記事一覧

Un souvenir de mon ancien ami qui est décédé l'an dernier.

La nouvelle de son mort a été transmise par sa femme. J'en ai été saisi immédiatement de la tristesse profonde.

kayatan
1か月前

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第211回 「あと(あ)がき」

 それではここらで著者から最後にふたたび浄に筆を返してこの物語を終えさせ、著者自身は筆箱の中に戻りたいと思います。またいつか化けて出てやるど。     Enter Joe…

kayatan
2か月前

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第210回 あとがき

 その後、人生の収穫期に入っている浄とセシリアは今も元気、げーんきで、一家に祝い事が生まれる度に、「いい年こいて」、歓喜のポーズで一輪車に乗る祝祭の日々を過ごし…

kayatan
2か月前
1

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第209回 第175章 海だちとの再会

 髪が白くなったり、禿げたり、耳が遠くなりかけたりしているヨット仲間たちが、ご詠歌をラップで唱えつつ、右手に円山が大きく見える坂を喘ぎながら上がってくる。うちの…

kayatan
2か月前
1

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第208回 第174章 海辺から自宅マントルピースでの焚き火へ

 硯海岸はまた焚き火海岸でもあった。あのボクらの海辺まで流されてきて打ち上げられた流木を何百回となく集めては燃やした。同じ形の流木もひとつもなかった。流木は英語…

kayatan
2か月前
1

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第207回 第173章 数カ国語で考える

 Alte Kameradenのサビの部分、wahre Freundschaft(真の友情)で始まる下りが繰り返し耳に響く。ドイツ語の歌詞が一言一言琴線に触れる。音楽に限らず、ニュースを含むド…

kayatan
2か月前
3

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第206回 第172章 危うく死を免れていたヨット部活動の日々

 うちの山茱萸を見ていると、あの若き日々に仲間たちといつもの作業分担で帆を張って七輪の煙の上がる熱い砂浜から次々に出帆して、髪の毛が掻き乱され、贅肉などなかった…

kayatan
2か月前

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第205回 第171章 山茱萸

 車、250ccのバイク、一輪車、走行中に踵に火傷をするロケットスケートボード(まさか)をそれぞれ2台ずつ入れたガレージの横の山茱萸は、毎年ひっそりと赤い実をつける。…

kayatan
2か月前
2

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第204回 第170章 セシちゃん登場

 うちの庭に英語ではEurasian red squirrelというエゾリス夫婦が住み着いた。何となくオスに見える方がせわしなく動く様を見ていると、まるでボク自身の人生を見せられて…

kayatan
2か月前
2

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第203回 第169章 アメリカで悩める小春医師

 お姉ちゃんの方は豊平川通に接したグランドで試験的に限定復活した雪戦会で、赤い鉢巻をして先鋒を務め、固めた雪の大型ブロックで構築された敵軍本陣を陥落させ、その上…

kayatan
2か月前
2

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第202回 第168章 2カ国語トリビアの実例集

 トリビアは様々なテーマに及んでいる。英語、日本語の順に次のような構成にする。長くなるが、例を7問挙げておく。2カ国語トリビアは、どなたにも20問程度は作れそうであ…

kayatan
2か月前
4

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第201回 第167章 小春ちゃんの弟

 フランケンの腱の痛みはあの後さらに悪化していったが、勤務日を週に2日に減らしてもらったのが功を奏したらしく、次のスキーの季節までにほぼ完治した。その間の子ども…

kayatan
2か月前

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第200回 第166章 円山、藻岩山、創成川

 札幌の市街地の最大の特徴のひとつは、北西、西、南西、南、南東の方向にかけて、すぐ豊かな森林に覆われた山々が隣接しており、市内のどこからも見えることである。さら…

kayatan
2か月前
1

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第199回 第165章 共同事務所開設

 その後、丸原浄一弁護士は、円山公園を背にしているアメリカ総領事館近くに、私の母校のサファイア高校と比較されることの多い札幌ルビー高校の弓道部時代からの「ダチ」…

kayatan
2か月前
3

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第198回 第164章 気の進まない弁護士事務所に入る

 かつての湯島から和光市に移転してすでに数十年経っている司法研修所での修了を前にして検事任官を望んだが、年齢等を理由に(性格だって悪いぞ、あいつ)難色を示されて…

kayatan
2か月前
2

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第197回 第163章 兄、乱心す

 弟の私からは兄は堅実にキャリアを積んでいるように見えていたし、兄自身、社内での待遇にこれといって不満はなかった。ところが、大統領選挙がらみの長期取材をきっかけ…

kayatan
2か月前
1
Un souvenir de mon ancien ami qui est décédé l'an dernier.

Un souvenir de mon ancien ami qui est décédé l'an dernier.

La nouvelle de son mort a été transmise par sa femme. J'en ai été saisi immédiatement de la tristesse profonde.

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第211回 「あと(あ)がき」

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第211回 「あと(あ)がき」

 それではここらで著者から最後にふたたび浄に筆を返してこの物語を終えさせ、著者自身は筆箱の中に戻りたいと思います。またいつか化けて出てやるど。   
 Enter Joe.
 艇庫近くの海岸では、艇庫の敷地内に入れない何人かが、気温が低いのに今夜も旭ヶ丘のうちと同じ月を見ながら焚き火をしている可能性がある。人数分の本数の月時計が砂浜や草の上を歩いたり、そのあたりに座ったりしているのだろう。矢をつが

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第210回 あとがき

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第210回 あとがき

 その後、人生の収穫期に入っている浄とセシリアは今も元気、げーんきで、一家に祝い事が生まれる度に、「いい年こいて」、歓喜のポーズで一輪車に乗る祝祭の日々を過ごしています。義母は笑顔の写真になって、おとーさんの横に並んでいます。家族は人数が増えて、3つの大陸と2つの島国、そして1箇所の座敷牢に広がって住むようになっています。
 ふたりとも耳もだんだん遠くなりつつあって、「これは第3番だな」「ち・が・

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第209回 第175章 海だちとの再会

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第209回 第175章 海だちとの再会

 髪が白くなったり、禿げたり、耳が遠くなりかけたりしているヨット仲間たちが、ご詠歌をラップで唱えつつ、右手に円山が大きく見える坂を喘ぎながら上がってくる。うちの屋根から潜望鏡をシャキーン!と突き出して、高さ、角度、倍率をこの順に調整しながら偵察すると、老けかけてきているあいつらの顔が一瞬若者の顔に戻って見える。その瞬間、このオレも23歳の医学生の顔に還っていたのだろうか? 誰か、わしらの年齢に魔法

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第208回 第174章 海辺から自宅マントルピースでの焚き火へ

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第208回 第174章 海辺から自宅マントルピースでの焚き火へ

 硯海岸はまた焚き火海岸でもあった。あのボクらの海辺まで流されてきて打ち上げられた流木を何百回となく集めては燃やした。同じ形の流木もひとつもなかった。流木は英語ではdriftwoodというので、ボクらは差し詰めdriftersだったのだ(頭洗えよ)。 
 今夜は所属学会の総会開催に合わせて久し振りに北海道にやってきた数人の元部員たちを交えて我が家で酒盛りを開くのだ。Chariots of Fire

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第207回 第173章 数カ国語で考える

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第207回 第173章 数カ国語で考える

 Alte Kameradenのサビの部分、wahre Freundschaft(真の友情)で始まる下りが繰り返し耳に響く。ドイツ語の歌詞が一言一言琴線に触れる。音楽に限らず、ニュースを含むドイツ語を聴いているときも、他の言語が脳に入り込む隙はなくなり、ボクの思考はすべてドイツ語のみに純化する。その初夏の小川の流れに身を委ねるような感覚は、数学や物理の問題を解いているときのすっきりとした快感に似て

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第206回 第172章 危うく死を免れていたヨット部活動の日々

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第206回 第172章 危うく死を免れていたヨット部活動の日々

 うちの山茱萸を見ていると、あの若き日々に仲間たちといつもの作業分担で帆を張って七輪の煙の上がる熱い砂浜から次々に出帆して、髪の毛が掻き乱され、贅肉などなかった体が波に激しく揺さぶられていた記憶が蘇ってくる。同じ形の波は存在しないのだろう。ボクらの見てきた波浪も、北斎の観察眼に対して自らの神秘的な正体を一瞬の刹那だけ露わにして見せた波頭も、すべて違う形だったはずである。ヨットが完沈すれすれのきわど

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第205回 第171章 山茱萸

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第205回 第171章 山茱萸

 車、250ccのバイク、一輪車、走行中に踵に火傷をするロケットスケートボード(まさか)をそれぞれ2台ずつ入れたガレージの横の山茱萸は、毎年ひっそりと赤い実をつける。鳥たちの話題になっているだろうか。学生時代から何度となく挑戦してはその都度数週間で撤退していたラテン語の学名を調べてみる気になって、ネットで検索すると出てきた。Cornus officinalisとある。発音はコルヌス・オフィキナリス

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第204回 第170章 セシちゃん登場

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第204回 第170章 セシちゃん登場

 うちの庭に英語ではEurasian red squirrelというエゾリス夫婦が住み着いた。何となくオスに見える方がせわしなく動く様を見ていると、まるでボク自身の人生を見せられているかの気分になる。一瞬止まる撫で肩の後ろ姿に哀愁が漂う。Don’t carry the world upon your shoulders. どや、そこのテーブルで一緒に北海道ウィスキーをロックで飲まへんか。数メートル

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第203回 第169章 アメリカで悩める小春医師

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第203回 第169章 アメリカで悩める小春医師

 お姉ちゃんの方は豊平川通に接したグランドで試験的に限定復活した雪戦会で、赤い鉢巻をして先鋒を務め、固めた雪の大型ブロックで構築された敵軍本陣を陥落させ、その上に青地に白の雪の結晶が幾片か舞うデザインの占領旗を翻らせた。この写真が地元紙に紹介され複数の会社からモデルを依頼されたが、いずれも断って市電通学での高校生活を続けた。校長まで小春ちゃんファンクラブの秘密会員になっていた。
 一浪で医学部に合

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第202回 第168章 2カ国語トリビアの実例集

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第202回 第168章 2カ国語トリビアの実例集

 トリビアは様々なテーマに及んでいる。英語、日本語の順に次のような構成にする。長くなるが、例を7問挙げておく。2カ国語トリビアは、どなたにも20問程度は作れそうである。チミもやってみたまえ。

Question 1: 
In the UK the prime minister’s official residence is called 10 Downing Street; which of th

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第201回 第167章 小春ちゃんの弟

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第201回 第167章 小春ちゃんの弟

 フランケンの腱の痛みはあの後さらに悪化していったが、勤務日を週に2日に減らしてもらったのが功を奏したらしく、次のスキーの季節までにほぼ完治した。その間の子どもたちの成長は信じられないほど早かった。親馬鹿を99%割り引いてもなお、わしの娘と息子こそが天才じゃけん、と飛び跳ねながら宇宙全体に大声で触れて回りたくなるほどだった。小春ちゃんはボクと同じサファイア高校に、その年の離れた弟は鉄道を間に挟んだ

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第200回 第166章 円山、藻岩山、創成川

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第200回 第166章 円山、藻岩山、創成川

 札幌の市街地の最大の特徴のひとつは、北西、西、南西、南、南東の方向にかけて、すぐ豊かな森林に覆われた山々が隣接しており、市内のどこからも見えることである。さらに東にはざっと2,000ヘクタールの平地林である野幌原始林がある。兄+ダチの共同事務所の場合には西に円山があり、その左手の南西には藻岩山がある。札幌で特に名前を出さずに山とだけ言えば、この後者の標高531mの山を指すことが多い。これら両方の

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第199回 第165章 共同事務所開設

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第199回 第165章 共同事務所開設

 その後、丸原浄一弁護士は、円山公園を背にしているアメリカ総領事館近くに、私の母校のサファイア高校と比較されることの多い札幌ルビー高校の弓道部時代からの「ダチ」と法律・弁理士事務所を設立した。(小さな声で言っておく。兄ちゃん、おめでと。音を消して口パクで言っておく。大きな面すんなよ。あっ、まずっ。兄は遠隔空間ワープ読唇術ができるんだった)。
 同じコランダムでもサファイアは青いため「青玉」(せいぎ

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第198回 第164章 気の進まない弁護士事務所に入る

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第198回 第164章 気の進まない弁護士事務所に入る

 かつての湯島から和光市に移転してすでに数十年経っている司法研修所での修了を前にして検事任官を望んだが、年齢等を理由に(性格だって悪いぞ、あいつ)難色を示されて果たせず、札幌に戻ってきて弁護士登録をした。弁護士会の会員数は以前記憶していた数よりかなり増えていた。大通公園に面した人気の法律事務所に就職できず、市内の地味な一角にある雑居ビルの日当たりの悪い事務所に入った。
 初出勤日に、下の階の治療院

もっとみる
『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第197回 第163章 兄、乱心す

『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第197回 第163章 兄、乱心す

 弟の私からは兄は堅実にキャリアを積んでいるように見えていたし、兄自身、社内での待遇にこれといって不満はなかった。ところが、大統領選挙がらみの長期取材をきっかけに、アメリカという他のどこにもない、輪郭のはっきりした個人が作っている、いつも動いていて落ち着きのない、特殊にして世界最大の民主共和国における人々の日常的な大胆な転職の様子を見ているうちに、自分はこれでいいのか、と疑念を持つようになっていっ

もっとみる