石倉康司

文学と映画、最近は俳句も。自費出版したり。朗読したり。 BOOK CAFE「にて」の一…

石倉康司

文学と映画、最近は俳句も。自費出版したり。朗読したり。 BOOK CAFE「にて」の一員。アマチュア作家の会社員。たまにベーシスト。第1回NIIKEI文学賞純文学部門佳作/本屋エッセイ賞大賞受賞 連絡→cozycorner1983@gmail.com

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    劇場、自宅問わず鑑賞した映画で心に残った作品について書きます。

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    創作した小説です。

記事一覧

何度も同じ場所で何度も同じことを

 このところ、家でアンビエントを制作している。昨年、少々しんどい状況が続いて小説などの創作が困難になったときがあり、でも何かやらないとあまりにも辛いということで…

石倉康司
6日前
4

哀れなるものたち 受け継がれる母と娘の意思

 『哀れなるものたち』は、多くの人が語っているように、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を骨子にした作品だ。さらに、『フランケンシュタイン』の作者であ…

石倉康司
3か月前
11

PERFECT DAYS 〝こんなふうに生きていく〟ことの悲哀と影

 『PERFECT DAYS』は語るのが非常に難しい映画だ。〝映画〟としての完成度や役所広司の演技については文句のつけようがないのだけれど、どうしても引っかかってしまう部分…

石倉康司
3か月前
17

逆流の快楽

 そういえば、もう何年も〝仕事をサボる〟ということをしていない。「そりゃあ社会人だし当たり前だろう」と思ったあなたは、サボるということの名状し難い快楽を知らない…

石倉康司
3か月前
6

2023年の映画ベスト10

2023年に鑑賞した映画のベスト10です。良かったら皆さんの鑑賞のご参考に。今年も沢山映画見るぞ〜 1.宇宙探索編集部 フェイクドキュメンタリーのB級SF映画化と思ったら、…

石倉康司
4か月前
22

2023年に読んだ本ベスト10冊

今年読んだ本で、心に深い印象を残した10冊を記します。順不同です。 ◆モレルの発明/アドルフォ・ビオイ=カサーレス ずっと読みたいと思っていたけれど、ようやく古書店…

石倉康司
4か月前
17

『朽腐』について

 この度、拙作『朽腐』がNIIKEI文学賞で佳作となりました。翻訳や作家業、文芸イベントのオーガナイズで活躍している西崎憲さんが審査員ということで応募したのですが、お…

石倉康司
5か月前
4

2023年3月4日 日記

朝、少し早起きして、作家の温又柔さんときたしま君で出版社した『日本語に住むということ』の刊行記念イベントに行くために、妻と三鷹へ向かう。三鷹は僕が東京で一番好…

石倉康司
1年前
4

2023年2月25日 日記

しばらくの間働きすぎていて、日記を書くことすらままならず。このままだといつか頭がおかしくなると思う。まぁ、そうなったらそうなったらでいいか。INUの『気い狂て』を…

石倉康司
1年前
1

日記 2023年2月11日

 ぐっすり眠る。今気づいたのだけど、「ぐっすり」は「Good Sleep」のことなのだろうか。だとすると、ぐっすり+眠るは使い方として間違っているよな、などとどうでもいい…

石倉康司
1年前
1

日記 2023年2月10日

 朝、起床してカーテンを開けると灰のような細かな雪が降っている。すでに隣の家の屋根には薄く雪が積もっていて、昼頃には道路にもそこそこ積もっているのでは、と思う。…

石倉康司
1年前
1

日記 2023年2月8日

 ちょっと精神的にやられてしまって、体調を崩す。昨晩は眠れず、やっと寝付けたと思っても眠りが浅いのか、何度も目を覚ましてしまう。体調不良と睡眠不足と憂鬱で完全に…

石倉康司
1年前
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日記 2023年2月4日

 すこし寝坊し、昼近くに起床する。朝食の後に家の中を掃除。一息ついたのちに、妻とともに永福町方面へ出かける。図書館に行ってみたいとのことなので、その周辺のお店に…

石倉康司
1年前
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日記 2023年2月2日

 仕事を終え、夕食にハヤシライスを食べる。美味。その後、友達と近くの煙草屋の前で待ち合わせて、銭湯へ。自転車に乗って友達とどこかに出かけるのなんて、いつぶりだろ…

石倉康司
1年前
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日記 2023年 2月1日

 平日はいつも朝から晩まで仕事をしていて、日記を書くネタに困ってしまう。そんな毎日から何とか脱却したく、強引に仕事を終わらせ、妻と共に吉祥寺に映画を見に行く。平…

石倉康司
1年前
3

日記 2023年1月29日

 昼過ぎに妻をバイトに見送り、読書。書評を一本書く。本当は読んだ本全てに自分なりの感想などを書きたいものだ。その後、少しだけ仕事をして、『百年の孤独』の続きを読…

石倉康司
1年前
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何度も同じ場所で何度も同じことを

何度も同じ場所で何度も同じことを

 このところ、家でアンビエントを制作している。昨年、少々しんどい状況が続いて小説などの創作が困難になったときがあり、でも何かやらないとあまりにも辛いということでモジュラーシンセを購入、聞くのが大好きなアンビエントを自分でも作ってみることにしたのだ。

 アンビエントのような抽象度の高い音楽は、言葉を持たない曖昧な世界を作っている、と僕は思っている。その曖昧さが心地いい。言葉は意味があって、実態があ

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哀れなるものたち 受け継がれる母と娘の意思

哀れなるものたち 受け継がれる母と娘の意思

 『哀れなるものたち』は、多くの人が語っているように、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を骨子にした作品だ。さらに、『フランケンシュタイン』の作者であるメアリ・シェリーやその母であるメアリ・ウルストンクラフトの人生を重ね合わせて、という複雑なレイヤーを持った構成になっていて、原作者アラスター・グレイは間違いなくメアリの母娘のことを書いているだろうし、ヨルゴス・ランティモスも、いまこの時代

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PERFECT DAYS 〝こんなふうに生きていく〟ことの悲哀と影

PERFECT DAYS 〝こんなふうに生きていく〟ことの悲哀と影

 『PERFECT DAYS』は語るのが非常に難しい映画だ。〝映画〟としての完成度や役所広司の演技については文句のつけようがないのだけれど、どうしても引っかかってしまう部分があるので、それについて記そうと思う。

 まず思ったことだけど、なんか、リアルじゃないと思った。僕が言うリアルというのは、例えば、

「林檎は赤い」

 という表面的なリアリズムではなく、

「林檎を食べた。ナイフを使って皮を

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逆流の快楽

 そういえば、もう何年も〝仕事をサボる〟ということをしていない。「そりゃあ社会人だし当たり前だろう」と思ったあなたは、サボるということの名状し難い快楽を知らないのだろう。それってちょっともったいないと思いますよ。

 20代のころ、僕はアルバイトで生計を立てていて、社会にコミットする気など一ミリもなかった。バンド活動と読書で忙しかったのだ。本当は働いている時間など無いのだけど、働かないと家賃も払え

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2023年の映画ベスト10

2023年に鑑賞した映画のベスト10です。良かったら皆さんの鑑賞のご参考に。今年も沢山映画見るぞ〜

1.宇宙探索編集部
フェイクドキュメンタリーのB級SF映画化と思ったら、全然違っていた。映画の根底には〝詩〟と〝言葉〟があり、あまりの不器用さと無垢さゆえに、「そうすることしかできない人間」の悲哀と救いが描かれていた。ラストシーン、久しぶりに滝のような涙を流したわ。

2.枯れ葉
引退宣言を取り消

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2023年に読んだ本ベスト10冊

今年読んだ本で、心に深い印象を残した10冊を記します。順不同です。

◆モレルの発明/アドルフォ・ビオイ=カサーレス
ずっと読みたいと思っていたけれど、ようやく古書店で出会えた。噂(?)に違わぬ傑作。『去年マリエンバートで』を彷彿とさせ、映画にまつわるメタな構造もあり、自分のストライクゾーンど真ん中な一冊だった。

◆寝煙草の危険/マリアーナ・エンリケス
個人的にスパニッシュホラー文芸という新たな

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『朽腐』について

『朽腐』について

 この度、拙作『朽腐』がNIIKEI文学賞で佳作となりました。翻訳や作家業、文芸イベントのオーガナイズで活躍している西崎憲さんが審査員ということで応募したのですが、お選び頂き素直に嬉しく思います。大賞は該当なしとのことですが、そういった結果からもシビアに選考していることが伺えます。来年も応募しようかな。

 自作について語るのもどうかと思いますが、自分の思いとして、記しておきたいことがあります。

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2023年3月4日 日記

朝、少し早起きして、作家の温又柔さんときたしま君で出版社した『日本語に住むということ』の刊行記念イベントに行くために、妻と三鷹へ向かう。三鷹は僕が東京で一番好きな街ということと、久しぶりに友達に会えるということで、胸が高鳴るのを抑えつつ自転車を漕ぐ。頭の中で、mooolsの「街は今 友達に会いに行くときの匂いがしている」がリフレインする。

三鷹の書店UNITÉさんに着き、まずお店の素晴ら

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2023年2月25日 日記

しばらくの間働きすぎていて、日記を書くことすらままならず。このままだといつか頭がおかしくなると思う。まぁ、そうなったらそうなったらでいいか。INUの『気い狂て』を口ずさむ。

強い北風の音を聞きながら午前中をのんびり過ごし、妻とともに中野へ。友人のおこめさんが参加しているフリーマケットに行く。談笑しつつ物色。僕はmuffinさんが出品していたヴァシュティ・バニヤンのレコードを買い、妻はパウン

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日記 2023年2月11日

 ぐっすり眠る。今気づいたのだけど、「ぐっすり」は「Good Sleep」のことなのだろうか。だとすると、ぐっすり+眠るは使い方として間違っているよな、などとどうでもいいことを考える。

 昼過ぎに、妻と出かける。近所の書店に行って、山尾悠子の新刊『迷宮遊覧飛行』と、『ランバーロール』の最新号を買う。池田澄子さんの句、好きだなーとしみじみ。その後、井の頭線に乗って吉祥寺へ。電車の中で岩波俳句の結果

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日記 2023年2月10日

 朝、起床してカーテンを開けると灰のような細かな雪が降っている。すでに隣の家の屋根には薄く雪が積もっていて、昼頃には道路にもそこそこ積もっているのでは、と思う。妻はそれでも自転車でバイトに行くと言っているので心配するが、結局バイトは休みになり、ホッとする。

 夜、仕事を終えて窓の外を見ると、雪は止んでいる。打ち合わせばかりで殆ど雪景色を見れておらず、少し悲しい気持ちに。妻が作った夕食の炒め物が美

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日記 2023年2月8日

 ちょっと精神的にやられてしまって、体調を崩す。昨晩は眠れず、やっと寝付けたと思っても眠りが浅いのか、何度も目を覚ましてしまう。体調不良と睡眠不足と憂鬱で完全に心が折れ、仕事を休む。朝食を食べたのちに、ベッドに横になる。気がつくと数時間経っていて驚く。

 ビートルズのアビーロードのレコードを聴きながら、妻と昼食。2曲目のsomethingが流れたときに、不意にジョージの歌声に感動して涙が出そうに

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日記 2023年2月4日

 すこし寝坊し、昼近くに起床する。朝食の後に家の中を掃除。一息ついたのちに、妻とともに永福町方面へ出かける。図書館に行ってみたいとのことなので、その周辺のお店にも行くことに。

 永福町の駅近くにある、昨年オープンしたばかりのイタリアパンのお店に入る。落ち着いた雰囲気の洒落た店だ。チョコレートクリームと通常のクリームの入ったドーナツパン、ミートソースのようなものがたっぷりかかったパン、宝石のような

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日記 2023年2月2日

 仕事を終え、夕食にハヤシライスを食べる。美味。その後、友達と近くの煙草屋の前で待ち合わせて、銭湯へ。自転車に乗って友達とどこかに出かけるのなんて、いつぶりだろうか。線路沿いに走り、高井戸に向かう。

 初めて訪れる美しの湯は清潔でそこそこ広く、なぜもっと早く来なかったのかと後悔。友達と、当たり障りない話をしながら、風呂に浸かるのは楽しい。寒いときは体に力が入って言葉も思考も固まってしまいそうだが

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日記 2023年 2月1日

 平日はいつも朝から晩まで仕事をしていて、日記を書くネタに困ってしまう。そんな毎日から何とか脱却したく、強引に仕事を終わらせ、妻と共に吉祥寺に映画を見に行く。平日の夜に街に遊びに行くのは、久しぶりだ。前は当たり前だったのに。

『イニシェリン島の精霊』の時代設定は、アイルランドが内戦をしている1923年。島に住む男パードリック(コリン・ファレル)とコルム(ブレンダン・グリーソン)の諍いを描いてい

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日記 2023年1月29日

 昼過ぎに妻をバイトに見送り、読書。書評を一本書く。本当は読んだ本全てに自分なりの感想などを書きたいものだ。その後、少しだけ仕事をして、『百年の孤独』の続きを読む。時間がかかりすぎている。読書のペースを上げないと。読みたい本が山のようにある。

 日が暮れ外に出たくなり、自転車に乗って西荻窪へ。最近よく行くシェア音楽棚tentへ。途中からバイトを終えた妻と合流。欲しいレコードが多々あるも、ハーパー

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