きよぼえ

日常を旅する独身ミドサー社会福祉士。 大阪生まれ、大阪育ち、兵庫の海沿い在住。 津村記…

きよぼえ

日常を旅する独身ミドサー社会福祉士。 大阪生まれ、大阪育ち、兵庫の海沿い在住。 津村記久子さんと瀬戸内海と淡路島とドキュメント72時間が大好きな33歳です。 日々のくらしや本、旅、美術、音楽、食べ物のことについて綴ります。

マガジン

  • 本のこと

    津村記久子さんの本多め

  • 旅のこと

    電車に乗って、船に乗って、まちあるき。 人が暮らしているところで旅人になろう。 何かが起こるかもしれないし、何も起こらないかもしれない、そんな旅の思い出。

  • 日々のこと

    食べること、思うこと、散歩すること、取るに足りない些末な日常の記録

  • 島のこと

    複雑に入り組んだ路地、青くて静かな海。「何もない」が「ある」。島を愛するアイランダーの島旅

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お名前ひらがな組合

8月に、甥っ子が生まれた。 先日ようやく名前が決まったとこのとで、実家から連絡があった。 命名「佑(ゆう)」とのこと。 この字面を見て真っ先に思い浮かんだのが、大きくなった甥っ子が電話口の相手に 「あ、えっと、にんべんに右です!」 などと言っている姿だ。 彼が成長した未来の社会では、さらにデジタル化が進み、もはやそんなことを説明しなくちゃいけないシチュエーションなんてほぼ存在しないだろう。 だけど呑気な叔母ちゃんは、そんな取り留めもない日常の一コマが、佑の未来にあれば

    • できない!を楽しむ八重山旅

      年がら年中ぬるっと繁忙期っぽい会社で働いている私だが、2-3月の大大大繁忙期を抜けたこの時期は、次なる大大大繁忙期との隙間時間で、比較的ゆるやかに(当社比)過ごせる時期なのである。 ということで、この期間、八重山諸島(沖縄本島のさらに南の石垣島あたりの島々)を旅することが恒例行事となっている。 と言っても、自分の性分的に、完全なる大連休はなんだかリズムが狂いそうなので、ワーケーションという名目で、平日の午前中だけ仕事をすることにしている。 例年のひとり旅では八重山諸島で

      • こんなはずではなかった今と私と|山本文緒『自転しながら公転する』

        30代に突入して久しいが、最近よく思うことがある。 それは「自分はもう、どうしようもなく”こっち側”にいる」ということだ。 こっち側てどっち側やねん、という感じだが、それはひとまず「社会の側」「世の中の側」とでも表現しておく。 社会に出て間もなしの頃は、思い通りにいかないことや気に入らないこと、うまくいかないことに遭遇するたび「組織がだめだから」「世の中が悪い」「育った環境のせい」と、何かと曖昧な対象(自分の外側にある”社会”的なもの)に文句を垂れていた。 前提として、

        • 不完全図書館往来記

          図書館で借りた本をほとんど読まない状態で返却した。 約半年前に引っ越してきてから、2週間に1度、近所の図書館に足を運んでいる。 このペースは単純に図書館の貸出期間が2週間だからなのだが、隔週の土日に返却をし、また新たな本を借りるというサイクルをなんとなく繰り返すようになった。 前に住んでいた街には駅前の大きなビルに図書館が入っていて、通勤や買い物の「ついで」に寄れていたので、わりとカジュアルに貸借が可能だったが、今住んでいる街の図書館は自宅から徒歩25分、自転車で10分程

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          √400年ぶりの再会|小川洋子『博士の愛した数式』

          はじめて読んだ小説は何だろうか。 私にとってのそれは、中学生の時に出会った小川洋子さんの『博士の愛した数式』だ。 人生ではじめて小説の単行本を最初から最後まで読破した感想は「優しくて、きれいなお話だな」だった。物語の内容以上に、私の心は「読み切ったぞ」という達成感で満たされ、ちょっと大人になれた気がした。 決して登場人物の本名が出てこないことや、「家政婦」という珍しい職業、「ミートローフ」「母屋」といった新鮮な響きの言葉の連続に、なんだか普段の生活とは地続きじゃない不思

          √400年ぶりの再会|小川洋子『博士の愛した数式』

          心にいつも定食を。'23

          青春18きっぷの残り分を使い、1人でなんとなく四国に行って帰ってくるというのが年始の暇な日の恒例になっている。 今も1年前と全く同じシチュエーションで快速マリンライナーの車内にいる。 昨年は帰りの道中にて、1年のうちに食べた定食をひたすら晒すという記事を書いたことを思い出した。 あれから1年、引き続き私は定食を食べていた。 物価高騰により、駅ビルの雑多な中華屋で750円だった定食は830円になり、たまの贅沢で食べる950円の洋食ランチは1100円になった。 酒を飲まな

          心にいつも定食を。'23

          まっすぐじゃなくてすみません(熟成発酵エッセイ)

          noteの下書きには、書き始めたものの収拾がつかなくなって放置している文章が結構あるのだが、ちょうど1年前に書いた文章が出てきた。 毎年11月後半に差し掛かった頃から年末にかけてメンタルを含む体調が底を迎えるのだが、昨年も例に漏れることなく、きっちりと私は落ち込んでいた。 小さなことにクヨクヨしている状況を書き連ねており、一周回って清々しいほど根暗な文章であるが、まさかの展開で過去の自分にしてやられたので、日の目を浴びせてみようと思う。 ----------------

          まっすぐじゃなくてすみません(熟成発酵エッセイ)

          アウトサイドに祝福を

          阪神タイガースが日本一になった。 セ・リーグ制覇を果たした時にもそうだったが、さまざまな人から私の元へ「日本一おめでとう!」と、お祝いコメントが届いた。 病める(3年跨ぎで現地観戦13連敗という記録を打ち立てた)時も健やかなる時も、共に足繁く甲子園に通った友人だけでなく、前の職場の先輩や同期、大学卒業以来ほぼ連絡をとっていなかった旧友まで、とにかくさまざまな人から。 じっくりと集中して岡田監督のインタビューを聞いている間にLINEの通知バッジが見たことないほど溜まってい

          アウトサイドに祝福を

          叶えずに 置いとく夢が あっていい

          ついさっき、夢を叶えた。 自宅最寄りの駅前の交差点で、毎晩ラーメン屋台が出ていて、そこのラーメンを食べたのだ。 助っ人外国人みたいな金ピカのネックレスを首に引っ提げたヤクザ役の時の笑福亭鶴瓶に似ているおっちゃんがハイエースでやっている屋台。 メニューはラーメンと、なぜかホットドック。 車の前にはプラスチックの丸テーブル2つとその周りに6つずつほど丸椅子が並んでいて、いつも飲み会終わりの「しめラー」を食べている人々で賑わっている。 つまりだいたいが2人以上の集団でラーメン

          叶えずに 置いとく夢が あっていい

          ソレがコレでアレやから

          2年前の秋、こんな記事を書いた。 ペナントレース最終日まで阪神タイガースがアレするかしないか、明日になればすべて決まる、という日だった。 私にとって阪神タイガースは思い通りにいかない人生そのものであり、心のバランサーであり、歯磨きのように日常に存在するものである、というようなことを、少しざわつく心で淡々と書きとめた。 スポーツチームと「ともにある」ということを自分の言葉で掘り下げてみたかったのだ。 結局次の日にはヤクルトスワローズが優勝し、何事もなくいつもと同じ日々が続い

          ソレがコレでアレやから

          もがくほど しずむかなしい 海だから|大阪本町さんぽと本とのであい

          今日は午前中だけ仕事で、せっかく日曜に大阪に出てきたのだから、午後は久しぶりに大阪のまちを散歩してみた。 仕事後に同僚が堀江の美容院に行くというので、一緒に本町と四ツ橋の間あたりの定食屋でお昼を食べた。 余談だが、昨年北海道から転職してきた同僚が、行きつけの美容院を見つけるほど大阪に馴染んでることが、なんだか嬉しいのだった。 同僚を見送った後、さてどうしようかと悩み、「悩んだら本屋」という法則に従って本屋を目指して歩き出した。 大きなジュンク堂に行くつもりだったが、その

          もがくほど しずむかなしい 海だから|大阪本町さんぽと本とのであい

          がんばれがんばれ同世代

          仕事柄いろんな年代の人と関わる機会が多いが、このところ、出会った人が同世代(30歳そこそこ)ってだけでなんだか嬉しくなってしまう。 これまでは特別、「同世代だから」というだけで他人に親近感を覚えることはなかったし、なんならたまたま同じような年の頃に生まれたからといってひとくくりにされることを忌み嫌っていたが、なぜだか最近は妙な親しみを感じてしまうのだ。 津村記久子さんの言葉を借りると、"ほとんど同じだけの古さの人間"に対する一方的な連帯感みたいなものかもしれない。 *

          がんばれがんばれ同世代

          なんやかんや言いながら、日常と折り合いつけてぼちぼち生きていきますわ

          先日、北海道出張の帰りに、新千歳空港でたくさん時間があったので、ふらりと映画館に寄ってみた。 公開したばかりというジブリ映画『君たちはどう生きるか』がちょうど始まる時間だったので、観てみることにした。 ちなみに、公開していたことも知らなければ、広告宣伝を一切していなかったことすら知らず、図らずも世の中のみなさんと同じ、つんつるてんの状態で鑑賞することとなったのだ。 感覚的に、『夜は短し歩けよ乙女』のアニメ映画を観た時と似た、立ち位置が曖昧になるような奇妙な浮遊感があって、

          なんやかんや言いながら、日常と折り合いつけてぼちぼち生きていきますわ

          ヤケクソカレーを炊いてみよう。

          この1週間はなんだか苦しかった。 土日は出張でフル稼働して深夜に帰宅。 太古の昔に卒業したと思っていた「誰も休んでないのに自分だけ休むのは…」みたいな思考に絡め取られ、満身創痍のまま月曜から金曜まで働き続けてしまった。 休まねば、という判断もできないほどに疲れ果てていた。 そんな中で、人に地雷を踏まれ、その傷ついた心で別の人の地雷を踏みに行くようなことをしてしまい、返り血を一気飲みして自分が窒息死するみたいな出来事まで起こってしまった。 人につらくあたってしまうことが、

          ヤケクソカレーを炊いてみよう。

          パンが嫌いなパン屋さんから考える「好きを仕事に」

          仕事選び、というのは一筋縄では語れないものだなと思う。 一応、人の職業選択にまつわる仕事に携わり、最近キャリアコンサルタントなる資格を取得したこともあるので、そのことについて書いてみようと思う。 好きなことを仕事にするのがいいでしょうか? という問いを学生からたまに投げかけられるが、一問一答的に反応するなら、残念ながら私は「人によりますかね」という月並で歯切れの悪すぎるこたえしか持ち合わせていない。 そこから価値観や背景を深掘りしてその人なりのこたえを一緒に探すのが自分

          パンが嫌いなパン屋さんから考える「好きを仕事に」

          とっても幸せな、ひとりきりの土日のこと

          4-5月はオーケストラの本番があったり、出張や土日の仕事が続いていたりで常にパタパタと人にまみれて稼働していたもので、今週末は、とても久しぶりに「何もない」土日だった。 なので、この2日間を徹頭徹尾、自分が住む街で、ひとりで、自分のためだけに過ごすことを強く決めたのだった。 土曜9:30 何もない土曜日は、ドキュメント72時間の再放送からはじまる。 今週は大阪の郵便局の回で、父の遺品である昔の切手を現行の切手に交換してもらうおばちゃんが印象的だった。 上皇様が結婚された

          とっても幸せな、ひとりきりの土日のこと