記録係

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些末な記録と記憶の保管庫。 noteは記録係の活動の発信拠点になります。 ZINEを中心とした個人出版物の制作活動も行なっております。 これまでの出版物はこちら https://kirokugakari.base.shop/

マガジン

  • 生活する沖縄

    小さな頃から沖縄は旅行する場所だと認識していた自分にとって、そこに暮らす人たちとの関わりは新鮮で、嬉しい発見に溢れる毎日です。納豆は4パックで1セットが当たり前とかね! ただ同時に自分がこれまで沖縄に投げかけていた視線の暴力性にも気づくこととなりました。 ここでの暮らしと関わりを書きとめることで、自分の中に長い年月をかけてまるで石化したようにこびりついた"身勝手な沖縄像"が、少しずつほどけてゆくことを期待しています。

最近の記事

4月2日、春の日記

友達がパリに行くので空港へと向かう。 花粉の薬のせいで午前中からとてつもなく眠い。 お見送りに加えて、書いていた小説を渡すという大切なミッションがあったのに、現物を忘れた。 成田空港に着くと、たくさんの国の香りが混じって記憶を刺激してくる。外国に行きてえ〜ってなる。 妹が留学するときも、今日もそうだ。成田空港の匂いは海の向こうに気持ちを追いやる。 初めて行った国はフィリピンだった。 モールや空港で目にする異国の品々は14歳の僕の胸を躍らせてくれた。 「ディズニーより楽しい

    • だいたい4ヶ月前のある日の日記

      カメラロールを遡っていくと、見慣れないというか、身の丈にあってない場所の写真があった。 4ヶ月前 その日は確か雨で、ズボラな人なら傘はいらないと判断するくらいの雨。 と思って油断していたらしっかり降り出したから傘のレンタルサービス的なので借りた。 学大前でいくつかの用事を済ませて、下北沢の少しはずれにあるバーに行く。ここは好きな写真家さんが行っていたから知った場所。 どうやら中に小さなギャラリーがあって定期的に展示が行われているみたいだった。 展示を見にいくという名目が

      • ZINE 『助走をとる』

        新しいZINEができました! タイトル『助走をとる』 半年間同居した友達が、3月からパリでバリスタとして働くことが決まりました。彼の人生が進み、自分はなんだか置いてけぼりになった感覚であるにも関わらず、友達はいつも通り飄々としていて悔しいんです。 だから僕は僕のやり方で、パリまでの助走の時間を走り抜けようと思い、本を作ることにしました。 とりあえず友達には本を作ることだけを伝えて、12月から2ヶ月間、何日かごとに電話をしたり写真を撮ったり、撮った写真をもらったり、お互

        • 思い出すこと「Eテレ」

          思い出すという行為。 記憶を頭の中で再生することだけが、過去を確かなものにする。 小さい頃に好きだったプチプチアニメ。朝と夕方、テレビを目にする時間にeテレで流れていた5分のアニメ。 あの頃の5分って、5分だと気が付かないくらい長くて、それは5分を知らなかったからというのと、時間が流れ進むものという感覚が今より希薄だったからかな。時計を見るっていう感覚があんまなかった。1時間は超長くて、30分もワクワクする長さで15分は待つのがもどかしい長さで、5分は無視できない長さ。みた

        4月2日、春の日記

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        • 生活する沖縄
          8本

        記事

          生活する沖縄 #8|浅煎りの紺色

          ここ数日の沖縄の天気は2月であることを忘れるような暑さで、日中は25度くらいになる。もちろん上着の出番なんてないくらいの気温。 この時期になると島全体が春の準備を始めるというのだから、東京から飛行機で2時間半の距離にこんなにも常識の異なる国があるなんてびっくり。 もっとびっくりなのは、ここ最近の空は確実に夏のそれであること。 冬晴れのしんと澄んだ空気とは明らかに違っていて、空はグッと近くにあって、うんと風を浴びたくなるあの夏の空気。 日差しが金色に世界に降ってきている。例年

          生活する沖縄 #8|浅煎りの紺色

          心の眼|福田村事件について

          福田村事件を観た。 終盤は呼吸することを忘れていたんじゃないかと思うくらいに全身がそのリアリティを受け止めていて、鑑賞後はいつもより少しだけ自分の心臓や脈の音がよく聴こえた。 100年前の話。 100年っていうと長いようで、人一人分の人生と同じくらいだから、ほとんど隣にいるみたいなものだと思う。 100歳の時に幼稚園時代の初恋を思い出す、そのくらいの感覚で思いを馳せることができる時間が、だいたい100年。 そのはずなんだけど、 過去の歴史、悲惨なものから人類の前進と呼べ

          心の眼|福田村事件について

          生活する沖縄 #7|百円の恋

          『百円の恋』を観た。安藤サクラさん主演。 目の前の一勝のために頑張るのって難しくて、そんでめっちゃかっこいい。 部活とかは特にわかりやすいけど、 「どうせプロになれないのに」「全国優勝できないのに」必死に頑張る意味を自分に問いかけてしまいがち。 ただの自己満じゃねって言われがち。 自己満でいいんだろうね、自己満で上等なんだろうね。 それが好きで、勝ちたいから、頑張りたいから頑張るってかっこいい。 必死になったことがないという自覚を持ちながら生きてきたから、 目の前の一

          生活する沖縄 #7|百円の恋

          生活する沖縄 #6|低空の凧、 ロードサイド。

          視界がブラックアウトする寸前まで自分を追い込んだ。 いつもの公園。いつもの鬼ごっこ。 冬休み中の子どもたちはなんの引き換えもなしに、そのエネルギーを20倍くらいにして襲いかかってくる。ルールもよくわからないまま知らない遊びに招待されては、最速で負けた。 近くでは二つの凧が丘の斜面を低空飛行していて、 お年玉で買ったであろう新品の自転車と、新品のキックスケーターが行き交う。それを追いかけるのは、数年後にそのお下がりをもらうことになる弟たちだろうか。 小さな島の小さな街で、あ

          生活する沖縄 #6|低空の凧、 ロードサイド。

          2024年の始まりは、こと日本においてはとても苦しいものになっています。 能登半島の地震、航空機事故。被災地の支援に向かう飛行機だったなんて、あまりにも胸が痛く、視界が滲みます。 日増しに増えていく被害者の数と安否のわからない人たち。 今も食料のままならない、暖のとることもできない場所で、いつか来る助けを待っている人がたくさんいて、同日同時刻にはいつも通りのお正月を過ごすことができる環境が車で数時間の場所にあって、この違いが一体なんなのか、考えれば考えるほどそれはきっと残酷

          生活する沖縄 #5|イッチバンの大人気

          沖縄にはグスクっていう琉球王国時代の遺跡がたくさんあって、世界遺産になってたりなっていなかったりする。グスクは城という字を当てるけど、必ずしもお城の跡ではない。 お城みたいに立派なものばかりではないけれど12~15世紀ごろの石垣や神事用の祭壇が残っているのだから、見応えがあって大変良い。 いくつか有名なグスクがあって、その日は勝連城というところに行った。そこは実際にお城として使われていたところで、世界遺産にもなっている。 てっぺんまで登るのには時間がかかった。敵を足止めす

          生活する沖縄 #5|イッチバンの大人気

          生活する沖縄 #4|小さいワ。

          沖縄には500メートル級の山が幾つかあって、そのうちの4つの山を一日のうちにまとめて登った。 いい感じの棒を拾った隊長を先頭に据えて、4時間にわたってひたすら歩き続けた。 山の頂上では文字通りの絶景が視界を覆うので、それを見ながら少しの間だけぼーっとするなどした。 憂鬱な環境にいた頃、綺麗な景色は言い訳だった。 憂鬱な自分に発破をかけるための癒しとして、それは素晴らしいほどの効果を発揮する特効薬だった。 地球にはこんな場所があって、その大きさと自分の悩みの小ささを比べると

          生活する沖縄 #4|小さいワ。

          生活する沖縄 #3|全開の窓、食卓のもずく

          その日は離島に向かった。 沖縄近海には島がたくさん浮かんでいて、飛行機やフェリーだけじゃなく、車で行けちゃうお手軽島もいくつかある。 海中道路と呼ばれる道を通って島に行くと知った時、 車と並び泳ぐジンベイザメや、外国のお菓子みたいな色彩の小魚たち、目下に揺蕩うクラゲの銀河を想ってしまうのは、きっと僕だけではないはず。 まだ小さかった頃に初めてアクアラインを通った時、それが海の中の道路だと聞いていたから、あまりのノーマルトンネルっぷりに愕然としたことを記憶している。 アクア

          生活する沖縄 #3|全開の窓、食卓のもずく

          書いた本の紹介|君は簡単なことを難しそうにやるね

          「僕はよく叱られる。」から始まるこの本は、 叱られる時によく言われる言葉を数個ピックアップして、一度は素直に、二度目はちょびっとだけ反抗して、問いかけるような形で振り返った本です。 でこぼこな自分を、慌ててつるつるに磨いてしまう前に少し立ち止まってみてほしいという思いを込めています。 オンラインショップの他に、祖師谷にある「不便な本屋さん」という素敵な本屋さんにお取り扱いいただいているのでぜひ。いけば必ずいい日になるよなそんな場所です。 また今後の話になりますが、学芸

          書いた本の紹介|君は簡単なことを難しそうにやるね

          生活する沖縄 #2|ギャルと退学と生徒会長

          帰り道にある公園には、広い原っぱの脇に健康遊具といったらいいのか、足ツボコースとか懸垂するやつとか、ストレッチする用の遊具がある。 そこで身体を動かすことを無理やり日課としているのだけど、その公園はお昼過ぎから夕暮れまでの時間は、近所の人や子ども達がとにかく集まる場所になっているみたいだった。 そんな場所で運動をしていると、だんだん辺りに好奇心が充満し、いっぱいになるや否やそのもやを切り裂くように子ども達が話しかけてくる。 話しかけてくれるのは小学生たちだけではなくて、

          生活する沖縄 #2|ギャルと退学と生徒会長

          生活する沖縄 #1 |手書きの名刺と手書きの看板

          イントロ 沖縄に来た経緯はこのマガジンに取ってさほど重要な事項ではないから簡潔に書くと、友人の仕事の手伝いに来ています。事務所のインテリアを作ったり、人探しをしたり、地域の人と関わりあったりといった感じ。 ずっと関東にいた僕からすると沖縄は、人も気候もあたたかな南国で、ユニークな文化を紡ぎ続けてきた神秘の島であると同時に、悲惨で屈辱の歴史をもつという、複雑でどこか真正面から向き合いづらい土地でもある。 沖縄に行く直前なんて、沖縄県民以外の人達によるコロナ化の横暴*のせいで

          生活する沖縄 #1 |手書きの名刺と手書きの看板

          記録係

          いつからか将来やりたいことってのは、好きなことに加えて、お金にならないといけないという寂しい条件から逃れられなくなってしまった。 そんなことを考えていると自分からどんどん遠ざかっていってしまうようで、頭を使えるようになった自分を少し恨むような哀れに思うような、大人でいることのどうしようもなさにうな垂れるような、とにかくあまりわんぱくでいられなくなってしまう。 それは虚しくもあり、また、成熟した自分に少し胸を張りたくもある。人生、やっと25年。 ある時、一枚の写真を見た。