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栞はどこに

奥田英朗の著作「向田理髪店」を読んでいる。
舞台は北海道の過疎地。 
主人公はそこで理髪店を営んでいる。
ある日、札幌で働いていた息子が地元に帰って理髪店を継ぎたいと言い始める。
主人公は、息子に広い世界で活躍することを望んでいた。そのため、財政破綻した地元にわざわざ帰ってくると言う息子に対し、いい顔が出来ずにいる。

奥田英朗作品ならではの軽妙な文体は読みやすく、いつの間にか自分も過疎地の一員になったような気さえしてくる。

今日はとりあえず第一章を読み終えた。
明日、続きを読むために紙の栞を挟もうと、本を探ってみる。
無い。
ページを漁るが、栞はどこにも無い。
しょうがないので、本にぶらさがっているはずである紐の栞を探す。
無い。
本なのに栞が無いってどういうこと?

本が売れない余波は栞にまで及んだということか。
相棒を失った本を、いろんな向きに傾けて眺めてみる。
はらりと広がる紙の間で文字が踊っている。
内容はあるのに、その趣はやけに空々しかった。

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