正木篤三『本阿弥行状記と光悦』抜き書きの賜物
最近、あまり馴染みのないジャンルの本を読んでいると、老いのせいもあるのだろうが、気に留めた個所がアレッという間に記憶から消えていく。やむなくその都度抜き書きしていると、不思議なことにというか、嬉しいことに、その本の叙述する世界にいつの間にかスッカリ嵌っていることに気づいた。「本阿弥行状記」中巻・下巻にざっと目を通したくて、正木篤三『本阿弥行状記と光悦』(中央公論美術出版)を手にして、心に響く個所を自分流に書き留めながら繙き、抜き書きの効能を体感したのである。
《中巻》の冒頭