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不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #011(1章-11) 兌換通貨・金銀の価値は本当に信用できるのか/第一章のまとめ
兌換通貨・金銀の価値は本当に信用できるのかそもそも兌換通貨の裏付けとして信頼されている金銀の価値というものは、はたして本当に信頼に足るのだろうか。経済学者のアダム・スミスとカール・マルクスは、ともに金銀の価値変動について次のように語る。
裏付けがあって信頼に足るものとして兌換通貨を語り、その裏付けができなくなったために仕方なく使用されているのが不換通貨だろうと考える人たちも居る。しかし金銀もま
不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #010(1章-10) 通貨を生んだ「お返し」の気持ち
通貨を生んだ「お返し」の気持ち『返報性の原理』という心の働きがある。「お返ししたい」という欲求だ。助けられれば助け返そうとし、攻撃されれば攻撃し返そうとする。この心の動きは、人間はもちろん、犬、猫、猿、鳥、その他に至るまで持ち合わせている原始的な感情だ。
文字や数字を生み出す以前から、人間は「記憶」の中で「恩」と「恨み」をカウントしている。先に何かをもらったら、次は何かを与えようとする。先に何
不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #009(1章-09) MMTは通貨の何を勘違いしているか
MMTは通貨の何を勘違いしているか「MMT現代貨幣入門」(L・ランダル・レイ)には、「全ての金融資産には、同類の、その裏返しとなる金融負債が存在することは、会計の基本原則である。」と書かれている。
ところがこれはまったく間違いなのだ。
日本証券業協会は「金融資産」を『現金・預金・有価証券・貸出金などの形で保有する資産』と説明している。このうち、預金は預けた相手にとって負債であり、貸出金は貸し
不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #008(1章-08) 不換通貨の価値の源泉
不換通貨の価値の源泉原価数十円の紙切れを一万円の価値の通貨にするのが不換通貨発行である。
ではいったいどこからこの不換通貨が持つ「購買力」、つまり価値が生じたのかというと、国が通貨を発行する際に発生する利益、「通貨発行益」がその財源になっている。
これは負担者(通貨の利用者)から見れば、既存の通貨の購買力が低下する、いわゆる「インフレ税」によってその購買力が徴収され、新たな通貨が生み出された
不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #007(1章-07) 通貨の発行上限/通貨発行益
通貨の発行上限兌換通貨と不換通貨でそれぞれの通貨の発行上限は何によって定められるのだろうか。結論から言えば、「兌換通貨」の安全な発行上限は、「発行者の財産」に依存する。
そしてもう一方の「不換通貨」の安全な発行上限は、「市場の商品・サービス」に依存する。これについて、少し詳しく見ていこう。
兌換通貨の発行上限
兌換通貨の場合には、通貨の発行者が兌換してくれるもう一方の物品・商品(たとえば金
不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #006(1章-06) 不換通貨の「源泉」
不換通貨の「源泉」経済学者コーリン・クラークによる古典的な産業分類によれば、人間社会は、経済・産業の発展につれて、農業など自然界から収穫を得る仕事から、加工業、サービス業へと広がっていく。
以下に、コーリン・クラークの古典的な産業分類を紹介する。
《第一次産業》
近代まで、人は価値ある資源が採取できる場所を中心に生活していた。海産物が採れる水辺に、水田が作れる平地に、木材が採れる森に、人が
不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #005(1章-05) 兌換通貨は「物品の預かり証書」/不換通貨は「物品の預かり証書」ではない
兌換通貨は「物品の預かり証書」ここでもう一度、兌換通貨とはいったい何なのか考えてみよう。
兌換通貨は基本的には「物品の預かり証書」のことだ。たとえば日本銀行兌換券は、準備金である正貨が日本銀行に保管されているが、その所有者は日本銀行ではなく兌換紙幣の所有者である。そのため日本銀行にとって、金庫にある「金(きん)」は所有者からの預り金、いわば借り物に過ぎない。そのため、兌換紙幣は日本銀行が発行し
不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #004(1章-04) MMT・租税貨幣論は正しいか
MMT・租税貨幣論は正しいか最近よく耳にする現代貨幣理論、いわゆるMMT(Modern Monetary Theory)においては、裏付けのない通貨の通用力を保証するのは税の存在であるという考え方が一般的になっている。
「MMT現代貨幣入門」(L・ランダル・レイ)では、通用力について次のような説明をしている。
しかし現実世界で我々が使っている世界中の通貨を考えるのであれば、それがそもそも兌換
不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #003(1章-03) 裏付けのない不換通貨がなぜ通用するか
裏付けのない不換通貨がなぜ通用するか現在私たちが使っている「日本銀行券」は不換通貨である。
なぜ私たちは金貨との交換を約束されてもいない、価値のない紙きれである「日本銀行券」を受け取って、そしてまた支払いに利用できているのだろうか。またそれぞれの通貨はどのような価値が信用されて通用しているのだろうか。
通貨の最終目的は物品・サービスとの交換
通貨の最大の、そして最終的な目的は、通貨との交換
不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #002(1章-02) 用語の定義/物品貨幣(商品貨幣)について
用語の定義 この先の文章を理解しやすくするために、念のために用語を定義しておきたい。
おカネ・通貨・貨幣・マネー・紙幣・硬貨
先ほど「おカネ」という言葉はそもそも金属を表す言葉だといったように、本書では「おカネ」という表現はできるだけ避け、「通貨(つうか)」や「貨幣(かへい)」と呼ぶ。
またこの「貨幣」という言葉は、「通貨(マネー)」という意味や、紙幣に対する貨幣、「硬貨(コイン)」と
不換通貨論 ~忘れられた日本銀行券の正体~ #001(1章-01) はじめに/日本銀行券の正体
はじめに1973年2月14日、日本銀行券は名実ともに「不換(ふかん)紙幣」となった。
しかしこの事実が持つ大きな意味について、日本社会は50年以上もの間、理解することなく、いつしかその事実さえ忘れてしまったかのようである。
およそ誰にとっても、生活のほとんど中心にあって非常に重要な問題となっている「貨幣」および「通貨」について、我々はほとんど学ぶ機会がない。それどころか、この通貨を管理すべき