彼の働くバールの女料理人でした。
ちょうど空いている部屋があるので、9月末まで貸してくれるというのです。
しかもこの日は週に1度の休日で家にいるというので、そのまま、またスーツケースをガラガラ押しながらタオルミーナの坂道を上っていきました。

そして部屋を見せてもらい、その場で即決。
その部屋には素晴らしいキッチンがあったのです。

窓から海とエトナ山の見える部屋

部屋のカギをもらって、さっそくこの日から入居することになりました。

キッチンはオレンジ色のキャビネットでまとめられたもので、それは彼女がお嫁入りした当時のもの。
彼女のお嬢さんが結婚してしばらく使っていたけれど、今は新しいものを揃えたので再びこの部屋に置くことになったそうです。
大切な思い出のキッチン、私も大事に使わせてもらおうと思いました。

部屋の窓からの眺めも素晴らしかったです。

左には海が広がり、右にはタオルミーナの上の町カステルモーラの全景を臨むことができます。
タオルミーナの下の町ジャルディーニ・ナクソスも見渡すことができました。
夜になると町の明かりが灯るので夜景もきれいです。
そして、ほんの少しですがエトナ山も見えて、この時はちょうど噴火中で夜は流れる溶岩が赤く輝いて美しかったです。

とにかく、私にとっては願ってもいない理想の部屋。
ギリギリまで粘って良かったなぁと本当に思いました。

毎日がシチリア料理教室

その家はタオルミーナからカステルモーラへ向かう通りに面していて、建物自体が崖に張り付くようにして造られていました。
3階建てだったのですが、中ではなく外にある階段を上ってそれぞれのフロアのドアから中へ入ります。
女料理人とホテルマンのご主人が3階に住んでいて、私に2階部分を貸してくれたのです。

女料理人はランチタイムだけ仕事をして、たいてい午後4時とか5時ごろ家に戻ってきました。
基本、やることのない私はいつも家にいます。
そこで、彼女は2階の私のドアの前を通るたびにコンコンとノックして、帰ってきたわよ、夕ごはんを食べにいらっしゃいと言うのです。

この大家さんファミリーが本当に良い人たちで、ただの間借り人という関係を超え、まるで本当の娘のように受け入れてくれてありがたかったです。
たまに訪ねてくる息子も交えて週の半分は4人で夕ごはんを食べていました。

そして、彼女と一緒に料理をすることも徐々に増えていきます。
さまざまなシチリア料理のレシピや食材の扱い方を教えてもらいました。
それは今でも私のイタリア家庭料理のベースになっています。

シチリアの新鮮な野菜やフルーツ
ナスを揚げてつくるパルミジャーナは茹で卵入り
レモンの葉っぱのハンバーグ
全ての野菜を別々に揚げて仕上げるカポナータ

住む場所も決めずにタオルミーナに着いた時はどうなることか不安しかありませんでした。
でも、こうして素晴らしい出会いに恵まれ多くの学びを得ることができたので結果オーライです。

そして、ここから念願のお寿司づくりプロジェクトが本格的に始まります。

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